小説『虹の向こう』
作者:香那()

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家に帰って一息ついてから、私は思い切って、口を開いた。

「あのね、博久くんのことやけど…」
「おんちゃんがどうしたで?」
「雅巳くんが気付いてないようやき、言うけど。…ガンや」

雅巳くんはポカンとしていた。

そしてひとしきり笑った。

「そんなわけないやんか。普通やったやん。おまんの考え過ぎや。それとも何かえ?聞いたがかや?」

私はため息をついて、なるべく穏やかに話を進めた。

「普通じゃないよ。どんどん、ナースステーションに近くなっているの、分かってる?
 動いていた足も、少しだけど、びっこひいてたりしているのも」
「そりゃ、ちょっとは変とは思いよったけんど、おんちゃんに限って。ただのリウマチや」
「違う。私もそう思いたかったよ。でも、違うが。…今日ゆうちゃんに聞いた」

そして私はやり取りを話して聞かせた。

「マジかや…医大は何をしゆう!」
「今すぐどうこうはないと思うけんど…覚悟はした方がいいと思う」
「おんちゃんがおらんなるなんて、考えられん!」
「もっと考えたくないのは、ご家族とゆうちゃんで…」
「…」

雅巳くんは、見るからに落ち込んでしまった。

私だってそうだ。一生懸命じゃないと立っていられないほど。

「香那…死ぬなや」
「うん…雅巳くんも」

私達は抱きしめあって。お互いこっそりと泣いた。

この事がきっかけで、ゆうちゃんから、ちゃんとガンとは聞かされないながらも、経過や様子が伝わってくるようになる。

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