小説『竜から妖精へ……』
作者:じーく()

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56話 初めて話してくれてありがとう!―――でもやっぱり……




























その夜の事。

ゼクトは……外で空を眺めていた。

星の一つ一つがとても綺麗だ。

確かに、今日は初めてみんなに精霊達を紹介してとても疲れたけれど……。

それに有り余って楽しかった。

とても、楽しかったんだ。

でも……


「……なんでエルザやミラやレビィが怒ってたのかはわからないんだけど……。」


ん〜〜っと首を傾げる。

ちょっとやなんだけど……。


『いつも通りの事だから気にするな。良い男の特権だ。』


とか何とか、ギルダーツに諭された。

意味わかんないけれど……。

気にしすぎるなと言われたから、考えるのはやめにした。

また、みんなに心配かけちゃうのいやだからね。



「………おい。」



そんな時だ。

背後から……声が聞こえたのは。

「え…?」

この声は……今まで聞いたこと…ない声だった。

振り向くとそこにいたのは、金髪の男の人。

歳は……上かな?

でも……。

そんな事はどうでもいい!

ゼクトは、途端に笑顔になった!

「ありがとっ!!」

笑顔で言い、手を握った。

「はっ?」

突然の事で、思わずぽかーんとしてしまった。

普段はそんなの見られない姿だ。

幸いにも、この場所には2人しかいない。

「……一応聞くが、何の礼だ?」

後ろから話しかけただけで、何もしてない。

でも 礼を言われた。

はっきり言って意味がわからないのだ。



「そのさ?えっと……キミは、いつもギルドの奥にい人だよね?オレが皆と話したり、その……戦ったりする時も、さ? その、話しかけてくれてありがとう。一度、話をしてみたいって思ってたから!」



満面の笑み。

このギルド、≪フェアリーテイル≫に来て……。

仲間として、迎えてくれて……皆と話をした。

本当に暖かい人たちだった。

なぜ……、こんなに好きなのか……?

わからないんだけど……。

皆と過ごしてきて、わかったきがする。

本当に良いギルドだから……。

それがフェアリーテイルだから。



でも……



時折、視線を感じるときはあった。

そう……今話しかけてくれてる人。

気にかけてくれてはいる見たいなんだけど……

いつも離れていってしまう。

話……したくないのかな?と思ってしまってこっちからいけなかった。

ギルダーツにも皆にも言われてたけど……。

その気にしすぎって言葉。

でも……やっぱり、上手くいかないんだ。

だから……話しかけてくれて凄く嬉しかった。




「オレの名はゼクト!よろしくね!」

笑顔で手を差し出した。

「……はぁ。」

??

なにやら、顔を見ながら……ため息を?

「……ラクサスだ。」

頭を掻きながら握手に答えてくれた。










ラクサスはすっかり毒気を抜かれてしまっていたようだ。

この男の実力は未知数。

……オヤジ、ギルダーツも認めてるし、ジジイもそうだ。

そして、ギルドのガキ共も突っかかっていっていた。

まだまだ、弱いとは言え エルザやミラも相手にすらならない程の使い手。

遠くで見ているだけじゃ、我慢できなくなっていた。


……力比べをしてみたいと、柄にも無く思ってしまったのだ。


だからといって、ナツみたいな短絡的に、行ける様な性格でもないのだ。

このラクサスと言う男は。



「……あっ、ひょっとしてさ?ラクサス!」

ゼクトは何かに気が付いたのか。

ラクサスに話しかけていた。

「あん?」

「ラクサスってひょっとして、マスターの肉親だったりする?」

……そう聞いてた。

「……ジジイに聞いたか?」

ラクサスは、嫌悪しているような表情をとっていた。


……マスターマカロフの孫だから、

何をやってもそう。

ギルドマスターの孫だから。

聖十の称号を持ち、かつマスターの孫だから。

だからといって、正当な評価をもらえない。


ラクサス・ドレアーと言う1人の人間を見てくれない。


そうずっと思っていたからだ。





「ん??聞いてないよ。」

ゼクトは、普通に笑顔でそう言い……。

「何だろうね……。なんだか、マスターと同じような……暖かさを感じたから……かな?」

ラクサスにそう言う。

「……はぁっ?」

オレが?

暖かさ?

