小説『虹の向こう』
作者:香那()

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ゆうちゃんに送ってもらった後、私は部屋でじっとPHSを握り締めていた。

すでに私はもう”元妻”だ。連絡先など消されていてもおかしくない。

離婚届を出してから、全く会ってないわけだし。

でも、雅巳くんはじめ会社の人は、博久くんのことを気にかけてくれている。

やっぱり。私が連絡するべきだ。

よし!と電話を握り、久しぶりの番号を呼び出してかけた。

トゥルルル…何回か鳴らすと電話に出た。

「もしもし?ひさしぶりやんか。どうしたがで?」

私は一呼吸おいた。

「あのね、博久くんのことながやけど…」
「おいちゃんになにが、あったが?」

後でばれてゆうちゃんと泣き笑いしたのだが、雅巳くんは離婚した事が恥ずかしくて顔をだせなかったのだ。

「今日ね、ゆうちゃんと行って来たんよ。というか、会ってくれって」
「そんなに悪いがか?」
「これで二度目の危篤やったんやって。で、会えるうちにってことらしくて。
 もう、肺もガンが転移していっぱいなんやと」
「俺にはなんで連絡ないが?」
「そんなん知らんけど、ゆうちゃんが言うには、番号がわからんって
 で、私が代わりに連絡するってことになったんよ」
「それで?どうやった?」
「どうやったもなにも、何を話していいかわからんしで。ぞろぞろ見舞い客が来るって事で分かるやん。
 でも、長くはないと思う。良かったら博久くんのとこへ行っちゃってくれる?」
「おう、分かった。行くわ。病室は変わってないでね?」
「うん」
「会社の人にも心当たりの人に言うてみる」
「ありがとう」
「おまんが礼をいうことじゃないわや。了解したき」
「じゃ。ばいばい」
「おう」

それだけ話して電話を切った。

電話を握り締め、私は抑えていた涙をこぼした。

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