小説『短編集』
作者:クロー()

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走る




彼は走る。後ろから追いかけてくる「自責」という名の魔物から逃げるために走る。
姿は見えない。音だけする。


聴覚だけを頼りに、
息も絶え絶え、なるべくスタミナを無駄に消耗しないように、
なるべく早く走る。走り続ける。


途中、「そっちに行ったらいかんべ〜」


という誰かの親切な声が聴こえた気がしたが、
急に気温が低くなってくる気がしたが、
地面が揺れているような気がしたが、
そっちに走るしか手立てはなく、走って走って走りまくる。


この魔物に捕まってしまうことが一番最悪の事態なのだ。

傍から見たら無鉄砲のあほかもしれない。

「逃げ切ったあとのことはすべて、逃げ切った後に考えればいい」

彼の頭の中の固定概念だった。



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