小説『真剣でD×Dに恋しなさい!S』
作者:ダーク・シリウス()

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六月十六日(火)



揚羽を自分の家に住まわせる事1日が経った。朝の朝食は9人から10人分へと変わるが一誠は苦もせずに

楊志と共に朝食を作った。


「どうだ、楊志?」


「早すぎてコピーが出来ないって」


「これも鍛練の一環だ。目が慣れるようにのな」


「へぇ、そう言う事」


「と、運ぶとするか」


6対12枚の金色の翼で10人分の料理を揚羽達が座る食卓に置いた。


「朝食は何時も一誠が作るのか?」


「たまに辰が作るんだよ。殆ど俺だが」


「そうか、橘殿は羨ましい環境にいたのだな」


「ふっ、それに幸せだ。昨日なんてお年寄りを助けたら果物をくれたんだ。本来なら空から何かが

落ちてくるか不幸な目に遭うのが常だった私が人から果物をくれたんだ・・・・・嬉しかったなぁ」


「そんなに不幸だったのかぁー?とてもそうには見えないけど」


「というか、揚羽もこの家に住むんだ。俺の料理は朝と夜になれば食べれるぞ」


「昼食はどうしておるのだ?」


「俺があらかじめに作って置いてある料理を食べてもらうか外食してくるかの二択だ」


「因みに、今日の昼食は何を?」


「特盛り牛丼」


「ヨッシャッ!牛丼だぜ!今日は一誠の料理を食べよっと!」


「お代わりはあるんだろうなぁ?」


「残さず綺麗に食べてくれるのなら作るが」


「それじゃあ〜、お代わりの分もお願いするね〜」


「お願いされた。それじゃあ、食べるとしよう。いただきます」


「「「「「「「「「いただきます」」」」」」」」」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



―――2−S



「おはよう」


「っ!」


一誠が教室に入った瞬間に英雄が立ち上がり近づいてきた。


「一誠殿・・・・・姉上は・・・・・」


「お前の言う通り、昨日の内に見つけて俺の家に住まわせている」


「・・・・・」


「休日の日にでも会いに来い。ドラゴン達にはお前が来ても素通りするように指示してある」


「誠に・・・・・誠に感謝します。一誠殿・・・・・」


「気にするな。救済できた喜びを感じたかっただけさ」


英雄の肩に手を乗せ自分の席に座る。


「一誠、揚羽さんは今どうしている?」


「さあ・・・・・でも、今頃は天衣と拳を交わしているんじゃないか?お互い、元は四天王だし」


「あの一誠・・・・・また家に遊びに行ってもよいか?義経は揚羽さんに会いたい」


「いいぞ。あいつも英雄やお前等に会いたがっているだろうし」


「っ、ありがとう!」


「勿論、私も良いよね?」


「つまみも用意しておく」


「ん、嬉しいね」


「私も行きます」


「マルギッテもか?まあ、何人来ようが・・・・・」


「それでは、私達もまた一誠さんの家に遊びに行きたいです。まだ、読み終えていない本がありましてね」


「ウェーイ。僕もいくよー」


「よろしくな」


「変わりない・・・・・って、冬馬達もか・・・・・いや、もう直ぐあの日に成るから

丁度いいかもしれないな」


「何か、行事でもあるのですか?」


「ああ、祭りがある」


「イッセー。質問です。貴方の家で祭りをするのですか?」


「俺の家じゃない」


