小説『ハイスクールD×D×H×……』
作者:道長()

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まえがき

アーシアのテーマがイマイチ決まらないです……。個人的にはノエルのテーマがはまり所かと思っているのですが……。




第九話


「二度と教会に近付いちゃダメよ」

オカルト研究部のヤケに座り心地の良いソファーに座りながら一誠がリアスに叱られているのを、私こと譲刃慶路は見物している。

どうやら一誠は教会に立ち寄ったらしい。教会は天使のホームグラウンド。下手に悪魔が近寄れば一触即発で戦争が始まりかねないのだからリアスの言う事はもっともである。しかも恐らくは負け戦だ。現状悪魔と天使が戦争を行ったら4.5:5.5で悪魔が不利。パッと見るとそこまで大した事が無い様に見えるが、これは単純な数と能力差である。悪魔にとって天使の光が猛毒である事を考えれば実際の戦力差は4:6以上。耐性の低い下級悪魔を戦力から差し引けば、下手を踏むと3:7も有り得る。
例を挙げれば、下剋上BASARAXで相手が毛利を使ってこっちが仙台の農民を使っているレベル……いや。これは言い過ぎか。コッチが荒らしキャラで有名な秀吉を使っている位だ。(ちなみに一説によれば毛利は全キャラに対して7:3以上で有利らしい)

譲刃や御三家が悪魔に肩入れするのもこれが理由である。私個人としても無闇に火種を撒き散らされるのは精神衛生上良くないので止めて欲しい。だからリアスには確りと教え込んでもらいたい。

(だが教会と言えばこの辺には彼処しか無いはずだ……)

住民に聞き込みを行ったら最近神父が来たらしい。とは言っても建物の損傷が酷く、本格的に始めるのには時間が掛かると言っていたらしいが……。

(私が動き過ぎるのはあまりおいしく無い……)

キナ臭い所は多々有るが現状は様子見である。調査したい事など山程あるが、名目上は中立なので派手には動けない。
それにカードは伏せてあるに越した事は無いのだ。現在の情報戦は五分に近い。一誠を助けた事によって自分という情報アドバンテージは無くなった。だが、だからといって私が嗅ぎ回っている事がバレれば、私とリアスの間の太いパイプを気付かれる可能性も有る。
あくまで私とリアスはこの町を管理するもの同士の仲。それ以上の関係――ルシファーの依頼で来た事を悟られたくない。

(まあ。伏せているカードはそれだけでは無いから、最悪バレても殴り込みに行けば良いか……)

今の自分は上級堕天使が来ても負ける確率は低い。流石にアザゼル辺りが来たらアウトだが……。

「ゴメンなさい。熱くなりすぎたわね。とにかく、今後は気をつけてちょうだい」
「はい」

その声で意識が外界に向いた。
どうやら説教は終わったらしい。

「あらあら。お説教は済みました?」
「おわっ」

姫島の声にビックリした一誠の体小さく跳ねる。
……やはりまだ一般人の感覚が抜けていないか……。アレくらいは気付いていないと、この先は厳しい。今度、少し稽古を付けてやるべきかもしれない。

「朱乃、どうしたの?」

リアスの問いに姫島の顔が少し曇った。

「討伐の依頼が大公から届きました」














――はぐれ悪魔。

端的に言えば主を裏切って、若しくは殺して主無しと成った悪魔である。
そういう悪魔は得てして悪魔の力を己の欲望のために使い各地で暴れまわる。
要は人を容易に殺せる野良犬。只の人間にとっては災害と大して変わらない存在であり、人間は勿論。三勢力の間でも危険視されており、見つけ次第殺す様に通達されている。
因みに一誠がドーナシークに殺されかけたのも「はぐれ悪魔」と勘違いされたからだ。
それを討伐するよう、大公の悪魔から依頼が来たリアス達は町外れの廃屋近くに来ていた。慶路はリアスの仕事振りを見るために、彼女達から一歩下がった位置で付いて来ている。

「……血の臭い」

子猫がぼそりと呟き、制服の袖で鼻を覆った。

周囲には静寂が満ちているが、平和とは駆け離れた殺気と敵意が同時に充満している。

リアス達の緊張感が高まる。特に一誠に関してはあまりの物々しさに足が震えていた。

「イッセー、いい機会だから悪魔としての戦いを経験しなさい」

リアスの容赦の無い言葉。一誠にとっては死刑宣告も良い所だろう。

「マ、マジッスか!? お、俺、戦力にならないと思いますけど!」

案の定一誠の声は震えていた。当たり前である。いきなり武器を与えられて戦場で戦える一般人等ほとんどいない。

「そうね。それはまだ無理ね」

リアスのあっさりとした返答。それに一誠は安堵したようだが、同時に自身の価値の低さに少々失望したようだ。

「でも、悪魔の戦闘を見ることはできるわ。今日は私たちの戦闘をよく見ておきなさい。そうね、ついでに下僕の特性を説明してあげるわ」
「下僕の特性? 説明?」

一誠が怪訝な顔をする。それに構わずリアスが言葉を続ける。

「主となる悪魔は、下僕となる存在に特性を授けるの。……そうね。頃合いだしその辺を教えてあげるわ」

リアスの説明を要約すると以下の通りである。


・悪魔に転生するのには悪魔の駒(イーヴィル・ピース)というものを使う。

・悪魔の駒は人間界のチェスの特性が込められており、『王』、『女王』、『騎士』、『戦車』、『僧侶』、『兵士』の六種。『王』に関してはそのまま主の悪魔の事なのでここでは置いて置く。

