小説『ドラゴンボールN』
作者:プータ()

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 第四十話 Z対Z

 side三人称

 学校から自宅へと帰ってきたブルマがきたのは変わり果てたヤムチャの姿だった。

 「ど、どうしてこんな……ヤムチャぁ〜〜!!」

 滂沱の涙を流しながら悲しむブルマ。自身と恋仲であったヤムチャが家に帰ったら死んでいたのだから仕方ないだろう。病院に行くまでも無く他殺。しかも犯人はニュースでも取り上げられている奴だ。現場の写真などを撮って警察もさっさと帰ってしまった。
 悲しむブルマ。だがないているブルマに更に追い討ちがかけられた。ピンポン、そうブルマの自宅のチャイムが鳴り響く。ブルマは対応できる状態ではないためにブルマの母、パンチーが応対する。
 
 「え……ヤム……恋……?」
 「は……そ……」

 ブルマのいる部屋からではかすかにしか聞こえない声。だがどうやらヤムチャのお客のようなのだけは理解できた。恐らく知人だろう。そうブルマは思った。
 足音が近づいてきてヤムチャの遺体のある部屋の前で止まる。そしてドアが開かれたそこにいるのは……女性。

 「ヤムチャさん!」

 そう言って女性は涙を流しながらヤムチャの遺体駆け寄っていきにすがりつく。
 その様子を見たブルマはあっけにとられる。何故女性があそこまでヤムチャに?と。

 「うっうぅ、今度デートしようって言ってたのに……」

 これを女性の口から聞いたブルマは「ああ、こいつ浮気してやがった」とヤムチャの遺体をにらみつけていた。さっきまでの悲しい気持ちも吹き飛んでいた。 
 ヤムチャはあの世にいるほうが幸せかもしれない……。

 「……って事があったのよもう!」

 先ほどまでのことをナスビ達に愚痴として話すブルマ。少し前まで壮絶な修羅場が繰り広げられていたのだ。しかもあの後にもう一人来たのだから更に大変だった。ブルマの母はあらあらなどといって笑いながらあせっていたが。

 「は、はあ……でも誰がヤムチャさんを……」

 なんともいえない表情でブルマの愚痴を聞き、ヤムチャのことを思うクリリン。やはりおなじ釜の飯を食ったなかだ。ドラゴンボールで生き返るとはいえ悲しいものは悲しい。そうゆう所、クリリンはいいやつである。
 
 「そのことで話があるんじゃが……」

 カメハウスから出張ってきた亀仙人達。今は西の都のブルマ宅、カプセルコーポレーション前に皆で集合している。亀仙人たちはニュースの後にすぐさまここへ飛行機で飛んできたのだ。
 そして話しだすのは犯行現場に残された紙。白地の紙に上下がとがった円の中に魔と書いてある紙のことだった。それはピッコロ大魔王と言われる奴の紋章のようなもので過去に悪逆非道をした奴であり、亀仙人の師である武泰斗が自身の命と引き換えに封印したと言うのだ。どうやって封印から抜けたのかはわからないがこの紋章がある以上、復活したのは間違いないということだ。

 「そいつがヤムチャをやったんか……!?」

 いつもののんびりとした表情を硬く引き締めている悟空。やはり身内に手を出されるのが一番悟空がゆるせないのだろう。先ほどまでどこぞへと突撃していきそうだったがてがかりも無いので動けないでいる。

 「……そのピッコロ大魔王ってのの容姿はどんな奴なんだ?」

 ナスビが知らないふりをして亀仙人に聞く。多少強引でもピッコロを殺してドラゴンボールが使えなくなるのは避けたいのだ。

 「うむ、体が緑色で耳がとんがって体毛が無い奴じゃ」
 「……それが本当なら一つ手がかりになりそうなやつがいる」
 「なんじゃと!?」

 亀仙人がナスビの言葉に驚く。

 「多分そのピッコロってのは宇宙人だと思うんだ」

 そうしてナスビが話していくのはピッコロと言うのは宇宙人であり、ナメック星人という惑星人であること。そしてナメック星人はこの星にもう一人いる事。

 「じゃあ!もう一人のナメック星人に聞けば!」
 「場所がわかるかもしれないな」

 クリリンがうれしそうに言う。ナスビもそれに答える。
 ナスビも一応気を探ってみたのだがほぼ感じられなかった。恐らく遠くの奴にはわからない程度には気を抑えているのだろう。いかにピッコロと言えどももう老体だ。体力温存のためだろう。