「では、どこで祭りを・・・・・?」


「それは来てからのお楽しみという奴だ、マルギッテ」


「夏はまだですし・・・・・一体なんでしょうね」


「さあな。だが、一誠さんだから何か凄い祭りをするんじゃないのか?」


「祭りー♪祭りー♪」


「クリスお嬢様もお呼びをしたいのですが・・・・・」


「あいつを呼ぶとあいつらも当然のようについてくるしなぁ・・・・・」


「・・・・・」


「まあ、いいか。あいつらも呼ぼう」


「そう言ってくれると信じていました。感謝をします」


「特に準」


「はい?」


「お前、暴走するなよ」


「言っている意味が分からないんですが・・・・・」


「とあるイベントでお前が大好きな幼女だけが参加する。それを見て暴走なんかするなと言っている」


「・・・・・それは是が非でも見に行かないとな」


「・・・・・大丈夫か、こいつ・・・・・」


「ううん、全然ダメだよー」


「井上準はロリコンですからね」


慈愛に満ちた瞳をする準。一誠は少し言わなければ良かったと後悔したと思って口にして小雪とマルギッテも

一誠の言葉に同意した。2−Sクラスの担任の宇佐美巨人が教室に入室しHRが始まった。


「あー、お前等。報告があるぞ。今回の体育祭は通常の体育祭と水上体育祭を2日連続でやる事に成った」


「なんじゃと?2日連続とはどういう事なのじゃ」


「オジサンも知らん。急に学長がそんな風に変更したんだよ」


「鉄心の仕業と言う訳か・・・・・まったく」


「大方、義経達を楽しませようと魂胆じゃね?」


「義経達を?」


「けっ、体育祭なんてやってられっかよ。俺を狙う組織が潜んでいるかもしれねぇのによ」


「そん時は俺がお前を守ってやるさ。だからお前も体育祭に出ろ」


「・・・・・兄貴がそう言うんなら仕方がねぇ」


「(流石は一誠だ。与一を簡単に説得するとは義経は感服する。義経も一誠に見習わなければ!)」


「それにしても・・・・・ふむ、通常体育祭と水上体育祭か、まぁ良かろう。許すのじゃ」


「何故オジサンが許されなきゃいかんのだ」


「九鬼。高貴な家柄である此方に提案があるのじゃ」


「世界に冠たる九鬼財閥の後継者である我が聞こう。なんだ?庶民A」


「此方は選民で庶民ではないのじゃ!体育祭。2−Fとサシウマで決闘せぬか?『川神戦役』で生意気な

クラスを破壊するのじゃ」


「フハハハ!川神戦役とは面白い趣向よな」


「英雄、俺は知らないけど川神戦役とはなんだ?」


「うむ、そうであったな。一誠殿は知らないのも無理もないか。川神戦役とは―――」


「川神戦役は勝利する事に、相手クラスから人材を1名クラス替えして自分のクラスに貰う

決闘のシステムなんですよ」


「こら!我が友、トーマよ!我が一誠殿に説明をしようとしていたところに横やりを入れるではないわ!

それと我のセリフを奪うではない!」


「ふぅん・・・・・それって上級生である3年にも通用する?」


「いんや、同学年だけだ。お前、3年生を留学させる気か?」


「それもいいかもなぁ〜」


「おいおい・・・・・」


「まあ、冗談だとしてその川神戦役に勝った俺達は誰を引き入れるんだ?」


「私は大和君が良いですね。彼ならSクラスに入れる実力も競争心もありますから」


「俺は甘粕真与だな・・・・・。ちゃんと勉学について来れるしな・・・・・ハァハァ」


「・・・・・」


スパンッ!ガンッ!


