小説『日常の中の非日常 2』
作者:つばさ()

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父さんはリビングにいた。

僕は興奮した自分を落ち着かせるために、わざと肩で息をした。



「・・・・・・父さん」


「どうした、博紀」


「父さん、僕、小説家になりたい。稔弘が、僕の小説を好きだと言ってくれたんだ。それに僕は、小説を書きたい! 現実的な夢じゃないのは分かってる! でも、僕は今を生きている。今の輝きを、なにより大切にしたいんだ。将来を悩むより、過去を悔やむより・・・・・・それが大切だって、気付いたんだ! 僕は夢を追いかける。そう決めた・・・・・・いや、決意したんだ!」



勢いのまま、僕は思っていることを全てはきだした。

初めて、父さんに言った。僕の思い。



父さん、伝わっているだろう?



「・・・・・・博紀、お前がそうしたいなら、そうしなさい。だが、条件がある」



条件・・・・・・?



「俺が生きているうちに、お前の小説をハードカバーで読ませてくれ」



父さんは笑っていた。

久しぶりに見た、父さんの笑顔。


僕も、つられて笑っていた。




窓の外では、絶え間なく降っていた雨がやみ、七色の橋が姿を現していた。


まるで、稔弘を迎えに来たかのようなそれに、僕はまた、目の端に雫を浮かべながら笑ってしまうのだった。






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