小説『短編集』
作者:クロー()

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これはイギリスの片田舎におけるお話 (※フィクション)。

ケイトの住んでいる街では、学校の先生や医者などの結構裕福な家、とくにその中でも共働きの家では、家事や育児のために家族ではない他の誰かを雇っていることが多い。

そのため、メイドや家庭教師になる人間はこの街には多い。特に貧乏で学校に行けない人の中にメイドになる人が多いが、子供が一人前に成長し、時間を弄んでおり、今まで培った家事の知識を小遣い稼ぎのために使おうとメイドになる主婦も結構いる。それ以外にも、夏休みなどの学校のない休暇にアルバイトをしようという学生、就職活動中でなかなか就職先が決まらない人もメイドとして雇われることがある。ほとんどが女性である。


ケイトは高校を出た後、すぐに就職する道を選んだが、料理が好きでメイドという仕事にとても興味があった。いろんな世代のいろんな性格の女性と関われるし、自慢の料理の腕を発揮して、いつも家でやっているお手伝いと同じようなことをして家の人に喜んでもらえるのはとても楽しそうだと思った。


しかし、なかなかその「メイド」としての就職先が見つからなかった。どこの家も人が一杯で人件費をこれ以上蓄えることができないということだった。

ケイトの就職先が決まったのは5件の家を経てからだった。
子供好きでお菓子作りが好きだったケイトとしては、奥さんや子供がいる家でメイドをやりたかったが、ケイトが雇われたのはやもめの中年男性の家だった。職業が銀行員でとても真面目で優しい人であり、ケイトがなにかミスをやらかしても悪気が無いのだからと笑顔で許してくれる人だった。その家にいるメイドたちはみな親切で熱心にケイトに指導をしてくれるため、ケイトはすぐに一連の作業を覚え、すっかり彼らと打ち解けあって自分で仕事を見つけて行動することもできるようになる、立派なメイドになった。



ケイトがメイドとして働くことになってから3年が経ったとき、ケイトは気立てのよさや外見の愛らしさからその家の主人に見初められて、その1年後、2人は結婚することになった。他のメイドたちはそのことに気がついており、結婚に至ったのは彼らのひそかな協力のお陰でもあった。そして、家の中で行われた結婚式の時や結婚したばかりのころ、ケイトのことをとてもよく祝福してくれた。



しかし、結婚式に、彼女の家族は参加していなかった。なぜなら、ケイトは親と主人の顔合わせをすることなく結婚をしてしまったからだった。
ケイトの父親は
「見ず知らずの男と娘を結婚させるような親がどこにいる」
と、相手が挨拶してくるのをずっと待っていたが、主人は決して顔を合わせようとはしなかった。ケイトの母親は、[それでもケイトが選んだ道なら]と結婚を許してくれていたが、父親の場合そうはいかなかった。主人が父親と会おうとしない理由には、ケイトの両親に対する根拠なき不審心からだった。


父親の言っていることも妥当だとは思ったが、顔合わせなんかしたら、暴言吐きばかりする火付け屋の父親が爆弾を抱えているような主人の反感を買って花火のように喧嘩が始まるだけだろうと簡単にケイトには予想がついていた。

ケイトの父親は、暇さえあれば、ケイトがメイドとして働いている家の悪口を言っていた。また、自分の人生について邪険にすることがよくあったため、[どうせ今までもこれからも自分のことなんてちっとも思ってくれていないんだから勝手に結婚させてもらう]ということで父親の了承なしに勝手に主人と結婚してしまった。ケイトにまくしたてられるように非難されて口答えできなかった父親は、反対することができなかった。



ケイトは主人の奥さんになったが、主人との関係は良好で、メイドさんたちととても仲が良く、時々彼らと一緒に家事をやることがあるんだそう。





終わり

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