小説『ハイスクールD×D×H×……』
作者:道長()

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第十五話


「ありがとう。付き添いはいい」
「分かりました。それでは失礼いたします……」

車のドアが閉まる音がして数瞬後、車が走り出す。車が視界から消えるまで見送ると、石段に足を掛ける。



手には花。右手には水の入ったペットボトルを持って。














「さて……」

目の前にある共同墓地に手を合わせた後、辺りを見回す。草一本生えていない。手入れはちゃんとしている様である。

「まあ……。堕天使は死ぬと魂ごと消滅すると言われているが……、もしかしたら仏が拾ってくれているかもしれんしな」

誰に話し掛けているのか? と問えば、愚問だろう。我々だって、親しかった人の墓前に立てば最近の出来事の報告位はするのだから。彼の場合は、その立場故に、死に立ち会う場面が多く、それをないがしろにしないための自分なりのケジメなのだろう。

「アーシア・アルジェントは悪魔になるらしいぞ。彼女曰く、『けじめ』だそうだ」

意外な言葉が紡がれた。
アーシア・アルジェントは悪魔に転生する気らしい。慶路が普通の生活を送れる様支援すると言ったが、それもキッパリと断った。彼女なりに考えがあるのだろう。流石にシスターのままで悪魔(一誠)に恋するというのは今でも確固として存在する信仰心が許さないのかもしれない。
それでも完全に抜けられないとはいえ、彼女が焦がれていた普通の生活、という選択肢を捨てるのは並大抵の事ではないが。

「……」

喋る事はあらかた終えたらしく、慶路の口が動かなくなる。そして立ち去るのかと思いきや

「……何故あんな事を言ったのだろうな……」

今度の言動は、誰かが聞いていたら間違いなく疑問符を浮かべただろう。これだけ聞けば何を言っているのか要領を得ない。だが、その言葉は聞き流すには、少々唐突で無防備過ぎた。今まできっちりと縄で結ばれていた積み荷から、小さいがひどく馴染み深いものが道端に落ちてしまったような――、もちろんすぐに拾えるが、そこには避けることの出来ない意識の空白があったのだ。



「……ああ、成る程。一誠に会ったからか……」

どうやら彼自身は合点がいったらしい。
彼には一度解いた問題を解き直すように、スルリと深い所に落ちていったようだ。

「――」

またしても沈黙。ただし、今度はさっきよりも重く、触れがたい。
しばらくして、二、三度首を振り

「――何を今更」

何かを振り切る様に墓場に背を向けた。今度こそ用を終えた彼は振り返る事無く立ち去った。







バサリ

誰も居なくなった墓に羽音が立つ。白い鳩が青空に飛び立つのを最後に、墓地にはいつも通りの静けさが戻った。














午前2時 一誠の夢?



(ああ。夢だな)

明晰夢なんて久し振りに見た気がする。何で夢って分かったって?
だってよ。

「消し飛べェ!」

口からビームを吐き出す山みたいにデカイ赤いドラゴンとよ。

「潰れろォォォ!」

爪をミキサーみたいに振り回す同じ位の大きさの白いドラゴンがいたら夢だと思うだろ?

むしろ思わせて下さい。お願いします。秘蔵のエロチックブックを差し上げますから童貞のまま死ぬのは勘弁してくださ 流れ弾が股下20?を通過ァァァァァアブねぇぇぇェェェェェェ!

「去勢ですかそうですか! ぜってぇ息子だけは死守して 腰の横から3センチィィィィィ!」

童貞に不能狙いとは死よりムゴいじゃねえか!

「クソっ! とりあえず逃げ……って……?」

思わず立ち止まってしまった。
危険なのはよく理解しているのだが、それ以上に衝撃的な光景に体が停止してしまった。

「人……間?」

そう。最初オレは赤いドラゴンと白いドラゴンがやりあっているのだと思っていた。けれど、

「きさまらぁ!」

赤いドラゴンの怒りを向けられているのは

「力が出ん……!」

白いドラゴンの狼狽の原因を作り出しているのは



「セェア!」

白亜の鎧に身を包んだサムライに率いられた人間達だったのだ。

二匹のドラゴンの猛攻に晒されながらも彼等は確実に敵を追い詰めている。



白銀の野太刀が腕を切り落とし。

牙の様な槍が鋼みたいな鱗を貫き。

久遠に伸びる鎖が胸元を這い上がりながら縛り上げ。

不可視の矢が羽を蜂の巣にし。

黒金の腕が巨体を吹き飛ばす。



素人目から見ても竜達に勝機は無く、彼等に刈り取られる獲物に見えた。
恐らくはジャイアントキリングに相当する現場に居合わせているのだろうが、そういうものを観ている時に沸き上がる興奮は一切起きない。
人間が神話の存在を駆逐する。

その事実にただただ圧倒された。


そしてついに終わりがやって来る。

「……」

白い鬼神が何か言っている様だがよく聞こえない。数拍置いた後に野太刀を正眼に構え――














あとがき

久し振りの投稿です。
遅れてすいませんでした。<(_ _;)>

とりあえず一巻は終わりです。
次回は二巻を予定しております。もしまだ読んでいただける方がいましたら気長にお付き合い願います。



そして少し重要なお知らせです。実を言うと以前友人にISのSSを読みたいとリクエストされました……。一応設定だけはある程度思い付いたのですが、此方のこともあるためあまり投稿する勇気がありません。

もし読みたい方が多い様でしたら、このまま設定を煮詰めてハーメルン辺りに投稿しようと思っています。もしご希望の方がいらっしゃいましたら、感想、又はメッセージに書いて下さい。


それではまた次のおはなしで。

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