小説『日常の中の非日常 2』
作者:つばさ()

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ふと、部屋の一角に目がいった。

そこだけ綺麗に片付けられている。小さな棚があって、鍵が閉められるようになっているが、鍵は閉まっていないようだ。



好奇心に負けて、その棚の中を覗いてみた。




入っていたのは、原稿用紙。




僕は驚愕した。


それは、僕が今まで稔弘にあげてきた、無数の小説だった。




誕生日になにかを買うお金がなくて代わりにあげた小説。


せがまれて書いた短編。


気の向くままに数カ月かけて書いた長編。




稔弘の、あの言葉が蘇る。



『おれ、兄ちゃんの小説好きだよ。なんか温かくてさ』



ああ、本当にあいつは、僕の小説を好きでいてくれたんだ。

こんな風に、全部大切にとっておくほどに。




その時、心に空いた穴が埋まった気がした。

さっきまでの自分の疑問が馬鹿らしく思えてきて、胸の中にあったもやが晴れていった。




僕は父さんの元へ走った。




たくさんの原稿用紙の束を持ったまま。





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