小説『虹の向こう』
作者:香那()

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お見舞いが済んでクルマへ戻る最中、ゆうちゃんが聞いてきた。

「何かはなしたかえ?入ったら二人ともだんまりやき」
「好きでだんまりしちゅうわけじゃないき。なんか何を話していいか分からんかって」
「なにが?」
「だって、ふつうやったら、元気?とかどう?とか言えるやん。でももう両方が知っちょたら言えんやんが。
 ゆうちゃんが早う帰ってこんろうかって、思いよったがで」
「香那ちゃんらしくないねえ。どうどうと話せる人やん」
「こういうことは始めてやき分からんの」

ちょっとすねて見せた。

ゆうちゃんは軽くうけながすと話し始めた。

「うちのお父さんが末期がんって言うたやん?ほんで、それもあって話しよったがよ。何がえいとか」
「あ〜」
「でも、いかん。お父さんは弱い!うちのひさちゃんをみてみいや。どんだけ頑張りゆうで。こうゆう時に人 間性がよく分かるで」
「まあ、お父さんもまさかと思うちょったろうし」
「お父さんの事はえいわ。今日は来てくれてありがとうね」
「なんのなんの」
「これから食事でもいきたいとこやけど、お父さんにだれかがついちょかにゃいかんき」
「そりゃ、親孝行になるわね。あたしの事は大丈夫。よろしゅう言うちょって」
「あ、そうだ。雅巳くんは知っちゅうが?」
「知らん。あたし、電話番号しらんし。」
「どうしようか?もしあれやったら、あたしから、一言言うけど」
「香那ちゃんがイヤじゃなかったらお願いしていい?」
「いやもへちまもあるかえ。わかった、連絡するね」
「ありがとう」

そんな話をして、私は家まで送ってもらった。

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