小説『先生は女子大生』
作者:相模 夜叉丸()

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はっと我に返り、その方向を向いてみると一宮先生がこっちを覗いてた。腕を組み、その腕を敷居の上に乗っけるような格好をしていた。
 「こんにちは。」
 微笑を浮かべてのあいさつ。ああ、ほんと爽やかだな。
 「あっ、どうも。」
 僕も返した。
 「今日は自習?」
 
 「そうです。」

 「頑張ってるね。」
 その顔で褒められるとなんだか嬉しくなる嬉しくなって思わず僕も笑みがこぼれた。照れ隠しに、頭をボリボリとかいてみせた。
 「人がいっぱいにならない限りずっと使ってても平気だからね。」

 「はい。ところで先生は今日授業なんですか?」
 
 「うん、4時から。」
 僕は後ろでワイワイやってる小学生を見てから視線を先生に戻した。
 「この時間帯だから小学生ですか?」

 「そうよ。」

 「うるさくないですか?」
 先生も小学生たちの方を見て苦笑した。
 「しょうがないよ。ああゆう年齢だもの。」
 
 「先生の教えてる小学生もあんな感じですか。」

 「男の子で、騒いだりはしないんだけど毎っ回、宿題忘れてくるのよ。でも勉強はできて。時々わざとなんじゃないかなって思う時もあるんだけど。」
 僕はあごの下に親指と人差し指を伸ばした右手をあててなるほど、とニヤニヤしてみせた。
 「かまって欲しいんじゃないですか?先生優しいから。」

 「なめられてるのと同じよ。かと言って怒鳴るなんてできないし。・・・いや、田中君にそんな愚痴ったってしょうがないけども・・・。」
 じゃ、頑張ってねと言い残し、どこか席に着こうとしてた先生を僕は呼び止めた。 
 「先生。」

 「?」
 先生が振り返って、薄い茶髪の長い髪が綺麗に揺れた。僕は左腕を伸ばし手を垂れ下げて、仏頂面でオードリー春日の真似をする。
 「田中のここ、空いてますよ。」
 僕の隣の席は無論空いてる。ギャグのつもりでやってみた。・・・いや、別に変な意味は込めてないけど。ただのウケ狙い。先生は両手を顔の前で合わせた。
 「ごめんっ。今日受け持ってるの2人なんだ。」
 先生は教室の真ん中らへんの席に移動する。机1つにつき3つの椅子。また何か話したりできるかもという野望はもろくも崩れ去った。冗談のつもりだから落ち込むことでもないが・・・。
 「ああ、そうですか・・・。」
 僕の腕は力なくポトリと隣の椅子の背もたれに乗っかった。
 「・・・・。」
 僕はまたペンを持ち問題集の続きをやり始めるが、ふと忘れかけてたことを1つ思い出した。
 「来週から夏期講習だ。」

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