小説『ドラゴンボールN』
作者:プータ()

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 第四十三話 恐怖のピッコロ大魔王

 side三人称

 悠々と立つ一人の魔族。ピッコロ大魔王、その存在感は中々のものだ。法衣服にマントがついたようなものを脱ぎ捨てた下には魔の文字が印象に残る濃い紫の胴着を着ていた。

 「ワシが腹を痛めて産んだ子を!タンバリンを殺しおって!許さんぞ小僧!」
 「おめえが親玉か!」

 悟空とピッコロ大魔王、両者がにらみ合う。その様子を見ている観客はその空気に飲まれている。

 「(ああ、そろそろ晩飯だな……早く終わらせないとセロリがうるさいな)」

 ナスビだけは晩飯の心配をしていた。サイヤ人の食欲はほうっておくとヤバイのだ。

 「くくく、全員死んだぞ亀仙人。ふははは!」

 ピッコロ大魔王の登場により気が高ぶる鶴仙人。それを虫けらを見る眼で見るピッコロに気がつかない。

 「なんだ、下僕ども……生きておったのか。タンバリンの盾にでもなればよかったものの」
 「ぴ、ピッコロ大魔王様?」
 「うるさい!」

 鶴仙人が高笑いするのにイラついたピッコロ大魔王は鶴仙人を一喝。その目から放たれる怪光線で鶴仙人を貫こうとする。

 「鶴仙人様!!」

 鶴仙人の盾となる天津飯。その胸を怪光線が貫く。だがそのおかげで鶴仙人には当たらぬように光線が歪んだ。

 「「「「あっ!」」」」
 「て、天津飯!」

 膝から力が抜けるように倒れていく天津飯。その光景に驚愕する亀仙人たち。明らかに心臓を貫通しているので即死だろう。
 ナスビは反応できただろうが、晩飯の献立を考えていたせいでできなかった。ナスビはヤバイとやっちまったと思った。また墓の中まで持っていく秘密が増えた。

 「お、おめえ!仲間じゃななかったんか!?」
 「ふん、武道家をみると殺したくなるのだワシは。それに武道家は全て殺す。それを今まで生かしておいたのだから感謝してほしいものだ」

 悟空は全身の毛を逆立ててピッコロ大魔王を怒鳴る。ピッコロ大魔王は飄々としたものだ。

 「そ、そんな……」
 「わかっていたじゃろうに、鶴仙人の馬鹿め!」

 ピッコロ大魔王の言葉を聴き膝から崩れる鶴仙人。自己保身のためだったがそれも結局は無駄な事だった。亀仙人はそんな事わかっていただろうと鶴仙人をなじる。
 ピッコロが鶴仙人を殺そうとしたのはもともとそのつもりだったからだ。ピッコロ大魔王は武道家である亀仙人と鶴仙人の師、武泰斗による魔封波によって電子ジャーに封印されていた。そのため武道家を恨んでいるのだ。そして魔封波を二度と使われないようにタンバリンに武道家を殺させていたのである。

 「この!「待て悟空!」、ナスビ?」

 悟空がピッコロ大魔王に襲いかかろうとしたところをナスビがとめる。

 「何でとめんだ!ナスビ!」
 「お前でも勝てるとは思うが、悟空じゃ殺してしまうだろう?それにそろそろ晩飯だ。だから、俺がやる」
 「はっ!戯言を!!ワシを殺すだと?しかも晩飯だから?侮辱しおってぇ!!」

 悟空では勝てるだろうが殺そうとしてくるピッコロ大魔王を殺してしまうとナスビが止める。ピッコロ大魔王はその様子を見て憤慨する。晩飯だから早く倒すなどと言われれば起こるだろう。
 悟空も晩飯に釣られたのか「晩飯かぁ。ナスビの飯はうめえしな!」と言って静観するようだ。
 ナスビが悟空に話しているのを見て隙だと見たのか、高速でもって岩をも余裕で砕く拳をナスビの後頭部、急所へと叩き込もうとする。だがそんなものがナスビに効くはずも無く、ピッコロ大魔王の腕を見ないでつかんで止める。

 「丁度いい、悟空見てろよ。相手を殺さないで気絶させる一手だ」

 そう言ったナスビはつかんでいた腕を持ったままピッコロ大魔王に向き直る。

 「まずは当身だ。これはダメージ目的じゃなくていい。一瞬気をそらすようなものだ」

 ナスビが見える程度まで速度を下げた拳をピッコロ大魔王の側頭部へと叩き込む。この場所を叩かれると脳が揺れるのだ。顎を殴って脳を揺らすよりは割合簡単な場所だ。その一撃に一瞬ピッコロ大魔王の気が遠くなる。

 「あれ、もう気絶してるんじゃないかのう……」

 亀仙人が呟いてるそばでは鶴仙人が哀れなほど目を見開いている。

 「掴んでいる腕を持って投げる」
 「がぁ!」

 ナスビは握っていたままの腕を振り回し、そのままピッコロ大魔王を地面へと叩きつける。その際ピッコロ大魔王の口から紫色の血がかすかに吹き出される。

 「そして体落としだ」

 叩きつけたピッコロ大魔王の体に自身の体を肩から落として体重を更に叩きつける。その際に自分で上空へと気を発するのも忘れない。武空術の応用で飛ぶ時とは逆、地面へ向かって飛んでいくイメージで自分の体重を水増しする。その際の自分の体重と加速もあいまってその重みは一トン以上の威力だ。その威力も十分な手加減がされているうえでのこの威力。その際内臓に傷がついたのかピッコロ大魔王の口から血がこぼれている。

 「んで最後に両手両足の骨を叩き折っておくっと。骨を折るのは丈夫な奴に限るけどな」

 ボキっと聞きたくない音を響かせながら骨を折っていくナスビ。

 「ひいいい!お、鬼だ」

 クリリンはその様子を見て怯えているほどだ。

 「ピッコロ大魔王が……」

 鶴仙人は放心している。ピッコロ大魔王ほどのものが文字どうりあっさり叩き潰された。その現実は恐怖からピッコロ大魔王につきしたがっていた鶴仙人からしてみれば夢のようなものだろう。

 「やりすぎなんじゃねえか?」

 悟空がナスビにやりすぎなのではないかと問う。

 「ふむ。まあその気持ちもわかるがこいつはヤムチャを殺せと命令し、更には世界中の武道家を殺そうとしていた。しかも被害者もいっぱいいる。そして亀じいの若い頃にはもっと殺してる。それを考えればまあこのくらいどうってこと無いだろう?」
 「んー、それもそっか」

 意外にひどい悟空である。
 

 あとがき

 愛妻の晩飯のために即効で終了したピッコロ大魔王戦でした。
 原作では右手を残して他の四肢をぶっ壊された悟空の仕返しも兼ねてます。
 最近ちょっと時間が取れてません。ストックもたまらず申し訳ない。
 

 

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