小説『虹の向こう』
作者:香那()

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雅巳くんと別居して離婚するまで、なかなかお見舞いには行けなかった。

ゆうちゃんも忙しいと深夜の電話で漏らしていたし。

見た目、大きくなったぐらいしか分からないから、どうなっているのか分からなかった。

それに安定していたことも足が遠のいてしまったことの原因のひとつだった。

でも、それは全くの間違いであった。

静かに確実に病魔は博久くんの体を蝕んでいっていた。

一番恐れていた事が起こっていた。

肺への転移。

それでも急激に悪くなったわけではなかった。

鼻に酸素チューブをするのもすぐではなかった。

どこかで安心していた。

大丈夫だよ。

博久くんのことだもん。転移なんかに負けないよ。

転移した事は、事前にゆうちゃんから知らされていたが、その時点では確認が出来る程度だったから。

そんな折だったと思う。

ゆうちゃんのお父さんも末期がんが見つかり、余命宣告を受けていた事を知ったのは。

一向に治療しようとしない病院に見切りをつけ、転院しようと説得するゆうちゃんたち家族だったが、聞き入れなかった人だった。

最終的には高知医療センターという、紹介状があって初めて診てくれる病院に移ったのも手の施しようがない時だった。

私はゆうちゃんになんで話してくれなかったのかを聞いたのだが、ゆうちゃん曰く、どうなるものでもなかったし、またそれで香那ちゃんも心を痛めるのが見えていたから黙っていたと。

そして、死神の足音が近づいてきた。

これには少し怖い話があるので、全て書き終わった後、終章として書くつもりだ。

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