小説『先生は女子大生』
作者:相模 夜叉丸()

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男子諸君なら、一度は憧れたことがあるだろう。だいたいほぼ確実に男子が憧れる妄想のトップテン入りするシチュエーションは(家庭教師のお姉さん)とか、(美人教師)だとか、(優しくて美人の保健室の先生)などではないだろうか。一般的に成人を迎えていない男子、特に小学生中学生あたりは年上のきれいなお姉さんにあこがれを持つものだと言われている。
 かくゆう僕もそうだった。小学校1年の頃、父の車に乗って家族で出かけたとき道の途中にあるガソリンスタンドのお姉さんが車の窓から周りの様子をじっと眺めてた僕に気づいて笑顔で手を振ったことがあった。僕は恥ずかしがって顔を火照らせながらも手を振った記憶がある。
 誕生日を毎年迎え、年齢が上がるにつれて男女うんぬんのことを意識し始める。しかし僕の場合は特殊だった。小学校高学年の時は同級生にしか話しかけられなくなり、中学に入ると部活の女子にも話ができるかどうかというレベルになり、高校生になるともう母と姉とスーパーのおばちゃんくらいしか話ができなくなってしまった。
 ・・・という暴露話を、珍しく僕のクラスに遊びに来た木南に話した。どうゆう話の流れからかは、忘れたが。
 「そんなに怖いの?女の子と話すのって。」
 僕の隣の席に座り、単語帳をめくりながら僕に指摘した。足を組み、丁寧にその単語帳を広げている。
 「胸がドキドキしないのか?女の子と話すとき。」

 「しない。」

 「だって、男じゃないんだよ?似て非なるものなんだぞ。別の生物なんだよ?」

 「基本構造は一緒ですっ。」
 あーあ、と僕は諦めたような声を出し、足を投げ出した。木南は単語帳を閉じて机の上に置いた。組んだ右足の膝の上に肘ついて、頬杖をついた。木南の頭上を誰かが飛ばした紙飛行機がふわっと飛んで行った。
 「意識しすぎなんだよ、田中は。」
 
 「そう言われてもなぁ。」

 「じゃぁ、いつもどうしてたの?話さなくちゃいけないとき。」
 
 「下を向いてだね、顔を見ずに、ボソボソっと話す。」
 ため息をついて、だいたいさ、と木南は続ける。
 「塾の先生って女の先生なんでしょ?大丈夫かい?」
 僕は自分の慌てようを思い出し、はっきりとNoと言った。

 「美人だから余計目のやりどころに困りましたね。」

 「それ関係ある?」

 「YES。」 

 「うーん・・・まぁでも、耐性はつけておいたほうがいいよね。」
 
 「・・・・。」
 僕は返す言葉も無かった。
 

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