小説『ドラゴンボールN』
作者:プータ()

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 第十九話 男女の戦士のsyu☆ra☆ba!

 side三人称

 瞬間移動で飛んだ先、それはカメハウス上空だった。ここに飛んできたのはナスビがとっさに飛べるほどなれた場所だったからだ。それにここならカメハウスのみしか存在しない。まわりは海、ちょっとふっ飛ばしてもそれほど危害は無い。

 「ほら!セロリ落ち着けって!俺は浮気なんてしてないから!」
 「嘘だ〜!離せー!」

 瞬間移動時にセロリを抱えたままの状態で何とか抑えるナスビ。しかし酔っているのと、怒りによる補正でほとんど本気で戦闘力を上げているセロリ。だが今のナスビは常に超サイヤ人になっている状態だ。力の差が歴然、そのためいかにナスビの腕の中でセロリが暴れようとも全く意味をなさない。

 「離さないなら!」
 「セロリ!?馬鹿!やめろ!」

 気を高めるセロリ。全身から気を立ち上らせる。そして一瞬、気を開放したと同時に全身から気功波を発する。

 「うわ!」

 流石のナスビもろくに気も上げていない状態の超サイヤ人状態で強烈な攻撃を眼前で食らえばびっくりしてしまう。ダメージは無いがセロリを離してしまった。
 セロリの思い切った攻撃の余波により、ナスビ達の下の海ではでかい波が起こり、カメハウスを台風が襲うような形になっている。
 
 「な、なんじゃこの馬鹿でかい気は!?」

 高めたセロリの気を感じ取り、就寝中だった亀仙人もあわてて目を覚ました。流石に家の上空でこれほどのことをされれば目が覚めるようだ。
 それを知らないセロリは酔いに任せてナスビに襲い掛かる。その速度は明らかにセロリの本気だ。
 
 「どうせ私は戦う以外能が無いんだ!!」

 セロリの思い切った前蹴りを避けその足を横から抱えるナスビ。だがセロリがそのまま捕まっている訳も無く逆の足で更にけりを放つ。ちなみに狙った場所は金的、これには慌てて抱えていた足を離すナスビ。

 「どうせ地球人の女のほうが女らしいもんな!」

 暴れて手がつけられない状態のセロリ。その間も何事かをぐちぐちといいながらナスビを襲っている。
 セロリは昔からさほど文句を言うでもなくナスビの世話を焼いていたし、ナスビが惑星ベジータを抜けるときも多少渋ったものの、信じてついてきた。だが不満が無いわけではなかったのだろう。セロリはサイヤ人にしては珍しく周りに気を使える奴だった。そのぶん色々ストレスなんかがたまってたんだろうなとナスビは思った。
 お酒も飲んだことが無かったセロリはその分反動がすごいのだろう。これからは定期的に発散させてやろうと思うナスビだった。

 「あと二時間帰るのが遅かったら大猿になってたんだろうな……」

 セロリの攻撃を軽やかに避けながら思うナスビ。昨日、シェンロンをピラフたちが呼び出していたということは、満月を見て大猿になった悟空が暴れていたのだろう。今はもう、朝日も少しばかり地平線の向こう側にみえる。満月は終わっている状況だ。助かったなと思うナスビ。
 連続でエネルギー弾を放つセロリ、そして更に極大のエネルギー波を放つ。ナスビは地球に当たらないようエネルギー弾をすべて上空に弾き、エネルギー波を避ける。だがそれはセロリも長年の戦闘の感で予想していた。エネルギー波を囮に、その影からいきなり現れるセロリ、ナスビは反応できない。そしてセロリの全身の気を込めた一撃をナスビの口元にぶち込んだ。

 「ぐっ!」

 やや後ろに下がるナスビ。その口元からは血が垂れていた。流石に戦闘力を上げていない状態のナスビでは、唇のような弱い皮膚ではセロリに本気で殴られれば血もでる。
 ナスビもずっと殴られているほど温厚でもない。だからといって今の超サイヤ人状態では気を上げて殴ったらセロリでは死んでしまう。超サイヤ人のコントロールが今だしっかりできていない状態では力加減が難しい。しかたなく、超サイヤ人を解くナスビ。
 
 「セロリ!いい加減にしろ!流石に怒るぞ!」
 「怒ってるのは私なんだ!」

 ヒステリックに怒るセロリ。その怒りを拳に乗せて襲い掛かる。
 的確に、抉るような拳をコンビネーションでナスビに叩き込んでいくセロリ。それを後ろに下がって衝撃を逃がしながら防御していくナスビ。
 下のカメハウスでは二人の戦いを驚愕の目で見つめる亀仙人がいる。
 辺りは二人の気の高まりで波立つ海。その中での戦いをじっと見つめている瞳は流石亀仙人といえるだろう。

