「こうなったのは全部大和ノ国って奴らの仕業なんだ」
「何だって!?それは本当かい!?」
そんなやり取りを聞き流しながら、修行しまくる今日この頃。
俺は現在とある村にいる。
転生してから、約十年、いろんな技を身につけたが、何時の間にか(多分俺のせい)森に食料(熊やら妖怪やら)がいなくなってしまったので、やむなく故郷を捨て、暫く走り回っていると、この村を見つけ、住み着いたというわけだ。
ちなみに俺の身体は二十歳ぐらいである。何故かって言うと“波紋”を覚えたからだ。
なんというか、俺は少々トチ狂ったらしい。その証拠に馬鹿みたいなことへの抵抗がなくなっている。
――――多分、きりもみキックや大切断の修行やってるうちに、身体がもう慣れてしまったのだろう。
まぁ手刀で石斬る修行とかやってたらそうなるか……
といっても、俺には格闘技の心得なんてない。そこで、俺が弟子入りしたのが――――
「ぬるい!もっと勢いをつけろ!」
――――この真夏竜クリソツの老人だ。
最初会ったときには超ビビった。
だって声までそっくりなんだもん!
この老人の名はゲン。妖怪を生身で倒す格闘術の達人らしい。
それを聞いた瞬間、俺は土下座して、弟子入りした。
それが一年前。
現在、この村には若者が殆どいない。何でもこの村がある諏訪ノ国に大和ノ国が戦争を仕掛けていて、若い衆は大抵が兵士として徴用されているらしい。さっきの会話はそのせいだ。どっかで聞いたようなフレーズだったが。
だから、俺も修業の合間に田んぼや畑の仕事を手伝っている。
因みに今も。
ん、お前修業中だろって?
よく気付いた。ジュースをおごってやろう。んなもん無いが。
「エイヤァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
叫ぶと同時に後方宙返りから、つかんでいた鍬を放り投げる。
回転しながら、鍬は地面へと向かい、二十メートルほど畑を耕した後、俺の元へとブーメランよろしく帰ってくる。
何の修業かっていうと、相手が投擲してきた槍などをつかんで投げ返すための修行だ。
レオが光線技を使えなかった初期において、レオキック同様良く使っていたのが、手刀などで吹っ飛ばした相手の爪や角を使ってとどめをさす、“武器再利用戦法”(俺命名)。
それも身につけておいて損はないと思ったのだ。
敵もさすがに使ってた武器が自分に牙をむいたとなればびっくりすること間違いなし。
倒せなかったとしても十分な隙にはなるはず、という考えと、鍬を使って練習すれば村にも優しい、のまさしく一石二鳥のアイデアの元始まったこの修業。
最初は散々で、地面に柄の先端まで埋まったり、深い穴掘ったりしていたが、今となってはご覧の通り、
「デイヤァァァァァァァァァァァ!!」
頼れる村(と俺)の味方です!!
再び放った鍬は、先ほどよりも早く、勢いをつけて地面を削り、俺の元へと帰ってくる。
「そうだ!その鋭さだ、キサラギ!」
「はい!」
今度はゲンさんにも合格点を頂き、俺はさらに修業、そして大根づくりに励んだ。
三日後、なんか神様が来たとか言ってみんなで出迎えしろだとか。
メンドイが仕方ない。あの神様とは違うかもしれないが、それでもこの土地の神様である以上、俺も見ておかないわけにはいかないだろうと思って見に行ったのが運の尽きって奴だ。
「さぁ、準備はいいかい?」
目の前には鉄の輪っかを構えた亜麻色の髪の幼女。
な・ぜ・こ・う・な・っ・た・し
やっぱあれか、「ちっさ(失笑)」とか言ったのが原因か。
「ほい!」
って、うおい!?
いきなり鉄の輪を投げつけてくる洩矢(もりや) 諏訪子(すわこ)というらしい神様。
くそっ!!こっちはまだ覚悟・完了してないのに――――――ん!?この軌道は……!
「ハァ!!」
「――――へ!?」
高く跳躍し、それに従ってこちらを追尾してくる鉄の輪を――――掴む!!
んでもって、驚いてる諏訪子様に……
「エイヤァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
後方宙返りから、投げ返す!!
できたぁ!十分使えるじゃないか、これ!
「ちぃ!」
しかし、流石は神様。すぐに新しい鉄輪を出して打ち払う。
そして、
「そらぁ!」
また、今度は四個一機に投げてくる。
流石にアレは避けきれねぇな……。
ならば
――――シュトロームソード
一気に気を右腕に集め、それを鋭く圧縮、剣を形成する。
そのまま一気に振りかぶり、
「でやぁ!!」
鉄の輪に向かって叩きつける!
ってかてぇな……!
ひとつ目に苦戦している間にもあと三つはじりじりと迫ってくる。
打ち返せないんなら……!
「ぬぁぁぁ!!」
その場で一回転、からの……!
うけながして、三個目に当てる。すると、二つの輪っかは火花を散らした後、砕け、光となって霧散した。
次!二つ目にぶち当て……四個目にぶつける!!
諏訪子様はこの無茶クソ戦法に驚いているが、その隙を頂く。俺はシュトロームソードを消し、
「おおおぉぉぉぉ……!!」
抜刀のようなポーズを行い、腕にエネルギーを持っていったあと、後ろから左手を持って行って……十字に組んで、光線を放つ!!
――――クロスレイ・シュトローム!!
「げ!?」
諏訪子様は咄嗟に腕輪で防御する。くそっ!やっぱ持ってると堅くなるのか!波紋使いかよ!?
全エネルギーを使いつくした俺は片膝を地面に着き、肩を上下に動かす。
もうきりもみキックも使えねぇ……
「――――あははははははは!!」
すると、腕輪を俺のクロスレイ・シュトロームでドロドロにされた諏訪子様が突然笑い声を上げた。
なんだってんだ?そのまま体力を使いつくした俺は意識を失った。
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