小説『虹の向こう』
作者:香那()

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朝はゆっくりした。慌てて行っても川の水は冷たいし、かといって、狭い川べりなので、パラソルなどを持ってつり橋を渡る。泳ぎ終わったら、温泉にもう一度入り、服を着替える算段だ。

さっそくいい場所にパラソルを設置し、四人でごろり。

冷たいとか言いながら川で遊ぶ。

雅巳くんは日に焼けた体が男には似合うと信じていて、焼いていた。

ハワイじゃあるまいし、こんな田舎で焼けるもんかと思いながらも、まあ、これも思い出だしと思った。

にぎやか好きのゆうちゃんが、もっと遠くへ行きたいと言い出したが、私と博久くんは横になりたいといって、浮き輪とともに、雅巳くんが引いていった。

しばらく待っても帰ってこない。

実は博久くんも口には出さないが、ヤキモチ妬きだった。

「遅いと思わん?」
「そうでねえ。ちょっと見てくるわ」

そう言って私は川べりを歩いたが、見当たらない。

仕方ない、川のすぐ上にある橋から見下ろそうかとして、戻り

「博久くん、おらんかったで」

と言った瞬間、石で滑ってこけた。

頭は打たなかったが、したたかに足の小指を打ちつけた。

いたたと見てみると、血が出ていた。

少し割れたらしいが、なんとなくみっともなくて、黙っていた。

「ちょっと橋からみてくるき」

と言って橋まで行くと、遠くから二人が同じように戻ってきていた。

「博久くん、戻ってきゆうで」
「奥さん、ありがとう」

私も元の場所へ戻る。さも何もなかったかのようにしていたが、雅巳くんには見られていた。

「ゆうちゃん、どこまでいっちょったが?」
「旦那さんが、歩いていけれるとこまで」
「迷惑かけたらいかんろう」
「なんちゃやない。どうせ、二人で、まいまいしよったがやろう?」

図星を指され、雅巳くんに足を見せた。

「痛い。血が出ゆう」
「大丈夫よえ。大体、おまんのことやき、人を偵察に行こうとしてこけたんやろが」
「違うもん。博久くんも気にしよったき、行って戻ってきたら転んだが」
「信用ないが?俺」
「ない」

また痴話げんかしてると笑っていたゆうちゃんと、後ろで苦笑いしていた博久くんだった。

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