 「あやつら、強い強いと思っていたがあんなに強かったのか……ワシが見えないとは、戦わなくて良かったわ。だが痴話喧嘩かのう?」

 上空で繰り広げられる戦いのレベルの高さは亀仙人はわかっていた。すさまじいまでのスピードと空気を揺らす威力で殴るセロリ、それを力を逃がしながら無傷で防ぐナスビ。自分だったらどちらの動作も無理だろう、今も眼で追いきれなくなることがある。亀仙人が生きてきた中で一番のバトルだと断言できる。惜しむらくはその理由が痴話喧嘩と言うところか。聞こえてくる単語は明らかに彼氏彼女の喧嘩話。

 「ほっほっほっ、若いのう。でもワシのうちの上でやらないで欲しいのう」

 厳しかった目を緩め、笑いながら戦いを見つめる亀仙人だった。
 だが二人にとってはそんな笑いも戦いに集中して聞こえていない。かろうじてナスビは亀仙人がこっちを見ていたのを確認したがそれだけで、戦いにまた集中した。
 ナスビがここ暫く会社のことで忙しかった間。あまりナスビは修行をしなかった。せいぜい重力室にたまにはいる程度。だがセロリはその分修行している時間も長かった。ナスビが悟空や亀仙人にかまっている間、暇だったセロリは修行ばかりしていたのだ。そのため体の出来上がりぐらいにかなりの差がある。戦闘力の差だけが戦いではない一つの形だった。

 「ナスビの浮気物!!!」

 口から発せられる怒りとともに、常人をたやすくミンチにできる威力の拳が放たれる。それにあわせて拳を出すナスビ。拳に拳をあわせていく。その一撃一撃にセロリの思いが込められているようで、ナスビは何故か答えてしまった。

 「浮気なんてしてないって!ちっ!こうなればいっそ突き合ってやるよ!」
 
 下品なようにも聞こえる言葉。だがその言葉のとうりに拳を突き合わせる二人。そしてだんだんとナスビが防御をやめていく、自分が拳を食らうのもいとわずにだ。だがそのかわりに、ナスビは自分が殴られた分だけセロリに拳を叩きつける。肘で突かれれば肘で返し、膝で殴れば膝、足で殴れば足で返していく。まるで子供の喧嘩のように。

 「私をほうっておいて何処行ってた!」
 「あの世!」

 一瞬、更に怒気を強めるセロリ。当然だろう、誰があの世にいったと信じるのだろう。ふざけているわけではないがふざけているようにしか聞こえない。
 セロリの怒りが込められた蹴りがナスビの腹に突き刺さる。

 「ふざけるな!やっぱり女のところか?!!」
 「ぐ、ふざけてなんか無い!それに俺は修行してもらうために出かけてたんだ!」

 ナスビがよくもやったなとばかりにセロリの腹に蹴りを返す。突き刺さった痛みに耐えたセロリはその足を持ち、ジャイアントスイングの要領で回し、下の海に放り投げる。更にそこに気功波を連続でぶち込んでいく。結構な威力で水飛沫が怒涛のように撒き散らされる。
 
 「ひえええぇ、あれ、死ぬんじゃないのかのう……」
 
 亀仙人の呟きがもっともに聞こえる。
 気功波が着弾している所から大きく離れた地点から大きな水しぶきが上がり、そこからナスビが飛び出てくる。そしてすばやい動きでもってセロリの気功波を避けながらセロリに肉薄し、顔面にパンチすると見せかけて残像を残しセロリの背後に回る。

 「海の中で頭冷やせ!!」 

 ナスビは両手をセロリに叩きつけて海落とした。でかい水飛沫を上げて沈むセロリ。
 更にナスビはそれを追って海に入る。
 水中のなかを見渡すナスビ。するとナスビをにらむ一対の瞳が海に差し込む光に反射した。そしてナスビに向かってくるセロリ。だが水の中ゆえに遅い。
 実はナスビの狙いはこれだった。このまま戦い続ければかなり地球に被害を与えてしまう可能性が高い。だがナスビもセロリも水中戦の経験が全くなく、慣れていない。そのおかげで二人の打撃力、攻撃力は水に逃がされてあまり強くない。だが海上ではそうでもなく、ほとんど爆発のような津波がカメハウスを襲っている。

 「も、もっと離れてやってくれ〜!」

 亀仙人の叫びは水中には聞こえない。
 水中でナスビが一発繰り出せば、その勢いで波が立ち。セロリが殴り返せば、水上で波がぶつかり合い渦潮が出来上がる。おかげで周りの海洋生物は皆逃げてしまった。
 だが二人の戦いはまだまだ終わらない。
 亀仙人は二人の戦いが終わるのを切に願うしかなかった。
 

 あとがき
 
 超サイヤ人と界王拳の違いとして界王拳は気を全開まで上げないと使えない。しかし超サイヤ人はある程度気を高めれば発動はできる。私はそう思っているんです。まあ完全にコントロールするならやっぱり第四段階にならないといけないんでしょう。
 サイヤ人同士のカップルが喧嘩したらやばそうですよね。今回のお話はそれを想像したのもあります。18号とクリリンみたいにカカア天下なら別なんでしょうが。
 今回の修羅場、被害をこうむっているのは亀仙人ばかり……かわいそうな仙人です。
 

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