小説『ドラゴンボールN』
作者:プータ()

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 第十一話 熱戦だ!烈戦だ!超激戦だ! 後篇

 ブロリーが雄たけびを上げながらナスビ達に近づいてくる。その姿はサイヤ人の伝説にある金色の戦士。超サイヤ人そのままだ。瞳から黒目が無くなり白一色になり、筋肉は肥大化し体格が通常より一回りほど大きくなっている。より凶悪なパワーがあるのだと良くわかる。
 セロリとナスビはありえないと思って見ていた。ブロリーの腹はナスビが腕を貫いたというのに、血液自体はほぼ止まっているし、そんな事を感じさせないほどにブロリーの歩みは二人に威圧感を与えてくる。そしてかろうじて戦いの余波でも残っていた建造物の残りは、ブロリーから発せられる気の余波だけで次々と倒れていく。
 
 「金色の戦士?私は夢でも見てるのか……?」
 「夢なら悪夢だよ……ここにきて超サイヤ人だなんて」

 ナスビにとっては誤算もいいところだった。こんな事なら体を吹き飛ばしておけばよかったと後悔した。思い返してみれば、ブロリーは赤ん坊の頃にもナイフを突き刺されても生きていたらしいし、悟空にも腹をナスビと同じように貫かれて生きていたのだ。生きている可能性を忘れるなんて、とナスビは自分を責めた。

 「お前らはただでは殺さんぞ……!」

 その瞬間ブロリーは二人に向かってすさまじい速度でもって突っ込んでいく。
 恐怖ととっさの事で動けない二人。そんな二人にブロリーは口元を笑わせながら二人にラリアットをして首を刈る。そのすさまじい腕力と豪速とでも言うべきスピードに乗って二人は引きずられていく。

 「「ぐぁあ!」」
 「ははははは!」

 そしてそのまま地面に直撃した。ナスビとセロリは喉を押しつぶされて血を吐いたが、セロリのほうが気が小さいためダメージは大きい。
 ブロリーは空に浮き上がり右手を前に出す。そしてエネルギー弾を作り出し地面に埋もれている二人に向かって連射する。

 「ぐぁあああああ!!」
 「あああああぁぁ!!」
 「ははははは!!」

 ブロリーの高笑いが響く中エネルギー弾の爆音がとどろく。
 その光景はすさまじく、やられている二人にしてみれば恐ろしさしか感じない。
 
 「に、二十、倍、界王、けーーーん!!!」

 ブロリーの弾幕の中からナスビの声が響くと同時、真っ赤なオーラが爆煙のなかから飛び出してブロリーに肉薄する。
 そして一瞬で距離を詰めたナスビが一撃二撃と殴っていく。頬、顎、腹と拳の弾幕とでもいうべき速度で持ってブロリーに拳を浴びせていく。
 
 「なっ!」

 だが今のブロリーとの戦闘力の差か、多少のダメージは通っているのはブロリーの肉体に刻まれた打撃痕でわかるが決定的にパワーが足りない。
そして殴っているナスビの手をいとも簡単にブロリーはつかんだ。もう一方の手でもってナスビは殴りつけたがそれもつかまれる。そしてブロリーの顔面がナスビに近づいたと思ったら強烈な衝撃がナスビの顔面を襲った。ブロリーの強烈な頭突きだ。
 そしてブロリーがナスビの腕をつかみながら連続の頭突きを繰り返していく。一回二回と繰り返していくうちにナスビの目の上は腫れて目が片方開きにくくなり、鼻は折れているのか鼻血が垂れてくる。
 これはまずいと朦朧とする意識を建て直し、ナスビは自分の膝蹴りをブロリーの顎にあてる、ブロリーが手を放したのでその勢いのままクルリと空中で後ろ回りする事でもって何とか脱出する。
 ブロリーから離れたナスビは折れた鼻を指で戻しフンと一息、鼻に詰まった血を無理やり鼻息で噴出する。体もボロボロ、衣服もボロボロである。
 ブロリーは殴られた顎をさすりながらナスビをにらみつける。だがすぐににやりと笑う。

 「くくく、ははは!!!いい事思いついたぞ!」

 そう言ってブロリーはナスビに開いた手を向ける。ナスビが気功波かと身構えたところでブロリーの腕が地面のほうに向けられる。そしてそれを見たナスビは。

 「っ!!!この糞野郎!!!」
 「はははは!!」

 ブロリーが手を向けた先、そこには先ほどのエネルギー弾連射によって全身ぼろぼろで動けなくなってるセロリがいたのだ。そして放たれるブロリーのエネルギー弾は間違いなく今の無防備なセロリが受けた場合致命傷になるであろう威力。それをナスビは追い、ブロリーに背を向けて、セロリの前に立ちはだかる。

 「がっぁあ!!」

 ブロリーの放ったエネルギー弾はしっかりとナスビが身を盾にして受け止めた、そのおかげでセロリは無事だ。だが背中にもろに受けたナスビはひどい傷で体に力が入らない。界王拳も解けてしまった。
 倒れたナスビの前にゆっくりと下りてくるブロリー。

