小説『モザイク』
作者:mz(mz箱)

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自分の胸にあてた。
「お、おいっ。丹沢・・・。」
「先輩、何してるんですか!」
ふたりは止めようとした。
「気にするな。これは俺自身の仮説に基づいての行動だ。お前たちを恨んだりはしないさ。」
「しかし・・・。」
神宮寺はなおも食い下がった。
「神宮寺、少し黙っていてくれ。」
心音が聞こえる。形こそモザイクだが、機能は全く問題はない。
「使えるな・・・。」
「使える?その聴診器、使えるのか?」
「あぁ、俺の心音がはっきりと聞こえた。」
にわかに信じられなかった。
「本当にか?」
「聞こえるさ。嘘を言っても意味はない。」
「確かにそうだが・・・。」
丹沢は続けた。
「これはまだ仮説の域を出ないんだが・・・。」
「なんだ?」
「たぶん、俺がすぐにモザイクになる事はないと思う。」
仮説とは言え、丹沢は自信がかなりありそうだ。それは表情に現れていた。
「なぜ?」
「さっき桜井に写真を見せてもらったよな?」
「あぁ、それがどうかしたか?」
神宮寺は確かに天才だが、丹沢に勝てないところもあった。洞察力や推理力がそれだ。
「もう、俺がこの部屋に入って三十分近くになる。しかし、ベッドはモザイクになっていない。これがどう言う事かわかるか?」
「わからないから聞いているんだろ。早く教えろ。」
もったいぶるのは、学生の頃となんら変わっていない。それがもどかしく感じた。
「布団を見てみな。」
そう言って指さした。
ベッドはモザイクになっていないが、布団はモザイクになっていた。
「くそっ、こんな所までモザイクになってやがる・・・。」
神宮寺の眉間に皺が寄った。
「わかっただろ?」
丹沢は言った。
「なるほど、そう言う事か。」
神宮寺はわかったようだ。しかし、桜井はまるでわからない。

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