小説『短編集』
作者:クロー()

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どこでもドアが2つ…



どこでもドアが2つ床から少しだけ宙に浮いて並んでいるよ。

ドラえもんがどちらかに入っていいっていうんだけど、
どこでもドアの彫刻とかドアについている飾りとかでどちらにするか決めようかな。

右のドアは至って普通。木製で丁寧な葡萄の蔓とか実とか小鳥とかの彫刻があるよ。
金具は金色で全体的に落ち着きのあるデザイン。
ドアノブは普通に右手で下げる仕組みになってるよ。ひねるやつじゃないよ。


それに比べて左のドアったらもう、
色や質感からしてコンクリートでできてるっぽくて所々にひびが入ってるよ。ひびが入ってたり崩れてる分かなり軽くなってそうだよ。
ひねる仕組みになってる銀色のドアノブ外れそうになってるし。
しかもなんだろ、セロハンテープで紙が貼られてるんだけど、その紙にサングラスをかけたおかまがにやついている顔の写真が載っていて、その下のところに「WANTED」と書かれてるんだけど、この人がこの先にいるってことじゃないの!?まさかの指名手配犯だよ。あ、もう1枚怪しげな紙が貼られてるよ。「この扉を開ける前にもう一度考え直してみましょう」って書いてあるよ。親切が逆に恐怖を増長させるよ。
しかもなんか、これ、ちょろっと下の端っこの方に書かれてるの牛肉の絵じゃないか?高級のビーフだってさ、高級のビーフ。矢印引っ張って「高級」って書いてあるもんな。嫌な予感しまくりで開けたくても開ける気になれないよ。怖いもの見たさで開けられるレベルじゃないよ。
きっともう開けた途端引き返せないよ。この謎めいた張り紙に気を取られてること自体がもはや危険だよ。
これもし左を選ぶ人がいるとしたら、その人はもうマゾとしか思えないよ!それか変なもん食べたかのぼせ上っちゃってもう頭が完全に停止してるか混乱状態にあるかだな。



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