・『兵士』文字通り一番数が多く、特性も基本無いため、悪魔に転生させる最低限の能力しか無い。しかし、プロモーションという能力があり、それによって『王』以外の駒に変わる事が出来る。ちなみに兵藤一誠はこの『兵士』に当たる。

・『騎士』速さに特化した駒。木場祐斗はこれに当たり、卓越した剣術も相まってリアスの陣営では最速となっている。

・『戦車』塔城子猫がこの駒であり、能力は力と防御の増大。テイルズが分かる人はプレセアだと言えば分かりやすいかもしれない。BBならハクメンやテイガー辺り。

・『僧侶』所謂、後方支援の駒。この駒を与えられている悪魔は魔力が上がる。リアス達の『僧侶』は現在は別行動をしているらしい。

・『女王』最強の駒。『兵士』以外の駒全ての特性を持っている。該当するのは姫島朱乃。補足すると彼女はクラスだけで無く、性癖も『女王』でした。

・優秀な駒は主のステータスとなる。

・レーティングゲームという自分の下僕の優秀さを競うゲームが悪魔の間で流行っている。

・ついでにはぐれ悪魔のバイザーさんも倒しちゃいました。





「……あれ?」

はぐれ悪魔バイザーを倒した後、一誠がふと辺りを見回す。

「どうしたの、イッセー?」

その動きを見てリアスが一誠になんの気無しに尋ねる。

「そういえば慶路はどこに行ったんですか?」














「チッ……。やはりバイザーではあの程度が関の山だったか」

一人の男が毒づきながら路地を歩いている。

「もう少し暴れてくれればあやつにも責任を取らせられただろうに……」

そう。彼はバイザーがはぐれ悪魔になるよう焚き付けた張本人である。彼にとってバイザーの主の悪魔は自分の出世の邪魔だった。不祥事を起こさせて何とか引きずり落とそうとした彼はバイザーに目を付けた。元々主に対して反感を持っていたバイザーをその気にさせるのは楽だったため、後は高みの見物と洒落込もうと考えていたのだが……。

「ん……?」

何とも無しに違和感を感じて辺りを見渡す。別に何の片哲も無い深夜の住宅街。だが……。

「静か過ぎないか……?」

音どうこうでは無く、生物が存在するだけで発するエネルギーというか、生気というものが一切感じられない。まるで写真の中にでも入ってしまったように表面的で味気無い世界。

「やっと気付いたか」
「!?」

背後から聞こえた声に思わず振り向く。
ソコにいたのは黒髪の人間。

「察知に1分は掛かっている。二流も良い所だな。お前」
「人間が……! 貴様、何をした!」

怒りを剥き出しにして悪魔の男が慶路に吠える。

「何。『切り取った』だけだ。まぁ、結界を張ったとでも思えば良い」

男の怒気を気にも掛けず返す慶路。

「さて……。バイザーを焚き付けたのはお前だな。あの程度の悪魔が『はぐれ』になるのは外的要因と何かしらの援助が欲しくなる。そう思って探りを入れたらお前が挙がった訳だが……」
「……そうだ。貴様、譲刃……いや。こんな地方都市には譲刃どころか御三家も来まい。グレモリーもいることだしな」

多少冷静になったのか、荒げていた声が落ち着いたものになっている。

「それに関しては答えられん。……お前が焚き付けたバイザーが人を殺めた。それも複数、後は分かるな?」
「俺を始末しに来たのか」
「そうだ」

いつの間にか慶路の左手には黒塗りの鞘に包まれている日本刀が握られていた。

「ほう……。俺は中級悪魔だが、実力的には上級悪魔だぞ。貴様一人で倒せるのか」
「さあな」

慶路が黒のコートのポケットに手を突っ込み、五百円硬貨を取り出す。

「出会って何も無いのもなんだ。受け取れ」

そう言って右手の親指を弾く。
間合いは10メートル程度。この距離では日本刀は届かない。飛び込むにしても初動無しでは無理が有る。
ピンッと。小気味良い音と共に、放物線を描いて男の元へ一般に出回っている日本の硬貨で一番価値の有るコインが飛んで行った。

(なんだ……?)

となれば何かしら仕掛けがこれに有るのだろうと、コインの動きに集中して――















「やはり二流だよ。お前は」

彼が最後に見たのは首の無い、見覚えの有る服を来た男の体だった。














あとがき

色々とすっ飛ばしました。もし原作を見ないでこの作品を読んでくれている方がいましたらごめんなさい。その方は是非原作を読んで下さい。一誠が悪魔の仕事に悪戦苦闘している姿が見れます。

やっと一巻の中盤です。先は長いぜ。相棒。

それではまた次のお話で。

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