瞬時で黄金のハリセンで準の頭を叩く。その反動で自分の机に激突したが誰も声を掛けなかった。


「気持ち悪いぞ」


「す、すいませんっす・・・・・」


冷たい視線に向けられ猛省する。


「だれを、もらっちゃうか・・・・・悩むねー」


「というか、向こうには梁山泊から来たリン達がいる。簡単には勝てない戦いに成る筈だ」


「フハハハ!確かにそうだろうが我がクラスには一誠殿や義経達がいる!負ける訳が―――」


「あー、俺、川神戦役には参加しないぞ」


「「「「「「「「「「・・・・・はい?」」」」」」」」」」


「いや、簡単に勝ってもつまらないし俺が参加しなくとも義経達がいるだろう?十分に勝てる確率がある。

それに―――」


「それに?」


「『Sクラスの奴が兵藤一誠を頼りにして勝ちに来ている。あいつらは兵藤一誠なしじゃあ俺達Fクラスに

勝てない弱いクラス』だと思われるぞ。いいのか?」


「「「「「「「「「「・・・・・」」」」」」」」」」


一誠の言葉を聞き、教室は静寂に包まれた。実際にそうして勝利した際に自分が、自分達が一誠なしで

勝てないクラスと馬鹿にされるというイメージがSクラスに所属している生徒達の頭の中で浮かんだ。

―――それだけは絶対に成ってはならない。とSクラスの生徒達は心からそう思った。


「決まったようだな。じゃ、俺はお前等を応援する方に徹する。英雄、2−Fに挑戦状を叩きつけておけ」


「分かり申した」


「・・・・・話しは纏まったか?んじゃ、HRはこれで終了。次の授業に遅れないように備えておくんだぞ」


「それじゃ、巨人。放課後にでも将棋でも指すか?」


「いいぞ、今度は勝ってやる」


「おっ、あそこに行くのなら私も行こうかなぁ」


だらけ部もとい一誠と巨人、弁慶は放課後に予備の第2茶道室に行く事にした。


「英雄」


「なんだ、我が友、トーマよ」


「川神戦役をするのは構わないんですがくれぐれも私達が敗北する事がないようにしましょう。

私達が負けた時は必ず大和君達は一誠さんを遅かれ早かれ指名してくる筈です」


「当然だ。我等が負けるなどと許される事ではない。ましてや、一誠殿を奪われてしまうなどとそのような

事が起きたのなら我は一誠殿に会わす顔が無い」


「義経も頑張るぞ!」


「にょほほ♪Fクラスを叩きのめす好機なのじゃ!此方達に歯向かうとどうなるのか

思い知らせてやるのじゃ!」


「負けないよー!イッセーも渡さない!」


「クリスお嬢様。申し訳ないのですがこれも勝負です。イッセーも渡す訳にはいかないので

全力で勝ちに行きます」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



―――昼休み 屋上


「ほー、お前んとこのクラスは川神戦役をするんだ」


「俺は出ないけどな。出るとその種目が簡単に勝ってつまらなくなると思うし」


「私達も学年を超えて川神戦役が出来ればなー、一誠や大和達、義経ちゃん達も3年に編入できるのに」


「それ、俺も言ったけど『3年を留学させる気か』と言われた」


「ははは、同じ学年に成った一誠達と学校生活を送れて楽しそうだからそれも良いかもしれないなー」


「鉄心が怒るだろうがな。・・・・・それにしても珍しいな。由紀江が自分から此処に来るなんて、

しかも友達と一緒に」


「は、はい!今日はイヨちゃんを誘ってイッセー先輩と一緒に食べたいと思いまして・・・・・」


「・・・・・」


「どうした?」


「いえ・・・・・屋上に水と魚達に囲まれている状況にびっくりしまして・・・・・」


「水族館みたいだろ?夏の期間の間はこんな感じで過ごすぞ」


「涼しくていいねぇー。ここは快適な場所だよん♪」


「屋上は俺の聖域だな」


「ふふ、一誠君の聖域は凄いね」


「実際、一誠さんの家はもっとすごいけどな」


「あー、そうだ。百代達。また俺の家に遊びに来い」


「どうしてで候?」


「祭りがあるからだ」


「祭り?」


「準達にも誘っているからお前達も誘おうって事さ」


「どこで祭りをするの?」


「それは俺の家に来てからのお楽しみだ」


「そっか・・・・・ふふっ、楽しみ」


ニッコリと笑う燕に釣られて一誠も口の端を吊り上げて笑む。


「あ、あの。私もですか?」


「由紀江の友達なら問題ない。というか、祭りに行きたいだろう?」


「は、はい・・・・・」


「由紀江、祭りの時はよろしくな」


「はい!大切なお友達を守ります!」


「祭りは別に危険じゃないんだけどなぁ・・・・・」


「あわわ、す、すいませんでした!」


慌てて顔を赤く染めペコペコと頭を下げて謝罪する由紀江に苦笑いする一誠。


キーンコーンカーンコーン・・・・・


「さて、教室に戻るとしますか」


「時間の流れが早いですね」


パチンと指を鳴らし屋上を囲んでいた水と魚達が一瞬で消失した。一誠達は自分の教室へと戻る為に

屋上から去って行く。


―――放課後、第2茶道室。


「ん?いない・・・・・」


「鍵は開いているみたいだけど・・・・・手紙を発見」


