すでに、私のニックネームは”奥さん”になっていた。
一人だけの女性を名前で呼ぶのも雅巳くんの手前もあったのだろうし、いずれなるのだから、私も気にせずにいた。
ある日、博久くんが話しかけてきた。
「ほら、俺、Pに行きゆうやん。前、友達連れてきたやん。あいつにね、妹がおって、奥さんと同い年なが。 で、同じような友達もおるんよ。いっつも奥さん、一人で淋しそうにしたりしゆうき、どうやろうと思う て、誘うちゅうき、今度連れてくるきね。」
「ほんと?それは楽しみやねえ。女の子おらんでちょっとね」
「そうやろ?旦那は、気づいてないみたいなき」
雅巳くんも”旦那”というニックネームがついていた。
私は少し、ドキドキしながらもその週末を待った。
同い年の女の子が二人。一人でいいから、友達になってくれないかなあ。
そんなことを思っていた。
そして週末。
博久くんが
「ごめんよ。まだ来てないみたい。あの子らあは、Gによくおるみたいながよ。」
「あそこにもあったが?知らんかった。えいえい。気にせんで大丈夫で」
そっか。あそこにもあったのか。ただの大手スーパーだから、子供向けしかないと思っていた。
なんだかんだと言いつつ、バーチャー人口は増えているんだ。
一人ほくそ笑んでいた。
でも、やっぱり落ち着かない。
ゲーマーとは言え、女の子。身だしなみをチェックして待っていた。
すると博久くんが声をかけてきた。
「あ、来たみたい。奥さんちょっと待って」
「うん」
ああ、とうとう来たんだ。
どうしよう、気に入ってもらえなかったら。
この時は自分の人見知りを恨んだ。
けど、もう社会人なのだからと、深呼吸していた。
「奥さん、連れてきたで」
入り口付近でうろうろしていた私に、そう声をかけてきた。
振り向くと二人の女の子が立っていた。