夕闇
今日も彼があの場所へ行く。
あの店へ行く。
彼の後姿を見ながら、
彼の足を運ぶ先にいる私と同じ遺伝子を持っていながら私と違う人生を歩むこととなった女と彼のことを想像する。彼も女も哀れであるが、放っておくしかない現実もある。
彼が財布を携えて、夜な夜なそこへ出かけていくのを私はただただ無言で見送ることしかできない。
敬虔なクリスチャンである私はそんな彼を咎められず、引きとめることのできない上、彼を酷く非難する両親から彼をかばっているわけで、そんな私は聖書なのだろうかと考えてしまうのだった。