小説『日常の中の非日常 2』
作者:つばさ()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>




それで「今日の夕飯はカレー?」って聞くと、嬉しそうに「ええ、そうよ」と言っていたんだっけ。



「母さんが死んで、一番泣いていたのは俺だったな。お前たちは、母さんの死がまだよく分からず、ずっと母さんに話しかけていた。それを見て、更に涙が込み上げてきたのを覚えている」


「・・・・・・そうだったっけ」



扉越しの、微妙な距離。


それでも、父さんの優しさが伝わってきて、また涙が流れた。



「博紀・・・・・・お前は、なにになりたい?」


「え・・・・・・」


「今まで、お前の自由を勝手に制限して、政治家にすることばかり考えていて、聞こうとしたことも無かった。お前の夢は、なんだ。やはり、小説家か?」




『おれ、兄ちゃんの小説好きだよ』


『兄ちゃんが、今やりたいことをすればいいと思うんだ。そのしわ寄せがいつか来るとしてもさ、やっぱ、今がなにより大事だって思う』





-20-
Copyright ©つばさ All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える