小説『日常の中の非日常 2』
作者:つばさ()

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リビングを通り抜けてキッチンに行き、ガス台の上に置いてある鍋のふたを開けた。

香辛料の効いた、カレー独特のにおいが辺りに充満する。


「あ、やっぱカレー?」

「みたいだな。皿の準備とかしといてくれ。僕が温めておくから」


稔弘は二カッと笑って「りょうかい」と言うとウキウキとした様子で皿やスプーンの準備を始めた。


僕はカレーをゆっくりとかき混ぜながら温める。



カレーは嫌いだ。


これを言うとみんな驚く。



食べられないのでなく、嫌いだ。

あれば食べるし、食べる時は食べたいだけ食べる。でも、嫌いだ。だって、思い出しそうになるんだ。



僕の、母さんのことを・・・・・・。



「兄ちゃん、ちゃんとかき混ぜないと!」

「えっ、あ、悪い」



ぼーっとしてた。鍋の中のカレーがぐつぐつと音をたてていた。

慌ててカレーをかき混ぜる。


準備の早いことで、僕の隣で稔弘がカレーの皿にご飯をのせてスタンバイしていた。


鍋の火を消して、稔弘から皿を受け取り、それにカレーを流し込む。
もう一つの皿にも同様にカレーをのせると、それらを持ってリビングのテーブルにつき、二人で手を合わせて「いただきます」と言うと、スプーンでそれをすくい食べ始めた。



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