頼んでもないのに、吉岡は手帳に挟んでいた家族写真を僕に差し出す。
そして、僕はその写真を見て驚愕した。
「・・・・・・え、この子が、娘か?」
「ああ、妻の方によく似ててな? こう、髪の毛の色とか、目のくりっとしたところとか」
その写真にうつる少女は、僕が高校生の時に駅で出会ったあの少女によく似ていた。
そりゃあ、何年も前の記憶だし、曖昧な所も多いけど。それでも、そっくりだった。
「・・・・・・不思議なことって、あるもんだな」
未来からきた少女。
そんな風にいえば、なぜか安っぽく聞こえて、『時間の歪みによる運命の出会い』とでも言った方がまだいいなと思った。
「あ? なに言ってんだよ。それより、そっちは最近どうなんだ? 小説家の先生さんよ」
「この前また一冊本を出させてもらえたけど、売れるかどうか・・・・・・でも、父さんとの約束は果たせたから、別にいい」
父さんは、僕が初めて本を出させてもらえた次の年に、ガンで死んだ。
それでも、僕は約束を果たせたし、父さんは、死ぬ間際まで僕の本を手元に置き続けてくれていた。
それが、とても嬉しかったから。
だから、売れても売れなくてもいい。