小説『虹の向こう』
作者:香那()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

博久くんが自己紹介をしてくれた。

「初めまして。よろしくお願いします。」
「こちらこそよろしくお願いします。」

三人は挨拶を交わしたが、私とゆうちゃんはお互いの顔を見合わせた。

どっかで聞いた名前、どっかで見た顔。

記憶の糸をたぐりよせた。

言葉を発したのは、ゆうちゃんだった。

「もしかして、香那ちゃん?H中の?」
「うん。もしかせんでも、ゆうちゃんでね?」
「いや〜、こんなくで香那ちゃんに会うなんて思うてなかったで。久しぶりやね」
「こっちこそ、ゆうちゃんがゲーム好きなんて思うてもなかったで」

博久くんが目を丸くしていた。

「何?二人とも知り合い?」

二人して頷いた。

「うん、中学校の時、仲良しやったがって」
「高校に入ってから疎遠になったけんど」

雅巳くんもやってきた。

「香那、友達やったって?」
「うん、中学の時の。びっくりした」
「良かったやん。話しやすいろうがえ。元々友達なんやき」

博久くんも驚いていた。

「偶然ってあるがやねー。まさか奥さんの友達やったとは」

ゆうちゃんが口を開いた。

「奥さん?香那ちゃん、もう結婚しちゅうが?」
「あ、まだやけど、もう数ヶ月で籍だけ入れるが」
「そりゃ、おめでとう。なんかそれも意外や」

そこからは、女の子三人の独壇場と化した。

女を三つ書いて、姦しいとはよく言ったものだ。

ゆうちゃんたちは二人で(実はもう一人も一年だけ塾が一緒だった)やっていたという。

「女の子でバーチャしゆうのって、おらんやん?誰かおらんかなって言いよったら、香那ちゃんの存在を聞い たがって」
「私も一人やったき、なんか淋しいというか。良かった〜。仲間がおって。おまけにゆうちゃんやもん」

あっという間に打ち解けて、バーチャどころではない一日だった。

常連と化していた私を見て、他の常連さんも驚いていたらしい。

あの大人しい奥さんが笑って喋ってるって。

案外、面白い人なんかもねって、話題になってたとか。

本当に世間は狭いなあと思った。

-5-
Copyright ©香那 All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える