小説『虹の向こう』
作者:香那()

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水遊びはやめて、温泉に着替えがてら入ることになった。

温泉までは坂道で、転んだ小指が思いのほか痛くて、びっこをひいてあるいていたら、ゆうちゃんがきがついた。

「どうしたが?」
「いや、ちょっと転んで…ハハハ」
「笑い事じゃないで、爪がちょっとやけど割れて、血がでゆうやん。お風呂から上がったら、絆創膏がある  き、はっちゃおう」
「うん、ありがとう」
「ちょっと!旦那!あんたね、奥さんが足を痛めちゅうがやき、おんぶぐらいしたらどうで?」
「そんなこっ恥ずかしいことできん。歩けゆうがやき、大丈夫よや」
「冷たいね〜」

まあ、雅巳くんに言っても仕方ないと分かっている私は、歩幅を合わせてくれるゆうちゃんとそれに合わせるように、ゆっくり歩いてくれる博久くんに助けてもらった。
さすがに、雅巳くんもさっさと歩くわけにはいかず、しぶしぶ歩いていた。

温泉について、今日は長風呂しないようにと言われたが、結構暑くなっていたので、のぼせてしまう。

さっさとお風呂をすませ、ゆうちゃんに足の手当てをしてもらった。

さて、帰るには少し早いということで、森林鉄道に乗ることにした。

わくわくして乗ったが、なんのことはない、森林をぐるりと走っただけだったが、楽しかった。

調子にのった私達は今度は、インクラインに乗ることに。

水の力だけで上下できるものだ。

早速乗り込んでみる。インクラインはそのまま山の斜面を上がっていく。

「すごいねえ」
「これはこれで、面白い」

昔の人の知恵に感動した。

インクライン降り場についた。

何か、アスレチックなり何なりがあるかと思ったら、何もない。

あるのは草っぱらと景色だけだった。

最初はいいねえと言っていたが、すぐ飽きた。

でも、次にあがってくる乗り物がないと降りられない。

私達は乗り場で馬鹿みたいに待っていた。

やがて音がして、上がってくる。

着くやいなや、降りる方へ乗り込んだ。

降りていく景色も素晴らしかったが、長いする場所ではなかった。

観光もしたことだしということで、私達は博久くんの運転で帰路に着いた。

楽しい夏休みは終わりを迎えた。

そして。

四人で過ごす最後の夏休みとなった。

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