小説『ハイスクールD×D×H×……』
作者:道長()

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第五話


――二人の男女が言い争っている――

「……本当に良いのか?」
「何度も言ってるでしょ。コレしか方法が無いの」
「だが……」
「らしくないわね。いつもは決めたら曲げないのに」
「……」
「はぁ……。そんな顔じゃまるで犠牲になった気分になるじゃない」
「どこが違う!私は……」
「私はね。犠牲になったつもりは無いわ。だって私にしては見返りが大きすぎるもの」
「そんな事は関係無い!人の命に対する見返り等あって堪るか!」
「……やっぱり優しいのね。でもね。コレが成功したら私が一生を懸けても到底出来ないような事が出来るのよ?それって」

――素敵な事じゃない?――














「……いかん。居眠りをしてたか……」

目覚めて最初に目に飛び込んで来たのは朝から格闘している書類の束。……最近夢の中でも仕事してる時があるんだよな……。寝た気にならんから本当に勘弁して欲しい……。しかも期日に間に合わなくなる夢だったりした日にはもう何もしたく無くなる。
あれの効力は実力テストでしくじった直後の三者相談並みだ。いつの間にか二対一の構図が出来ている学校の七不思議の一つのあれ。(因みに残りは、怒られない優等生。同じ点数をとったのに何故か差がある通知表。相手が悪いのに何故か相手の親がキレて謝らせられる呼び出し。金持ちによく転がる有名私立校への推薦。タバコを吸うなと言ってタバコを吸ってる教師。あと一つは募集中である)

「どこまで進んで……と。大体はまとめ終わっていたか。しかし……」

はぁ。

思わず溜め息が出てしまう。溜め息をすると幸せが逃げていくというが、本当だとしたら人間は残りカス程度の幸福しか味わっていないと思うのは私だけだろうか?

「どれもこれも裏付けが甘いな……。確実に隠蔽工作やら偽装工作された情報が入ってるぞ。これ」

人数が足りないから仕方無いんだがな。譲刃とシトリーだけではどうあっても足りん。現状グレモリーはどちらかと言えば戦闘要員だ。わざわざリアスが出張って此処を治めているのはソレもあるのだろうし……。

「大規模なエクソシストの異動はグレーだが、非戦闘員のシスターに関しては天使側の動きの可能性が大……。しかも異動先があの寂れた教会? 彼処はまだ天使側の管轄だったのか? また改めて調査せんといかんのか……」

天使も情報提供を積極的にしてくれると頭を抱える機会が少なくて済むし、人件費が掛からなくて懐に優しくなるのだが……。
先の大戦のせいで長の譲刃(ゆずりは)と御三家たる次無(つぐなし)、影無(かげなし)、糸無(いとなし)の四家は三大勢力に良い顔をされていない。
大戦を通して多くの天使、堕天使、悪魔を始末してきた一族であるため、未だに敵視している者もいる位なのだ。気軽に接してくれるグレモリー家やシトリー家は稀有と迄はいかないが珍しくはある。
天使も堕天使と悪魔を消耗させたいという狙いもあるだろうが、譲刃に対する嫌がらせの側面も有るだろう。汝の隣人を愛せという言葉の通りなら堕天しても良いんじゃないか? イマイチ堕天の基準が分からない。

「これ以上はどうしようも無いな……茶でも飲むか」

夕飯には少しばかり早い。その前に一服しても良いだろう。




「……ふぅ……」

トワイ●ングのプリンス●ブウェールズを一口含む。
全体的に上品な印象がある紅茶だ。優美な香りは心を落ち着かせ、わずかに甘味すら感じる控えめの渋味が舌に広がる。個人的にはストレートで飲む紅茶では一番美味しいと思う。一緒に何か食べる時は簡単に紅茶の旨味が吹き飛ばされてしまうから注意が必要だ。

「……む?」

飲むのが勿体なくて香りを楽しんでいると、他人より敏感な対人外のセンサーが違和感を察知した。

「場所は公園。これは天使型の結界か?それにしては……」

なんというか。聖性が希薄な気がする。魔に対する嫌悪だけが強いというか……。ということは

「堕天使か!? なんと間の悪い……!」

これ結構高いんだがな!

紅茶をソーサーに置いて光に耐性の在る黒いコートを羽織る。有り得る状況は……

「悪魔との小競り合いか? だが魔力の気配は感じな」

そこで重要な事に気付いた。

「一誠の気配が消えている……!?」

アイツは確かデートをしてる筈。まさか天野夕麻が……

「デートのラストだかアフターサービスの準備だか知らんがベタな所をいったな!」

何でこう嫌な予感は当たるんだ! 宝くじは3000円が関の山だというのに!

「死ぬなよ一誠……」

ガチャリと。

扉が開く音と頭の中でスイッチが入る音を重ねて聞きながら玄関を飛び出した。














公園に夕陽より赤い血だまりと何かを抱えている血より紅い髪を持つシルエットが見えた。

「来たわね」

紅い髪を持つシルエットが此方に顔を上げた。

「リアスか。……成る程。間に合わなかったというわけか」

地面に残った血だまりと、それにしては血の気がある一誠の顔を見て状況を察する。彼女が戦ったら血すら残らない筈だ。

「自分を責めないで。貴方が言ってくれたから彼の転生が間に合ったのだから。私を呼ぶ転移魔方陣を前もって彼に渡せたのは貴方のおかげなのよ?」
「……そういうことにしておこう」

一誠は悪魔の駒(イーヴィル・ピース)で悪魔に転生した様だ。一般人としての生活はもう出来ない……か。

「私は彼を送ってからここの後片付けをするから情報収集をお願い出来る?」
「勿論だ。シトリーにも連絡しておく」

優秀な彼女の事だ。もう嗅ぎ付けているかもしれない。

「ありがとう。それじゃあまた明日学校で」
「ああ。また明日。な」

リアスが一誠を抱えて公園から出ていく。その背中が見えなくなった頃に

「……またか……」

手を血が滲む程握り締めながら零した怨嗟の声は虚しく風に飲まれていった。














あとがき

一旦☆5になって狂喜乱舞してたのですが……やっぱり☆5を保つのは難しいです……。いつも☆5の作者はどんな魔法を使ってるのでしょう?自分の力量不足に頭を悩ます今日この頃。

あとこれは個人的な考えですが、どんな力を持っていても救える人間の数っていうのは決して多くは無いと思うんですよね……。あくまで個人的にはですけど。

それではまた次のお話で。

-6-
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