入社して最初の半年間は、雅巳くんが県外派遣となり、淋しい思いをしていたが、電話や手紙でやり取りをしていた。
当時、博久くんは、場所も全く違う部署にいた為、話すことがなかった。
外に出る機会もなく、友達と遊んでいた。
そうして。
予定より早く雅巳くんが帰ってきた。会社同士で何かあったとは聞いた。
そんなことより、嬉しくて休みになるとゲーセンへ行っていた。
そう、私達はゲーマーだった。
その頃プレイしていたのが、セガが発売したバーチャファイターだった。
当時、初のポリゴン格闘ゲームとしては、話題を呼んでいた。
今のゲームしか知らない人から見れば、「なんじゃ、こりゃあ」の世界だったが、私達には新鮮だった。
ただ、高いのが難点だったのだが。筐体がでかくワンプレイ200円だった。
その時、帰高してきた雅巳くんの部署は博久くんと同じ所だった。
毎日のように、デートしていた私に、雅巳くんが言い出した。
「○○くんおるやん?あの人もバーチャやりゆうがやと」
「へえ。どこで?見かけた事ないし」
「Pで友達とやりゆうがやと。ほら、ビリヤードで行ったろう?」
「あんなくにあったかえ?コインスナックは記憶にあるけど」
「そこにあって、ワンプレイ100円やと。筐体は小さいけど」
「それはえいねえ。でも、わたしいきなり行くのはちょっとな」
「うん、ほんで、平日やけど、俺、修行を兼ねて行って来るき。また、話ちゃおうきね」
話によると博久くんは、かなり上手らしい。
そういうわけで、平日のデートはなくなり、週末デートだけになった。