 「じゃあ俺もうひとりのナメック星人のところに行って来るわ」
 「それはいいけど何処に行くかくらい言っていきなさいよ」

 最近の付き合いでナスビに対して敬語がなくなってきたブルマが言う。ナスビとしても敬語で話されると肩が凝るのでこれでいいと思っている。

 「神様のところだよ」
 「「「はぁ?」」」
 「神様って何だ?」 

 皆が驚く中、一人だけ平常運転だった。そしてちょっとばかり神様のことについて話したナスビはさっさと神の宮殿へと瞬間移動を使った。場所さえ分かっていれば小さい気でも探しやすいのだ。これがめちゃくちゃ強い気であれば星間移動すら可能なのだがとナスビは一人ごちった。

 「でも結構宇宙人っているんですね。ナスビさんたちもそうですけど」
 「そうじゃのう。だが合点がいったわい。ピッコロ大魔王はそれまで何処にも存在した痕跡が無いのにこの星に現れたからのう。宇宙から来たんじゃッたら理由もわかるわい」

 クリリンの素朴な疑問に亀仙人も同意する。実際にはちょっと違うがそれを亀仙人たちが知る術は無い。
 
 「ふん、なんじゃ。亀仙人のくそ爺じゃないか」
 「「「!!」」」

 皆が話している中でいきなりの声に反応する。声のしたほうにいるのは鶴仙人とその弟子二人だった。

 「なんじゃ鶴仙人か。こっちはピッコロ大魔王対策で忙しいんじゃ。しっしっ」

 亀仙人は一瞥すると手で犬猫を追い払うようなしぐさをする。

 「こっちもその用事で忙しくてのう」
 「何?どうせまた以前のように逃げ出すんじゃろう?」

 鶴仙人の言葉に一瞬意外そうにする亀仙人。大昔では武泰斗が一度破れた際、鶴仙人は恐怖から逃げたのだ。それが今になってどういう吹き回しだと亀仙人は思う。

 「ちがうわ!ワシがここに来たのはドラゴンボールを貰うためじゃ。……あるんじゃろう?」

 その言葉に亀仙人が凍る。
 だが悟空が前に出て言う。
 
 「ドラゴンボールならここにあっけど、何に使うんだ?」
 
 あっけらかんとした態度で言う悟空。手には四星球が入った袋をもっている。鶴仙人が亀仙人の兄弟弟子と言う認識から警戒が緩んでいる。悟空からしてみればクリリンと同意。悟空の純真さゆえ仕方が無いだろう。

 「なに、ちょっとばかり、ピッコロ大魔王様を若きころのお姿に戻してもらおうと思っての!」
 「へっ?」
 「いかん!!離れるんじゃ悟空!!」

 鶴仙人の言葉に一瞬ほうける悟空。だが亀仙人が大声を出して活を入れる。だがその一瞬の隙に鶴仙人の手には悟空から奪ったドラゴンボールを握っていた。

 「じっちゃんの形見!!」
 「ぬう!鶴仙人!まさか貴様!」
 「ワシはのうピッコロ大魔王様に仕える事にしたんじゃよ」
 「鶴仙人!貴様そこまで腐ったか!!」

 鶴仙人の態度にピッコロの軍門に下った事がわかった亀仙人。それに一瞬悲しそうな顔をしたがすぐに憤怒の表情に変わる。そして両者ともに構える。

 「じっちゃんの形見返せ!!」

 悟空が取り返そうと鶴仙人に近寄ろうとする。

 「おっと!貴様の相手はこの俺だ!」
 「く、邪魔すんな!」

 悟空の前に天津飯が出てくる。
 クリリンがこの間に鶴仙人に近づいていきドラゴンボールを取り返そうとたくらむ。だがその前に浮きながら出てくるチャオズ。

 「お前の相手はこっちだチビ」
 「ちびって、お前のほうがチビじゃないか!」

 チャオズの挑発に簡単に乗ったクリリン。くしくも鶴と亀の戦いが始まろうとしていた。

 「どうでもいいけど私のうちの前でやら無いでよ〜」

 ブルマは早々に物陰に隠れていた。そこで言った呟きは闘争心高ぶる鶴と亀の面々には届いていなかった。




 あとがき
 ブルマの母の名前は鳥山さんがもしも名づけるならパンチーにすると言っていたのでそうしました。親がブリーフとパンチー、子供がブルマに孫がトランクスwとんでもないネーミングセンスです。
 鶴亀合戦のはじまりですね。ナスビ君は気がついておりません。

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