 「はははは、そんな雑魚を守るとは!そいつはお前のつがいか?」

 ニヤニヤとしながら黒目の見えない白目でナスビに問いかけるブロリー。ナスビはそれに答えない。嫌な予感しかしないからだ。
 そしてブロリーはさっきの顎のお返しだとばかりにその剛脚でもって倒れているナスビの顎を蹴り上げる。そのせいで脳が揺らされたナスビはすぐには起き上がる事が難しい。

 「答えないか?ならやってみればわかる」

 ニターっと笑いながらほとんど意識の無いセロリの近くによって行くブロリー。そしてブロリーがセロリの足を踏みつける。

 「これが嫌なのか?」
 「や、やめろ!」
 
 ナスビの必死の訴えを気にせずに、ブロリーは愉悦を浮かべた笑みをし、転がるセロリの左足を踏みつけた足に力を込めた。
 そして耳障りの悪い、骨の折れた音が響き渡った。

 「ああぁあぁぁぁぁぁ!!!」
 「セロリイィィーーー!!!」
 「ははははは!気持ちいいだろう?」

 セロリの悲鳴を聞き叫ぶナスビ。それを見て大笑いするブロリー。その姿は自分で言うように悪魔そのものだ。
 
 「次は右足だぁ」
 「やめろよ!!!!!」

 セロリの右足に足を乗っけたブロリーに怒鳴るナスビ。横たわりながらも砂を握り締める。
 ナスビは今まで感じた事の無いほどの怒りを感じていた。体のそこから怒りがこみ上げてきてどうしようもない、体が沸騰するように熱い。
 ナスビは今まで生きてきた中で本当に人を殺したいと思った事なんて無かった。今まではサイヤ人として育ったせいもあリ、殺す事は普通の事として育ったのだから。だが今は違う。今はただブロリーが憎くて憎くてしょうがなかった。殺してやりたくってしょうがなかった。
 フリーザとは実際に会っても、別に自分に対しては直接的に害をなされた事も無かった。でも今は現実にブロリーという最悪の悪魔によって、自分にとって一番付き合いの長い、そして一番大切な人が蹂躙されている。それが悲しくて、許せなくってどうしようもなかった。
 そしてブロリーの足はセロリのもう一方の足の骨を砕いた。そしてセロリの悲鳴がまた響き渡り、ブロリーの楽しげな笑い声も響き渡る。 

 「今度は右腕と左腕どっちがいい?」
 「う、ぁぁ……」
 
 セロリは痛みで意識が朦朧としているからか細いうめき声を上げている。全身痛めつけられた状態で骨を折られて、今は虫の息だ。
 
 「やめろ……」

 ゆらりと、幽鬼のような足取りで立ち上がるナスビ。はたから見れば様子がおかしい。だがナスビからしてみれば体にだんだんとだが力がみなぎっているような感覚だ。髪は揺らめきながらだんだんと上を向き始めている。
 
 「何でだ?こんなに楽しいのにやめるのか?はははは!」
 「おまえだけは!おまえだけはあぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 その瞬間、ナスビの中でぷつんと何かが切れた。そして髪の毛が黒と金色に明滅し、瞳の色も緑に変化している。
 今のナスビは純粋な唯一つの意識でいっぱいだった。他がどうでも良くなるほどの、こいつを殺してやりたい、こいつの存在が許せない、ただそれだけの純粋な思い。純粋な憎しみの気持ちだった。

 「なんだ?」

 ブロリーもやはり驚き、だんだんと金色のオーラを出し髪が明滅するナスビを呆然と見ている。その姿は多少怯えているようにも見える。
 だがブロリーは自分を一瞬でもひるませたナスビに怒りを感じたのだろう。その顔を一瞬で憤怒の色に染め、その怒りを腕に込めてエネルギー弾を作りナスビに投げつける。その威力はさっきまでのお遊びではなくしっかりと威力を込めたものだ。それがナスビに着弾した。爆煙が広がりナスビの姿は見えなくなる。

 「ははははは!……は?」

 着弾の砂埃からは全く意に介した様子の無い金色の戦士が現れた。普段の多少ふやけた目からは爛々とした緑の輝きを放ち、悠然と立っている。超サイヤ人となったナスビだ。
 自分の体を見るナスビ。そして思う、やっと超サイヤ人になれたのかと、こいつを消し飛ばせる力を手に入れたのかと。ナスビも他のサイヤ人と同じように超サイヤ人になって興奮状態のようだ。その影響で残酷な思考になっているし、自分の体の痛みに鈍くなっている。
 そしておそらくブロリーもそうなのだろう。腹に穴が開いて立っているのも超サイヤ人に覚醒した事によって痛みが興奮していてわかりにくくなっているせいだ。そして腹の穴の周りを筋肉で締めて血を止めている。

