小説『虹の向こう』
作者:香那()

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不思議な事にホスピスに入ってからの博久くんは元気になっていった。

それは多分、24時間継続のモルヒネを見えないように胸の辺りに入れていたからかもしれないが。

元気で体調が良かったら、外出も可能という事でゆうちゃんは楽しみにしていた。

私もだけど、ゆうちゃんと博久くんお気に入りのイタリアンレストランがあったのだ。

そこに行きたいと言っていた。

うどん屋さんのは、お持ち帰りしていたが、イタリアンはそうはいかないし。

もう少し元気になったら行こうねと、二人で話しているよと電話で聞いた。

その頃というか、もう少し前になるが、私はある漫画とかゲームを題材にした小説を書いていた。

自分で言うのもなんだが、結構人気があった。

その頃、チャットなどで知り合った、今も時々連絡している年下の子がいた。

ちょうど彼女は看護師の資格を取るため短大に行き、大学への編入を考えていた頃だったと思う。

私の、のちに発病する病状についても聞いてくれていた。

ゆうちゃんはゆうちゃんで、あるイギリスの昔のコメディにどっぷりとハマり、イギリスへ行くと計画していた。

本当は博久くんと…だけど、無理だから一人単独で行くと言っていた。

それに関するお芝居があるとかで、どうしても観たかったらしい。

ゆうちゃんらしいなあと思いながら、イギリスに十日間あまりも行けるのだから、博久くんは落ち着いているのだと思っていた。

実際落ち着いていたし、普通に話も出来ていたから、妙な安心感があった。

博久くんはもしかしたら、治るのかもしれない。

などと、思ってしまうほどに。

そしてゆうちゃんは元気に旅立っていった。旅の途中で書いた絵葉書が届いた。

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