小説『虹の向こう』
作者:香那()

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どんどん死が近づいていっている気がする博久くん。

私は耐えられなくなっていった。

県外だけれど、看護師を目指している年下のKちゃんに電話した。

Kちゃんは事情を知っているけれど、Kちゃんに何の罪もない。

でも私は同じ医学部という事だけで、自分の考えなど見苦しいところを出してしまった。

医大は実験病院だ、患者はモルモットだ、助ける気なんかないんだとか。

多分、医療関係者だったら誰でも良かったのだろう。

Kちゃんは、私よりずっと年下なのに、私の言葉に耳を傾けてくれていた。

嫌なら電話を切ればいいだけの話なのに。

ずっと付き合ってくれていた。

最初は冷静だった私だったが、感情が高ぶってしまい収拾がつかないような状態だった。

そんな私に、優しい言葉を一生懸命Kちゃんはかけてくれていた。

同じ医療関係に携わるものとして、高知医大(今は高知大医学部)のやりようは問題だと言っていた。

香那さんが怒るのも当然だし、何よりも余命を宣告されている博久くんがかわいそうだと。

でも、だからこそ、香那さんがいつもの笑顔でいてあげることが大事なのではと言ってくれた。

どんどん自分が情けなくなってきて、私はいつの間にか、我慢していたはずの涙がこぼれてきていた。

一度、涙に気がつくともう、押さえが効かなくなった。

私は、Kちゃんに怒りをぶつけるように、ひたすら泣いた。

泣いたというより、号泣だった。

「なんで博久くんが死ななくちゃならんが?!」

私はそう叫んで泣いて泣いて泣いた。

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