『仕事が入った。鍵は職員室に返すように』


「そう言う事か。それじゃ、のんびりとするか」


「賛成」


巨人が仕事の都合で来られない事を知っても気にせず腰を降ろして2人きりの空間の中でのんびりと過ごす。


「・・・・・ふぅ、美味しい」


「そうだな(弁慶と川神水ってなんか似合うな。雰囲気がそうさせているのか?)」


「一誠、つまみ頂戴?」


「ちくわの料理を作ってきた。味は保証済み」


「ちくわのてんぷらもある。ご馳走♪ご馳走♪」


鞄から出したちくわの料理の数々。一誠と弁慶は料理を食べながら雑談する。


「んー♪」


「美味しそうに食べるな」


「一誠の料理は美味しいからね」


「そう言ってくれると嬉しいな。そら、あーん」


「あーん・・・・・」


「どうだ?」


「最高」


親指を突き立て称賛する。するとまた瞑目して口を開けた。もう一度して欲しいと言わんばかりに。

一誠はちくわを弁慶の口の中に入れたら指と共にちくわを含んだ。


「ん・・・・・?」


「放してくれるか?」


「・・・・・」


少しだけ口を開けてくれたお陰で一誠の指は弁慶の口から解放された。


「俺の指まで食われるとは・・・・・」


「ごめんごめん」


「まあいいさ」


ペロリと弁慶の唾液が付いた指を舐めた。


「・・・・・川神水とちくわの味しかしねぇ」


「ふふ、一誠はそういう性癖なのか?」


「違う。俺はノーマルだ」


「へぇ、てっきりSな方かと思っていた」


「あのなぁ・・・・・」


心外とばかりに一誠はジト目で弁慶を視界に入れる。クスクスと笑い弁慶は器を一誠に突き出した。

その動作に理解して一誠は自分の川神水を弁慶の器に注いだ。


「・・・・・?」


「どうした?」


「・・・・・私の飲んでいる川神水と何か違う」


「そりゃ、そうだろう。俺の飲んでいる川神水は特別な場所で湧きあがっている幻の川神水だからな」


「なっ・・・・・!?」


「やっぱり川神水をよく飲んでいる弁慶には解るようだな」


自分の器に川神水を注いで一気に飲み干す。その様子を羨望の眼差しで向けてくる弁慶。もう一度、一誠の

川神水を飲んでみたいと心から湧き上がる想いが弁慶の頭や体を支配していくのが弁慶自身も理解していた。


「・・・・・一誠」


「ん?」


ちくわを頬張る一誠に話しかけた。自分に向ける視線に「なんだ?」と弁慶に問い掛けている事を弁慶は

自分の器を突き出して「欲しい」と上目使いで懇願した。


「・・・・・」


一度だけ悩む仕草して一拍、瓢箪を弁慶の器に注いだ。弁慶はパアッと表情を明るくなり嬉々として

川神水を飲んだ。


「・・・・・プハァー!美味い!」


「オヤジ臭いぞ・・・・・」


「しょうがないじゃないか。それほど美味しんだから・・・・・」


顔を赤らめて弁慶は一誠に近づく。


「弁慶?」


「ふふ・・・・・」


一誠の体にのしかかり首に腕を回し濡れた瞳で一誠を見詰めて身体をさらに押しつける。対して一誠は

甘えてきたんだろうと弁慶の腰に腕を回し頬に手を置いて撫で始めた。自分の頬を撫でる一誠の手の温もりや

頬に感じる感触に目を細めて堪能しながら弁慶は一誠を押し倒す。


「ん〜・・・・・」


「どうした。あの時のように甘えてくるが」


「・・・・・温かい」


一誠は尋ねると弁慶がそう呟くだけで寝息を立ててしまった。自分の上で寝る少女に苦笑を浮かべ

優しく頭を撫でる。


「おーい。まだいるかー?・・・・・と、お楽しみだったか?」


「ある意味」


そこに巨人が入ってきた。寝転がる2人に近づき弁慶の様子を見ると「なるほどな」と呟き納得した。


「そろそろ門を閉める時間だぞ」


「義経やヒューム辺りの九鬼家に関わっている人間が迎えに来ないという事は俺と一緒にいる事を

気づいているからだろうな」


「いんや、義経がまだいたぞ」


「・・・・・悪い事をしたな。帰る」


「おう。また明日」


義経がまだいるという巨人の言葉に寝ている弁慶を背中に背負い二つの瓢箪と鞄を器用に持って

予備の茶道室から出てクラスに赴く。


―――Sクラス


「あっ、一誠!」


「悪かったな、義経。待たせた」


「気にしないでくれ家臣を待つのも主の務めだ。・・・・・弁慶は寝ているのか?」


「ああ、気持ち良さそうに寝ているぞ」


「すまない。義経が弁慶を背負う」


「いや、大丈夫だ。一緒に帰ろう」


「一誠が家に帰る時間が遅くなる。それは駄目だ」


「予め先に帰っている林冲達に伝えてある。腹が減っているのなら辰や楊志が作るだろうさ」


「でも・・・・・」


「それとも、俺と一緒に帰るのは嫌か?」


「嫌ではない!義経も本当は一誠と一緒に帰りたかった!・・・・・あっ」


自分の本音を一誠に曝け出してしまった事に気づき顔を赤く染めた。


「ははっ、嬉しいな。それじゃ、一緒に帰ろうか」


「・・・・・うん」


義経の頭を撫でて微笑む一誠と顔を俯いてコクリと頷く義経は帰宅するために学校から出て行こうと

