病院に着いた。
病院の前に黒い車が止まっていて、すぐに父さんのものだと分かった。
足を休めることなく病院の中に走って入って、たくさんの人がずぶぬれの僕を訝しげに見ていたけど、それも全部無視してカウンターに行った。
「あの・・・・・・岡本稔弘の、病室・・・・・・は?」
息が絶え絶えで、そう言うのが精いっぱいだった。
カウンターのお姉さんは、僕を変な人を見るような目で見ていたけれど、僕の口からその言葉を聞くと悲しそうに顔を歪め、「岡本さんは・・・・・・」と言葉を濁した。
僕はお姉さんに連れられて、病院の一室に来た。
そこには医者らしき男性や看護婦さんのほかに、父さんや、叔母さんがいて、その人たちが揃って顔を伏せて一つのベッドを囲んでいた。
吐き気がするほど、嫌な空気だった。
「・・・・・・博紀」
父さんが僕に気付いて、ベッドの頭の方に引っ張った。