小説『虹の向こう』
作者:香那()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

その頃、ゆうちゃんに電話した事がある。

博久くんのことで。

「博久くん、どうなが?足もよくなってないし。オペはどうなったが?」
「…う〜ん、オペは成功したがよ。でも、ひさちゃん(ゆうちゃんはこう呼び出した)が言うには、なんか、 すっきりしないんだって。ほら、中学生の時、同じようなのあったって聞いちゅうろう?で、その時は、
 オペの後、すごくスッキリしたのに、今回はそれがないって。」
「どういうこと?先生は?」
「うん、で、ひさちゃんも先生に訴えたらしいがよ。そう言うて。でも、成功しているし問題ないって言われ たらしいがよ。そう言われたら、いくらあたしだって、それ以上よう聞かんわえ」
「そっかあ…先生、患者の訴えちゃんと聞いてくれてないがや」
「そういうことになるわ」

高知県最高学府である病院でそんなことがあっていいのか?

でも、博久くんが言っているにも関わらず、大丈夫の一点張り。

おかしいよ、絶対。

でも、私は口出し出来る立場にない。

もどかしかった。

でも、一番もどかしいのは、博久くんだろうと思った。

自分の言っている事を聞き入れてもらえないのだから。

もし、あの時、聞き入れてもらえていたら、違っていたのかもしれない。

それと、もうひとつ、気になることがあった。

医大だからかもしれないが、病室が変っていくことだった。

私達はお見舞いのたびに、ナースステーションに訪ねていた。

雅巳くんは気づいていたかは分からないが、私はある事に気がついていた。

動いていたはずのもう片足の動きが、少しおかしくなっていることに。

-22-
Copyright ©香那 All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える