バタバタと廊下を走る誰かの足音。
この時間、廊下をこんなにあわただしく走る人はほとんどいないのに。
ガラッと音をたてて、僕達の教室の扉が開く。
そして顔を出したのは副校長先生。
「どうしたんです? 副校長先生!」
「野崎先生! 岡本君はこのクラスですね!?」
「え、ええ・・・・・・岡本君! ちょっと廊下に出てください」
僕が呼ばれた。なんだろう。嫌な予感がする。行きたくない。
でも。
行かなくては。
立ち上がり廊下に出る。僕の後ろで閉められた扉の向こうから、生徒達のどよめきが聞こえる。
「岡本君、早く病院へ。弟さんが・・・・・・」
稔弘が・・・・・・?
僕は走りだした。
先生が持っていた病院の場所が書いてあるメモを奪って、急いで外に出た。
いつの間にか雨が降り出している。
傘なんかささずに、僕は走った。
息を切らしながら、冷たい雨の中を。
なにも、聞こえなかった。
雨が僕にあたる感覚も無かった。
ただ、走っていたんだ。僕は。