小説『先生は女子大生』
作者:相模 夜叉丸()

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そんなことを言うやつを邪見に扱う人間はいなかった。
 「田中はね、ストレート過ぎるんだよ。」
 ある日の屋上で弁当をそれぞれつついてる時に木南はポツンと言った。
 「木南何の話?」

 「実は、田中に会う前から君が言ったこと知っててね。A○B48がどうとか。文化祭の件は結構インパクトあったな。」

 「・・・・。」
 おい、お前まで何を言い出すんだと思って少し不機嫌な顔になったが木南はいつも通り優しい口調で呟いた。
 「それが理由でみんな田中を避けてたんだね。でも、それは避ける理由にはならないよ。」
 予想外の回答に僕はえっ、と一瞬戸惑った。
 「いや、そうは言っても、・・・お前は気にならないの?僕と話してなんとも思わない?」

 「別に。」
 だけどね、と木南は付け加える。
 「田中もちょっと直した方が良いかもしれないね。田中の言うことは良識的だけど過激だよ。例えば田中が嫌うA○Bが本気で好きな人もいるわけでさ。」

 「うん・・・。」

 「それさえ直せば多分またみんなと仲良くやっていけるんじゃないかな。だって、根っからのワルなんていないわけだし。」

 「・・・まぁ、うん。そうだすな。」
 それから2年、僕のほうからも木南以外の誰かからのアプローチも無く、平行線上に続いている。たまに太田からの圧力があるだけで、木南を挟んで均衡を保ってる。木南がいなければ僕は完全にいじめの対象になってるかもしれない。まるで東西冷戦のような。
 

 「・・・よし。」
 そんなことを思い出してたらあっという間に市谷スクールに到着した。この時間帯、2時半ごろだから教室で授業を受けてるのは小学生だろうか。あの個別教室も多少うるさいかもしれないが、関係ない。僕は教室へ向かった。
 僕が授業を受けてる教室に行くと案の定、小学生がいた。4人の先生がまばらに座っていて、その隣で小学3・4年の男の子が授業を受けていたが、そのうち1人の女の先生の授業を受けていた男の子がまぁ、うるさくはしゃいでらっしゃる。先生も何度も注意するがやめない。元気があるのはいいが、人の話を聞かないで騒ぐのはまた別問題だ。
 僕は一発怒鳴りたい気分になったが気を留めて、最前列の前の席に座ってやることに決めた。誰も座ってなかったせいか、心なしか椅子が冷たい。
 さて、最初に取り出したのは政治経済。大学ノートと教科書、資料集、問題集に用語集。僕はさっそく取り掛かるが、ペンを握り、問題集を開くと僕の心は豹変する。
 政治経済は僕が今のところ一番好きな科目だ。僕が入ろうとしてる大学の学部は法学部で、受験科目の一つでもある。どちらかというと経済より政治が好きで、さっきのような東西冷戦とか憲法第9条だとかそうゆう用語に僕はテンションが上がる。政治に興味があるのも理由だが、別に、特別な理由があるわけじゃない。とにかくかっこよく思えて燃えるのである。ちなみに僕が好きな用語は、NATO・北大西洋条約機構とフランスの人及び市民の権利宣言だ。。なんと言われようとそうゆうのが好きで、政治経済に関して言えば勉強と言うよりもただただ興奮してるだけという感じだ。でも決して変態なわけではない。再度言う、決して変態ではない。
 興奮冷めやらぬ感じで1人で盛り上がってると、誰かが机の敷居をノックした。
 

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