歩を進める。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



―――多馬川大橋


夕陽に照らされながら弁慶を背負った一誠と隣で歩く義経の3人は大扇島にある九鬼財閥ビルに

向かっている。一誠と義経はその間に色々と雑談している。


「ん・・・・・」


「あっ、弁慶。起きたか?」


「義経・・・・・。あれ、何時の間に家に・・・・・?」


「俺が背負って義経と一緒に此処に来たんだ」


「・・・・・一誠に背負われていたのか」


顔を上げて周囲を見渡し現状を知る。


「弁慶、起きたのなら一誠から降りるんだ。これ以上迷惑は―――」


「いや」


「べ、弁慶・・・・・」


「部屋に入るまでこのまま」


一誠の背中から離れたくないと言わんばかりに身体を押しつける。そんな弁慶に困り果てて

申し訳なさそうに一誠を見る。


「はは、まるで昔の頃に戻っているようだな。義経は最後に泣いたんだっけ?」


「い、一誠!昔の事を言わないでくれ!義経は恥ずかしい・・・・・」


「義経のその表情、可愛い・・・・・」


「弁慶・・・・・」


「今度、義経にあうカチューシャでも付けて可愛がってみるか?」


「ん、それはいい。川神水も美味しくなりそうだ」


「い、一誠!弁慶も何を言っているんだ!?」


「義経、何を付けてみたい?」


「犬の耳・・・・・違う!」


「聞いたか弁慶?犬の耳だってよ」


「ふふ、人懐っこい所は犬と同じだからね。一誠、義経にあう犬耳をよろしく」


「おう、2人で可愛がろう」


「ふ、2人共・・・・・」


「大丈夫。弁慶にもカチューシャを用意するから不公平じゃないだろ?」


「あれ、私も?」


「義経を可愛がったら次は弁慶だ。で、弁慶を可愛がるのは俺」


「可愛がられてそのまま食べられたりして・・・・・」


「食べられる・・・・・?」


「俺は狼か?残念ながら俺は、狼に収まる事は無いな」


「それじゃ・・・・・龍?」


「それだな」


「パクリと食われちゃうね」


「簡単には食べないさ。じっくりと可愛がって食べるぞ」


「おお・・・・・」


思わず顔を朱に染めた。きっとそんな事をされたら自分は、一誠から離れるどころか一誠の存在なしでは

生きていけないようにされてしまう。そんな想像を弁慶の脳裏で思い浮かべた。同時に全身が心なしか

熱く成ったのを感じた。


「一誠、食べるとは何だ?」


「ん?ああ、愛し合う意味だ」


「愛し合う・・・・・?」


一拍して、義経の顔が一気に耳までトマトのように赤く染まった。


「わ、わわ・・・・・!」


「義経にはちょっと過激だったようだな・・・・・」


義経の顔を見てそう呟く一誠。―――そんな一誠の隣、道路側に一台の黒い車が通り過ぎようとした瞬間。


キキィッ!―――ガラッ!


「ん?」


急停止して黒い車から数人の黒尽くめの服装の男達が瞬時で一誠達に重火器を突き付けて囲んだ。


「っ、敵・・・・・!」


「・・・・・狙いは私達?」


敵に囲まれている状況に一誠の背中から降りて義経から錫杖を受け取る。


「何の用だ?2人を家に送る所なんだが・・・・・」


「我等と来てもらおうか」


「誰を指名だ?」


「お前だ―――兵藤一誠」


「「っ!?」」


「へぇ」


口の端を吊り上げて不敵の笑みを浮かべる。てっきり、義経達かと思ったらまさか自分を

攫おうとしてくる者がいるとは珍しかった。


「日本海に浮かんでいるあの巨大な大地はお前の物だと調べが付いている。その力とドラゴンを従わせる

能力を我々の為に使ってもらおうか」


「嫌といったら?」


「車の中にいる人質を殺す」


1人の男がそう口にした瞬間、黒い車の扉が開いた。その中に―――


「・・・・・おいおい」


弓道部主将の矢場弓子がいた。前部座席から銃らしき物を突き付けられていた状態で座っていた。


「言っただろう。調べが付いているとな。お前と関わっている者は既に把握済みだ」


「・・・・・」


「九鬼家の英雄のクローンの2人にも来てもらおう。この状況ではドラゴンを呼ぶ事すら―――」


「もう、呼んだぞ?」


「・・・・・何?」


―――刹那。


『ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!』


空から獰猛そうなドラゴンが咆哮をしながら多馬川に降りてきた。


「・・・・・っ!?」


「馬鹿だなぁー。狙う相手が悪過ぎる上に狙ってはいけない奴をお前等は狙った」


「っ!」


「交渉をしようか?人質を無傷で返すのならこのまま見過ごす。―――だが、逆らえばお前達の命は

ドラゴンのエサと成る」


「「「「「・・・・・っ」」」」」


「どっちを選ぶ?仮に逃走するのならどうぞ。―――お前達の組織ごと俺や俺に従うドラゴン達が

壊滅してやるよ」


大天使化と成って一誠は威圧を放って敵に向かって発する。


「選べ、生か死の選択を」

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