学校が終わって、部活に入っていない僕は、まっすぐ駅に向かった。
ホームに入る。
この時間、ここは人が少ない。例によって今日も人は少なく、何人かの学生や、早上りの会社員がいるだけである。
そんな中、ベンチに一人の少女が座っているのを僕は見つけた。
他とは違うためにやけに目立ってしまっているその幼い少女が、どうしても気になって、僕は彼女に近づいて、さりげなく横に座った。
「・・・・・・君、こんな時間にこんな所でどうしたの?」
「え? わたし?」
「そう。君」
「・・・・・・根岸ってとこに、行かなきゃ。家、帰るの」
迷子、かな?
「迷子じゃないよ。家に帰るの」
・・・・・・心を読まれた。そんなに分かりやすい顔してたのかな?
それにしても、『家に帰るの』の一点張りとは。
「・・・・・・僕が、根岸駅まで付き添ってあげようか?」
「え?」
少なくても、せめて、電車の中だけでも。
この時間は確かに人は少ないけど、時々ヤンキーとかが乗ってきて危ない時もあったりする。だから、こんな少女が一人でいるのは意外と危険。
「・・・・・・お兄ちゃん、お話し相手になってくれるの?」
「うん。二人でお話ししよう。君の、名前は?」
「えっとね、知らない人に、名前教えちゃダメなの」