小説『短編集』
作者:クロー()

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新人キャバ嬢の愚痴



最近変な客が来るの。知らないか。私しか指名しないからね、その客。
他の客のことなんか気にしてる場合じゃないって感じだよね。

それがさ、なにが変かって、指名されたはいいんだけどぉ、ずっといちゃもんつけてくるわけ。文句あるなら指名変えろって思うっしょ、思うでしょ、思うよね、そうだよ。
「化粧が薄い」とかさ〜、「態度がでかい」とか「上から物を言うな」とか?
化粧はみんな濃すぎなせいだからいいとしてもあとの2点は一番本人が気にしてるわけよ。ここで働いて行くんで不利な点をカバーしようと本人は本人なりに努力してるっていうのに、痛いとこついてくるわけよ。気にするなら指名変えればいいじゃん?なのに来るたび来るたび私を指名してずっといちゃもんつけるわけよ。接待してる側はずっとうんうん、と聞いてるしかないわけ。そりゃさ、あくまでも表面上のことだよ。ほとんど聞き流してるからね。裏じゃキャバ嬢らしからぬ自分なりの思想をますます固めてるからね。聴いてるだけだから他の客の接待よりかなり楽とはいっても、ほんと感情的にはイライラしてくるから〜、その影響でおしとやかキャラクターがたんだん崩れてきそうなわけ。
この前だって、他の客の接待してる時にその客とイメージが重なった時に「くそじじい」って口滑らせたからね。まさかの失態だよ、ここから追い出される寸前だったよ、その時はさ。



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