「ん〜……何ていえばいいのか……。君の心って言えば良いのかな……?オレは結構色々なタイプの人に出会っているからね。このギルド……皆心優しい人たちばかりだよ。でも、その中でもギルダーツやマスターは……なんだろ。ちょっと違うんだ……。あれが、親の気持ちなのかな?」

なにやら聞かれているが……。

「知るかっ!ってか、何でオレが親の心もってる……だ!大体、お前と歳は殆どタメだろ!」

思わずツッコンで……。

「ああー 違う違う。え〜っと……こう言うの、何ていえばいいだろ?……親分……?あれ?違う……かな。そうだ兄貴肌っ!弟分を面倒見てくれる!って感じ。それを感じた!」

勝手に結論付けて……。

「……オレのどこをどう見たら、そう見えるんだよ……。」

眉間を押さえながら……呆れてるようにそう聞く。

「言ったじゃん!オレは、結構いろんな人見てるから。ラクサスは 優しいって思うから。」

「ッ……。」

なんて、真っ直ぐな目で俺を見る……。

これが、本当に新入りが出来るような目なのか?

心の奥まで見通してくるような澄んだ目

ここ最近じゃ……オレが戸惑うなんて初めてかもしれない。

「ああ、もういい!」

ラクサスは話題をそらす!

「え?」

ゼクトはきょとんとしてた。

「……お前の実力を見てえって思ってたんだよ!ギルダーツにも聞いてたし、ギルドの連中とも戦ってたからな!だから オレも戦いてぇ!って思ったんだよ!」

こんなにはっきり、自分の気持ちを伝えたのも……ここ最近じゃ、無い……だろ?

間違い無く……。

「あっ……なるほど……。だよね。フェアリーテイルだもん。」

あはは……。

と 苦笑いをしていた。


「………そういわれたら、納得できねえもんがあるが…。」

ラクサスは再び頭を掻いていた。

そんな時だ!




「おお〜〜 次はラクサスか?」




突然後ろからっ!!?

「わぁっ!!」

突然の事で驚き跳ね上がりそうになる。

「はっはは!モテモテだな?ゼクトは」

「うっさいぞ!おっさん!」

……ギルダーツだ。

「もう!何度も何度も驚かせないでよっ!」

ゼクトは、ギルダーツにそういって 怒っているけど。

「初めて会ったときは、人きりナイフみてーな、感じだったくせにな。後ろ取られるなんて、鈍ってるんじゃねえか?」

ギルダーツはしみじみと、懐かしむようにそう言うけど……。

「……そんなに昔の事じゃないよ!たった1ヶ月だし、それに ここでそんな警戒する必要がないからだよ!」

ムキになって怒ってる?

「だーーはっはっは!随分可愛くなったみたいだなぁ!」

「……うるせーうるせー。」

耳を塞ぐラクサスと大笑いするギルダーツ。

そして、怒っているゼクト。

3人は暫くこう言う感じだった……。




























そして……。


「よーし。今日はギャラリーは無しだ。思いっきり暴れていいぞ〜!」

ギルダーツとラクサス。

そしてゼクト。

マグノリアの外れにある平地で向き合っていた。


「……人を暴れん坊みたいに言わなくてもいいじゃん……。」


はぁ……とため息を。


「うるせー、御付がきやがったな……。」

ラクサスもやれやれ……と言ったご様子。

どうやら、ラクサスもナツやグレイ、エルザやミラのように戦闘狂!

まぁ、あまり表に出さないようだけど…… 苦笑


「おお〜い。ゼクトも他人のこと言えないぞ?お前さんだって楽しそうにやってんだからよ?」

「ゔ……」


何も言い返せない……。

初めの頃は、このギルドの人たちと戦う……なんて、ほんとにヤダだったんだけど……。

こう毎日毎日、絡まれてたら 性格も変わっちゃうんだ……。

そんなやり取りをしている時。
ラクサスだけ、闘志を燃やしていた。



「じゃあ、さっさと戦ろうぜ……。オレはお前の事、かってるんだ。今は、ギルドとか仲間とか関係ねえ……ただ2人の雄だ。」

「……うん。わかってるよ。力比べ……だね。」




ゼクトも……ラクサスの闘志に触発されたようだ。

そして……この感じは……。


「ギルダーツの時と同じ感じ………っ。」


手をグーパーしながら、そう呟く。

あの時、ギルダーツ相手に戦って……楽しんでいたあの感覚。

それを思い返していた。









「………よし。」



ギルダーツも、その2人を見たらこれ以上茶々を入れたりはもう出来ない。


ゆっくりと2人の間に歩いていき……。



「もうあたりは真夜中だ……。さっさとケリを付けちまえよ?2人とも」

両雄を見渡すと……。

右腕を上に挙げ……。


「始めぃ!」


きった!


その瞬間!



“バチ……バチバチバチッ!!!”



ラクサスは、雷を身に纏い……。



“バリ……バリバリバリッ!!!”



ゼクトも同様、

ラクサスのスタイルを見て、

以前……ナツに使っていた≪セカンド≫を解放させた。







-56-
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