小説『ハイスクールD×D×H×……』
作者:道長()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

第十二話


「ッ! 誰っ!」
「誰と言われてもな。私は私としか答えられん」

気配遮断を解き、隠れていた木の陰から姿を現すと其処には驚いた表情をした一誠とアーシア・アルジェント。そして

「彼女の神器が珍しいモノとは言え、それを強引に手に入れようとするのは、少しばかり欲が深過ぎないか? 堕ちた天使よ」
「あなたは……なるほどね。ドーナシークが言ってたイレギュラーかしら?」
「恐らくはそれで合っているよ」

苦々しげな表情を浮かべる今回の騒動の黒幕最有力候補――レイナーレがいた。

「け……慶路……、夕麻ちゃん……?」
「……レイナーレさま……それと……?」

状況が上手く呑み込めていない一誠とアーシア・アルジェントは、呆然とした表情で何度も私とレイナーレを交互に見ている。

少し可哀想だが、今は時間が惜しい。出来るので有れば此処でケリを着けたいので、彼等へのフォローは後回しだ。

「人間の殺害。普通なら即刻死罪なのだが、不幸中の幸いとも言うべきか。一誠は転生している。それに、どうやら彼の殺害は上司からの命令とも言えなくは無い。今投降するのなら非常に不本意だが、死刑にはしないでやる。勿論それは一誠次第だが」
「イヤよ。だってもう少しで夢が叶うのだから」

あくまで己の願いを成就する心算のようだな。もう少し探りを入れてみるか。ボロも出したしな。

「夢、と言うのはアーシア・アルジェントの神器か? 成る程。確かに彼女の神器は魅力的だ。では何故正当な手段を用いて彼女の所属を主張しなかった?」
「そうね……。それこそ上からのお達しで、彼女の存在を伏せて置くよう言われたの。悪魔達にバレると彼女が狙われるからって」
「嘘だ。それはリスクの大きさに対して旨味が無さ過ぎる。正式に所属を主張されたら悪魔も下手に手が出せなくなるからな。大方、他の堕天使達より早く彼女の情報を掴んだものだから、彼女の神器を一人占め……いや。奪うつもりだったのだろう? そのために、ドーナシーク、ミッテルト、カラワーナを口封じ兼、協力を提案したわけだ」
「……」
「沈黙は肯定と判断する」

どうやら数分前の私の仮説は当たっていた様だ。この堕天使はアーシア・アルジェントの神器を奪い、自分の権力増大を行おうとしたらしい。

「さてと……。お前のやっている事は間違いなく人間に害を与えている。コレに一誠の殺害を足したら間違いなく首を跳ねられるな」
「そうね……。でも」

レイナーレは未だに厚かましい微笑みを崩さない。まだ何か――

「! 一誠!」
「え! は、ちょっ!」

嫌な感覚が背筋を這い上がって来たのを感じ、一誠に覆い被さる様に跳び、地面に臥せる。先程まで一誠がいた場所に煙を立てている穴が在った。
狙撃か! だが回避は成功した。レイナーレは……

「行くわよ。アーシア」
「イッセーさん! イッセーさ」

必死に手を伸ばして叫ぶ少女の姿が途中でボヤけ、消えた。

「やられた……! 会話は時間稼ぎという訳か……」

時限式の転移魔法。これでは発動直前まで気付けん。ココまで手を打っているとは予想以上だったな……。

「アーシア! アーシアァァァァァ!」

背中を打ち付けた痛みをものともせず、私の身体の下から何とか這い出した一誠の放つ叫びは、虚しく空に吸い込まれる。
それに返してくれる筈の少女はもう、居ない。
先程まで少女が大切に持っていたラッチューくんの人形がその名残を、彼女の無念を代弁するかの様にジッとうずくまっていた。

「落ち着け。一誠」
「落ち着いてられるかよ! アーシアが連れ去られたんだぞ!」
「落ち着け」
「ッ!……」

言葉に殺気を込めて一誠を黙らせる。
起きた事を悔やむのは何時でも出来る。だが、彼女を助けられるのは今この時しかないのだ。

「先ず最初に言っておく事が在る。アーシア・アルジェントはこのままだと死ぬ」
「何だって!? 一体どうして!?」
「時間が無い。理由は後で話す。それでだ。お前は彼女を助けたいか?」
「当たり前だ! アーシアを……友達を見捨てられるか!」
「お前が行っても足手まといかもしれんし、間に合わないかもしれんぞ? そして何よりお前の命も危なくなる」

コレは事実だ。悪魔になって間も無い一誠が行っても役に立たない可能性は究めて高い。最悪命を落とすかもしれない。
一誠だって理解出来ている筈だ。『羅刹』の声を聞く位の危機察知能力が在ればそれ位は感じ取れる。
だが一誠はその恐怖に真っ向から挑む様に俺を真っ直ぐに見返して

「確かに俺は弱いよ……。今だって慶路に庇われていなかったら死んでたかもしれない。けど」

自らを鼓舞するために一際大きく息を吸い込み

「ここでアーシアを見捨てたら、俺は絶対に一生後悔する。間に合わなかったらもちろん。慶路がどれだけ鮮やかにアーシア助けても、俺はアーシアに手を振り払ったままの自分を絶対に許せない」
「……」
「足を吹き飛ばされたなら這ってでも、死んだんなら化けてでも、もう一度アーシアの手を握ってやる」
「……そうか」

コチラが思わず目を逸らしてしまう程の力強い双眸。
そこまで決意が固まっているのなら、何も言うまい。

「それじゃあ先に部室に行って、リアスに教会に乗り込む旨を伝えて来てくれ、あと今回の騒動の原因が個人単位であることもな」
「分かった。慶路はどうするんだ?」
「私は少し準備をしてくる。打てる手は打たんとな……これは時間との戦いだ。急ぐぞ」

言うや否や、もう私の頭の中はアーシア・アルジェント救出の為の手段を模索している。
教会の構造は工事業者に変装した部下の働きで殆ど分かっており、教会に存在する戦力は目星が付いている。

となると後は援軍の有無。包囲網の形成。そして戦力の割り振りと、アーシア・アルジェントが神器を抜き取られた時の対応手段の確保といった所か……。

まあ。兎に角





「私の管轄で行動を起こした事……後悔させてやるからな……!」

この怒り。何処かにブチ撒けないと収まりがつかん。

-14-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




ハイスクールD×D リアス・グレモリー ~先輩のおっぱいひとりじめフィギュア~ (PVC塗装済み完成品)
新品 \3426
中古 \3753
(参考価格:\7980)