 「……これでやっとてめえをぶっ殺せるな!!ブロリー!!」
 「戯言を……!!」

 そして戦いが始まる。
 ナスビはすぐさまセロリに害の行かない距離に移動しようとブロリーに肉薄。

 「なっ!」 

 驚くブロリーの顎を殴りあげる。そしてそれを追い、蹴りで追い討ちをかけるナスビ。
 その衝撃で遠くに飛んでいくブロリー。そして轟音を立てて地面に突き刺さる。

 「(此処なら気兼ねしなくてすむ)」
 「貴様ぁぁぁぁぁ!!」

 瓦礫を気で吹き飛ばし、突き刺さった地面から這い出るブロリー。怒りに顔を歪ませている。
 そして瓦礫から出てきたブロリーの顔面にすぐさまナスビは膝蹴りで持って答える。ひるむブロリーに更に追い討ち。もう片方の足で持ってブロりーのコメカミにまわし蹴り、そのまま更に回転しローリングソバット。
 ブロリーも黙ってはいない。蹴られて吹っ飛ぶのを無理やりブレーキ。そして殴られた怒りをぶつけるように拳をナスビに叩きつけていく。
 拳と拳、肘と肘、膝は膝それぞれがぶつかり合いながら大気を震わせて戦う金色の戦士。その無骨な戦いは二人とも星を簡単に破壊できるエネルギーを内包したもの同士の争いらしいすさまじいものだ。
 だが長引くのは二人にとってもいい状況ではない。
 ブロリーは腹に風穴が開いている。流石にずっと治療しないのは限界があるだろう。
 ナスビは確かに超サイヤ人になり戦闘力は急激に上がった、だがそれまで界王拳を使ってできた負担、体の傷、使った気が戻るわけではない。そのせいで全開を出す事は難しい状態だ。もし体調が万全だったら基礎戦闘力の差で勝てただろう。

 「(このままじゃ下手したら共倒れか、くっ!なら一撃で決めるしかないか!)」

 なすびは長引くのはまずいと自分の必殺技で決めにかかる。
 ブロりーの拳をわざと受けその腕をつかむ。

 「なに!?」

 驚くブロリーをよそに、つかんだ腕を勢いをつけて自分の上空に投げるナスビ。そしてその方向に腕を向ける。

 「オメガ!!!」

 気を高めて手と胸に集中させるナスビ。それは超サイヤ人となった事で今迄で一番の威力だと打つ前からわかる。

 「バスタアァァーーーーー!!!」

 そして放たれる極太の赤い気。瞬時にナスビの視界いっぱいを赤に染める。そしてそれがブロリーに直撃する。 
 
 「(てごたえは有った!!!)」

 そしてオメガバスター放つのをやめるナスビ。そして直撃した証拠にブロりーのいた場所からは煙が上がっている。

 「(おかしい!!!当たったはずなのに落ちてこない?消し飛ばしたか?)」

 空にある煙からは落ちてこないブロリー。そして煙が晴れたそこには。

 「くっ!それが有ったか!!」

 煙から出てきたブロリーは自身が生み出したバリアーでもってオメガバスターを防いでいた。だが完全には防げなかったようで腕から血が流れ、腹の傷も開いたようだ。だがそれでもなお瞳は狂気をうつしだしたままだ。

 「この糞野郎!!」

 すぐに襲い掛かるナスビ。だがブロリーもだまってはいない。気を体にまとい頭を前に直進してくる。ナスビはよけるが、ブロリーもそれは予想していたのだろう。すぐに軌道修正しその速度でもってナスビの腹に頭を叩き付けた。

 「があ!!」

 吹っ飛ぶナスビ。そしてすぐに体勢を立て直す。
 ナスビは追撃がくるかと思ったが、ブロリーは全くしてこない。みてみれば、流石のブロリーも体力的に限界なのだろう。肩で息をし、腹から血を流している。
 勝機を見つけたナスビは今できる全速でもってブロリーに近づく。そして殴りかかる。
 ブロリーもただ受けるわけも無いので顔面に来た拳をかがんでよける。だが。

 「があぁぁ!」 
 
 ナスビに拳は二つ有る。片方でブロりーの顔面を狙い、もう片方の腕で腹に開いてる風穴に手を突っ込んだのだ。空手の山突きという技。前世の記憶にあった漫画技である。このタイミングでナスビが思い出した辺り、走馬灯でも見たのかもしれない。

 「これでおわりだあぁぁぁぁ!!!!」
 「カ、カカロットオォォォォォ!!!!!」

 ナスビは腹の中にぶち込んだ腕からエネルギー弾を破裂させた。そしてブロリーは爆発とともに爆散した。

 「この糞ガキ……おれはカカロットじゃねえつうの」

 辺りにナスビの呟きが響いた。


 あとがき

 熱戦だ!烈戦だ!超激戦だ!っていう歌が好きです。かっこいいうたなんで聞くとテンション上がりますよ。
 今回初めてまともなバトルシーンを書きました。バトルシーて大変なんだと初めて認識しましたよw
 そしてナスビ君が超サイヤ人に覚醒しました。そして超サイヤ人化のせいで凶暴化しているナスビくん。
 まああれっす、ここらで覚醒しとかないと予定どうりだと死んでしまうんですよね。
 それと最後に出てきた山突き、とあるバトル漫画から抜粋させていただきました。DB持ってないのにそっちは持ってるんですよ。
 

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