しばらくしてゆうちゃんから電話があった。
「香那ちゃん、久ちゃんやけど、一人部屋になったき」
「うん。
「いつ、気がついたが?」
「なんとなく、わりと早く。でも認めなくなかったから。ゆうちゃんは最初から知っちょったが?」
「ううん。最初は、久ちゃんもすぐ治るって思いよったきね。知らんかったけど、お父さんとお母さんに聞か された」
「そっか…」
しばらくだんまりが続く。
「まあ、無理かもしれんけど、普通にして欲しいって思うがよ」
「うん。それは大丈夫。仕事柄ポーカーフェイスは出来るき」
「ありがとうね。…なんかね、誰にも話せんかったき、ちょっとほっとした」
「何にも出来んけど、話は聞けるきね。いつでも言うてよ」
そう言って電話を切った。
ゆうちゃんも辛かったに違いない。
でも、事が事だけに、誰にでも話せる事ではない。
ゆうちゃんの言葉を思い出す。
「本当の状態は久ちゃんは知らんがって」
「そうながや」
「もちろん、ある程度の病気の事は先生から聞いちゅうけど。久ちゃんは治るって信じちゅうきね」
「病は気からって言うもんね。可能性ゼロじゃないんやろ?」
「うん、今は、ね。」
「…望みにかけるよ、私。お花見せんといかんし」
「そうやね、せんといかんよね」
私はここから先は、あまり雅巳くんには言わない方がいいと思った。
細かいことは黙っていて、大事なことだけ伝えよう。
そう、心に決めた。