小説『ハイスクールD×D×H×……』
作者:道長()

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第一話

京都 譲刃家本邸



黒髪の青年がいそいそと座敷に入ってくる。

「すみません。遅くなりました……」
「いやいや。そんなに気にしなくても良いよ。慶路くん」

返したのは血の様に紅い髪の美青年。慶路と呼ばれた青年の様子を見て春風の如く爽やかな笑みを浮かべる。

「しかし四大魔王たるルシファー様を待たせる訳にはいかないでしょう」
「堅いな〜。慶路くんは。二人っきりの時くらいは昔のようにお兄ちゃんと呼んでくれても良いんだよ?」

流麗な双桙をいたづらっ子の様に輝かせてルシファーと呼ばれた青年がからかう。
それを見て慶路は苦笑いを覗かせて

「貴方は軽すぎですよ……。今私は譲刃家の当主として此処に居るのですから。貴方もサーゼクス・ルシファーとして居て貰わねば困りますよ?」
「ふむ。それじゃあ。サッサと用件を伝えてパブリックからプライベートに切り替えようか」

サーゼクスが真面目な顔になり、先程より声を落として語り出す。

「君は駒王学院は知っているね?」
「ええ。確かルシファー様の妹君が通われている高校でしたよね? 今春で三年生ですよね?」

それを嬉しく思うようにサーゼクスが大仰に頷いて

「そうだ……。喜ばしい事に妹は着実に成長している。精神的にも身体的にも胸囲的にね」
「ツッコミませんよ?」
「冗談さ。Break Iceというヤツだよ。あまり堅物だと禿げるよ?」

やれやれと、これまた大仰に肩をすくめるサーゼクス。
慶路はそれを無視して次の言葉を促す。

「でも喜ばしい事だけじゃなくてね。最近物騒な動きがちらほら見れてね……」

本題が近いのだろう。声が一際低くなり、若干身を乗り出してゆっくりと言葉を取り出してきた。。

「堕天使達の動きが活発になってきてるんだ」
「……成る程。となれば私の所に来た理由は……」
「そう。僕の妹をサポートして欲しい」

本題と言わんばかりにサーゼクスが頷く。

「ですが妹君なら問題無いのでは?彼女は優秀な悪魔だ。人間に被害が出ない内に処理出来るのでは?」
「そうなんだけどね。ちゃんと役目は全うしてるし、学業の方も疎かにせず良い成績を取っている。5以外が付くのが珍しい位さ」

けれどもと

「やはり心配でね。今は悪魔が一番勢力的に厳しいから、変なちょっかい出されでもして……」
「戦争になるのは不味いと」
「その通り。だから対人外の一族の長である譲刃家に頼みに来た」

我が意を得たりと静かにサーゼクスが頷く。
慶路は数秒考え込む仕草をすると

「……私は人間ですからね……。仮に動いたとしてもあくまで協定の範囲内として処理出来る」
「『天使・堕天使・悪魔は人間の生活を脅かしてはいけない。もし人間の営みへの脅威として判断された場合は問答無用で排除して良い。人間は天使・堕天使・悪魔に干渉する際は、必ず一定の地位を持つ各々の陣営の内最低一人から認可されなくてはならない。』今回は僕とレヴィアタン、そしてミカエルが認可している」
「四大魔王二人と天使長とは……。これなら後ろ楯としては充分過ぎる」

簡単に言えば、堕天使が悪魔に文句を言った場合は二つの陣営から攻撃されるのだ。これでは堕天使は下手に動けない。

「アザゼルから貰えなかったのは残念ですがね……」
「正直彼は何を考えているか分からない。故に接触するのは止めておいた。でもその分ミカエルが認可してくれた。彼もいざこざは可能な限り避けたいらしくてね」
「……分かりました。人の世を守るのが譲刃家の役目。こうしてわざわざ依頼して頂けるのは寧ろ喜ぶべきことです。譲刃家当主。譲刃慶路。その依頼。慎んで受けさせて頂きます」
「感謝する。四大魔王が一人。サーゼクス・ルシファーの名の元にこの契約は成立した。君はまだ学生だったね。転入の手続きと住居の手配はこちらでやっておこう。生活費も一部は工面する」
「ありがとうございます」

その言葉に満足気な笑みを浮かべるサーゼクス。

「さてと。ここからはプライベートだ。で。お兄ちゃんとは呼んでくれないのかい?」
「流石にお兄ちゃんは無理ですよ?ゼクス兄さん」

先程の真面目面はどこに言ったのか。おどけた調子で冗談を返し始めた。

「ハハハ。でも兄さんとは呼んでくれるんだね。ケイ?」
「僕にとっては貴方は兄同然の存在です。何時になっても。ね」
「嬉しい事を言ってくれるね。そう言えばセラフォルーが君に会いたがってたよ?『ケイたんの頭ナデナデしたーい☆』とね」
「あはは。セラ姉さんらしい。駒王に行けば会う機会も有るでしょう」

どちらもセラフォルーの姿を思い浮かべているのか、どことなく思い出し笑いのような笑みだ。

「そうだね。可愛い妹もいるのだし」

ハハハハハ……。

二人の笑い声は小一時間程絶えなかった。














その夜


譲刃家の敷地にある幾つかの蔵の中の一つに慶路は入っていく。
中は暗く格子から微かに月光が差し込んでくるのみ。持っていたライトで闇を照らす。すると整然とした蔵の奥に一振りの刀が鎮座しているのが見えた。点けていたライトを消すと、洩れてくる月の光がさながら儀式の場の様に刀を彩っていた。

慶路が前に立つ。

「……頼むぞ。『斬鬼 羅刹』」

祈りを捧げるが如く、彼の呟きは刀に吸い込まれた。

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