小説『ハイスクールD×D×H×……』
作者:道長()

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第七機関……じゃなくて第七話




「貴様人間だな!? 人間がなぜ悪魔を助ける!」

翼を生やした男が語気を荒げながらもう一度手に光を集める。

「悪魔? 何だそれは。私は友人が襲われていたから助けただけだが?」

慶路は右手に拳銃を構え、左手にはやたらとゴツいナイフを逆手に持っている。街灯に照された顔は石膏で固めたかのように無味乾燥で人間性が感じられない。彫刻家の彫った彫像のほうがまだ温かみを感じるくらいだ。

「貴様……!」

男が槍を振りかぶる――





「予備動作が大きい」
「ぐあっ!」

超常の力であろう光の槍は凡庸な銃弾によって再び宙に消えた。
いわゆる後の先というやつだろう。
挙動前を叩くというのは理想的な防御手段だが実際やるのは非常に難しい。
この時は気づかなかったが、リアス先輩曰く、この場合は銃の速度と慶路の経験と集中力によって成し得た必然だったらしいけど。

「ならばこれなら対応出来まい!」

肩を押さえながら男が周りに光の槍を複数出現させた。
デカイ一発で無理なら速さと数で勝負ってわけかよ! チクショウ! あれの威力は身をもって経験している。急所に当たったら死ぬぞ!

槍が空気を裂きながら飛翔する。

計七連射

遠目から見てもちゃんと捉えているかどうか不安になる速さ。
実際に俺が対峙したら蜂の巣にされて申し分ない凶弾。

けど慶路はその内の五発を身を捻って避け――

慶路の左腕が一瞬ぶれる

ガラスが砕ける様な音と共にナイフが槍を打ち落とし

「宛(えん)」

残りの一発をあろうことか振り切った腕の反動を利用して肘で弾いてみせた。

「何を驚いている。矢を刀で打ち落とす技が在るんだ。これくらいは出来て当然だろう」

これ程の芸当をしておいて、眉ひとつ動かさない慶路に感嘆を通り越して戦慄すら覚える。

「人間風情が……!調子付くな!」

神経を逆なでされたのだろうか。怒りを露にして男が砂ぼこりを撒き散らしながら突進していった。
あの野郎! 単純な性能競争に持ち込む気かよ! 夜の俺の足に追いつくバケモノに慶路がかなうはずがない!

弓を引くように左手を後ろに持ってって

「え?」

今日はことごとく自分の常識がぶち壊される日だ。なぜなら

「ぐおおぉぉぉ……」

いつの間にか慶路が間合いを詰めて男の左腕にナイフを突き立てていたからだ。突き立てられた傷口からは微かに煙が立っている。全然見えなかった……。でもなんで煙が立ってんだ?

「この……!」

苦痛に身を屈めた男が苦し紛れに蹴りを放とうとして――







――自動小銃の上部がスライドし役目を終えた9?の薬莢が3つ排出される――


太ももから血を流した男が完全に闘いを放棄した。

「予備動作が大きいと言っている。容易に読めるぞ」

慶路が感情の欠片もない声でそう言うと、突き刺したナイフを引き抜き刀身に付いた血を懐紙で拭う。

「貴様……何者だ?」
「人間だ。友人を襲われて激昂した只の。な」

あまりの状況に頭が追い付いていけない。あのおっさんは何なんだ? 何で慶路はそのおっさんと闘り合えるんだ? つーか何で銃なんて持ってんだよ。銃刀法違反だぞ?

「なぁ。慶路……」

何とか自分の知っている世界に戻りたくて、現状唯一日常との足掛かりになりそうな慶路に声を掛けようとして

「ッ……」

違う。コイツは俺の知っている慶路じゃない。
アイツはもっと笑ってて、俺達のバカに呆れながらも付き合ってくれて……。
こんな触れたら切れるような抜き身の刀のような冷徹で鋭利な雰囲気はしてな

