小説『虹の向こう』
作者:香那()

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いつものように出勤し、仕事を始めてしばらく経ってのことだった。

普段はマナーモードにしていた、PHSだったがこの日は切り替えを忘れていた。

急に、私の電話が鳴り始めた。

9時過ぎだっただろうか?

こんな時間に電話をかけてくる人は限られている。

慌ててPHSを取り、画面を見る。ゆうちゃんだった。

すぐにボタンを押して通話にした。

「もしもし?」
「香那ちゃ〜ん」

ゆうちゃんは泣いていた。

私は真っ青になった。

まさか、まさか。

博久くんが?

「どうしたが?ゆうちゃん」
「ひさちゃんが、危篤になったが…」
「危篤?!」

私は職場だという事も忘れて声を上げた。

「意識はあるが?まだ、大丈夫なが?」
「うん、意識は戻ったけど…でも…」
「意識はあるんやね!」
「そんでね、香那ちゃんに、ひさちゃんに会うてほしいって思うて…」
「そんなん、いつでも会うで?なんなら今日でもいつでも」
「うん、今はね、少し落ち着いたが。だから土曜日でかまん?」
「かまんかまん!私、行くき!行かんわけないろう?」

泣き続けるゆうちゃんを宥め、土曜日の時間を約束して電話を切った。

とうとう、来てしまったのか…?

お別れの時はすこしずつ、進んでいた。

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