「……遅いよ。リアス」

その瞬間、刃が鞘に収まった。
そんな表現がしっくりくるような切り替えの早さで慶路の気配がガラリと変わった。

「ごめんなさい。この辺りに転移の拠点が無かったの。で。その堕天使が……」
「紅髪……グレモリーか。なるほど。それならばソイツは……」

この緊張した場に割って入った声の持ち主に目を向ける。

リアス・グレモリー。

彼女を見た瞬間あの紅い世界で俺を助けてくれた人だと合点がいった。

「協力者。といったところかしら。私の名はリアス・グレモリー。ごきげんよう。堕ちた天使さん。この子にちょっかいを出したら容赦しないわ」

微かにだが身体に紅いオーラのようなものを滲ませながら、落ち着いてはいるが言葉に刃を潜ませて言い放つ。

「……ふふっ。これはこれは。その者はそちらの眷属か。となればこの町もそちらの縄張りというわけだな。まあいい。今日のことは詫びよう。だが、下僕は放し飼いにしないことだ。それと……」

慶路の方に視線を向けて

「協力者と言ったが、そやつ元々はこの町担当の対人外の輩だろう? 友人がと、ほざいていたが、下手な抗争が起きないように割って入ったわけだ」

よく分からないが、抗争という言葉から慶路は警察か何かなのか?
俺は組に入ってるつもりはないんだけどな……。親だって普通だし。

「さあどうかしら?一応それなりに懇意はさせてもらっているけど。とにかくこの町は私の管轄なの。私の邪魔をしたら、容赦なくやらせてもらうわ」
「その台詞、そっくりそちらへ返そう、グレモリー家の次期当主よ。我が名はドーナシーク。再び見えないことを願う」

ドーナシークと名乗った男が黒い翼をはためかせて夜空へ翔んでいく。
その影が見えなくなる頃になって

「さて……。ありがとう。ケイ。お陰で大事な下僕が守れたわ」
「しっかりしてくれるかな? 僕としては特別手当が出ても良いと思ってるんだけど」
「あらあら。手厳しいわね。なら後で何か送っておくわね」
「冗談だよ。本気にしないでくれ」

……なんですか。このなごやか空間。さっきの緊張感は何処にいったんですか?

「緊張感ならラスベガスでルーレットでもやってるんじゃないかな」
「心を読まれたぁっ!?」
「何か呆けてたからさ。こんな感じかなって」

ハハハ

……良かった。いつもの笑顔だ。
ってそれより

「まずは助けてくれてありがとう。早速だけどよ。さっきのヤツは何だったんだ? あとお前、何で銃なんか……」
「……そうだね。話すと長くなるから明日話すよ。今の君の立場を含めてね。リアスもそれで良いかい?」
「構わないわ。今日は疲れたでしょうから家に帰ってゆっくり休んだほうが良いわ。」

リアス先輩の魔性の微笑み。
うおおおお! 二大お姉さまの微笑みを間近で見れるならオールナイトでも問題無いです! むしろ夜のほうが色々と元気になるんで!

「リアスも良いって言ってくれてるし今日は解散にしようか。僕も流れ弾の回収とか弾痕の後始末をしないといけないし」
「それじゃあ明日の放課後に使いを出すわ。あと……」

リアス先輩がコチラに向き直って

「よろしくね。兵藤一誠君。私もイッセーって呼んで良いかしら?」

今日。俺の世界は良くも悪くも崩れ去った。















あとがき

強引に戦闘シーンを入れてみました。本当はあっさり引かせても良かったのですが、ただでさえダレ気味なのに此処で入れないのはちょっと、と思いまして。
戦闘は難しい……。書いてては割りと楽しいんですけど表現が……。改善点が有ればドンドン言って貰えると嬉しいです。

ヒロインの件ですが……。一応オリジナルと精々+1(下手をすると0?)くらいのつもりです。ただ要望が在れば変わるかもしれません。
……でも慶路はな……。ちょっとな……。コイツ結構頑固なんですよね。

前回のビリー・ホッターですがハイスクールD×Dの世界では

「ビリー・ホッターと賢者タイム」
「ビリー・ホッターと秘密のレスリング場」
「ビリー・ホッターとアズカバンの囚人(カズヤ)」
「ビリー・ホッターとノンケのゴブレット」

までリリースしてます。お求めは近くの書店まで!(買わねぇよ)


前々回の紅茶の件。あれはあくまで私見ですのであまり当てになさらないよう……。プリンスが一番美味しいと思うのは事実ですが。あれは飲むと落ち着きますね。ダージリンも美味しいんですけど。

コメントを貰えると作者は某世紀末のモヒカンの様なテンションで喜び、通常の3倍(ごめんなさい。無理です。私はどこかの大佐じゃありません)の速さで執筆出来るようになります。宜しければ一言お願いします。

それではまた次のお話で。


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