小説『IS〜インフィニットストラトス―ディケイドの力を宿す者 ―』
作者:黒猫(にじファン)

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

こんにちは、神谷です


ったく、今日くらいゆっくりさせてくれよ


てことで、街まで出てきてお買い物です


しかも皆で


箒もセシリアも鈴、シャル、ラウラ、簪も楯無さん、夏海だっている


日曜日だからゆっくりしようという俺の計画は起床三秒で消し去られた


起きての第一声


『買い物に行くぞ!』


第二声


『なんで、部屋にいるのよ!?』


第三声


『こじ開けちゃった』テヘッ


勘弁してくれよ


とまぁ、シャルとラウラに始まり


次に入ってきたセシリアと鈴にも誘われた


『士!久しぶりに休みが来たわ!遊びに行くわよ!』


『鈴さん!わたくしを忘れていませんか!?』


そうして、簪と楯無さん


『お姉ちゃん……遅かっ、た』


『関係ないわ!士く〜ん。遊びに行きましょ〜!おねーさんと(はぁーと)』


『つ、士!……私、も///』


止めに箒


『随分と騒がしいと思えば……士、私も着いて行ってやろう』


頼んでねぇよ


そして、気づけばこの様だ


なんでやねん


で、誰が俺にこの服着せてくれたの?


着替えた記憶が無いんだけど……


なにこれ?怖い


「士!見てっ!ピエロだよ!ピエロ!」


シャルに袖を捕まれ、目を向けるとそこには確かにピエロが一輪車に乗りながら、バトンのようなものでお手玉していた


しかも六つ。すげぇな……


「士だって、できる……」


簪ェ……無茶振りはよくねぇぜ?


そして、あんまり袖を掴まないで……伸びちゃうから


「士くん!私、あれ出来るぅ〜。見ててね〜」


って、おいおいおいおいおいおい


ピエロからバトンを奪い取るな


そして、ピエロより上手く回さない!


泣いてるじゃん!


「楯無さん!やりすぎですよ!……すいません、ピエロさん。十分、上手ですから気にしないでくださいね」


バトンを手渡しながら謝る


「………///」


コクコク頷きながら顔を赤らめるピエロ


「ぶぅ……なによぅ」


楯無さんがむくれてる


「楯無さん……一番、年上なんですからもうちょっと、しっかりして下さい!」


「はーい」


面白くなさそうに返事する楯無さん


すると、耳を引っ張られた


「痛い痛い!」


って、鈴


「アンタは本当に変わらないわね〜。なんで、ピエロ落とすのよ!」


「落としてないよ!?」


すると今度は反対の耳だ


「士っ!お前は本当に……馬鹿者!」


「ひどい!?」


なんで、そんなに怒ってんだよ……


「士、あれはなんだ?」


ラウラがふと、指差した


その先には、屋台で焼き芋屋さんが


珍しいな〜、いまどき


でも、芋の焼ける香ばしさにも似た香りが鼻腔をくすぐる


「あれは、焼き芋っつってな……さつまいもを焼いたのを売ってるんだよ」


「ほぉ……」


ラウラが感心したように頷いて、屋台を見つめている


「……食べてみる?」


「いいのか!?」


おおう、そんなに食いつかれるとは……


「買ってみるか……おじさん!四つ頂戴」


「はいよっ!兄ちゃん!……三十万円ね」


「高ぇよ!」


どうした!?おっさん!


あんなに陽気そうだったのに急になんだ?


「ったく、最近の若ぇのはこんなに女侍らしてんのか……あああん!?」


怖ぇよ!


どうしたんだよ!?


ブツブツ言ってると思ったら、急にメンチ切り出した


「ほれ!持ってけ泥棒」


お金払ってんじゃん!?


散々だ……










そうして、俺たちは公園で休憩


みんなで焼き芋をほふほふさせてた


「うめーーー」


「美味しいですわね……」


そうして、さりげなく俺の隣に立つセシリア


なんか、近い気がする


「セシリア……近い」


あ、ラウラが引き剥がしてる


だからって俺にしがみつくな〜!


「士……」


おっ、ここにきて第一声の夏海さん


「どうした?」


「前みたいに問題だして頂戴」


ああ、そういや前にしたな……そんなこと


「何々?頭の運動?」


楯無さんが嬉しそうに足をばたばたさせながら尋ねてきた


「いや、前に頭の体操みたいなのしてやったら意外に夏海に受けちゃって」


「中々、面白かったわ……なにかないの?」


そうさな〜


「えっと……ルールをとりあえずな……俺が今から奇妙な物語の結末を語る……皆には、その過程とか、理由を考えてほしい」


「要するに、数学の……証明問題?」


簪が首をかしげた


「そんな感じ……問題だけじゃ俺の用意している回答には絶対に届かない。だから、皆は問題の大事そうなキーワードをさがして、そこからヒントを俺と会話して掴んでくれ


たとえば……夏海。いいか?」


「ええ」


「リンゴを少女が食べました……何故でしょう?って問題だとするだろ?


そしたら、皆は大事そうな言葉を捜すんだ。今回は……夏海いける?」


「まずは、少女ね。」


「そうだ……」


「そうね……少女は、リンゴをおいしそうと思ったのかしら?」


「はいだな」


「少女は空腹だったかしら?」


「はい」


「少女はリンゴを全部食べた?」


「関係ないな」


夏海と俺はそうして会話していく


「とまぁ、こんな感じ。キーワードを見つける。俺は「はい」「いいえ」「関係ない」の三つで答えるからそこから答えを導き出してくれ」


「そんなの簡単じゃない」


鈴が焼き芋が包まれていた新聞紙をくしゃっと丸めた


「面白そうだね……やってみよっか」


シャルも笑顔で首を曲げた


「よし、じゃあ第一問!」


俺は息を吸い込み、語り始める


その『謎』を……


「『ジョン、やめて!撃たないで!』

ホテルの一室から女の叫び声が聞こえ、続いて銃声が響いた

警備員が部屋に駆け込むと、中には胸を撃たれて倒れている女、郵便物の集配係、弁護士、会計士がいた


警備員は迷わず真犯人である集配係を取り押さえた。なぜ分かったのだろう?」


俺が問うと、皆が考え込む


結構、簡単な問題だな


「質問だ」


箒が手を挙げた


「おっ!いいぜ」


「女は死んでいたか?」


「はい」


なるほど、女が生きていて……ってことを考えたわけね


「警備員に叫び声ははっきり聞こえたのか?」


箒が間髪入れず聞き込む


「いい質問だ……ああ、はっきり聞こえた」


俺は頷く


「わたくしからも質問ですわ」


「おう、セシリア」


「その叫び声……ジョンという名前は重要ですか?」


「最高の質問だな……答えははい、だ」


これは、解けたか


「分かった!」


楯無さんが手を挙げる


「はい、楯無さん……あ、答えるときは俺の質問に答えてくださいね」


「いいわよ」


「では、質問です……犯人を特定するために、もっとも役に立った手がかりは?」


「叫び声よ」


楯無さんが迷わずに大きな胸を張って答える


「その手がかりから、警備員がもっとも重要だと感じた情報は?」


「名前ね」


「その情報から、警備員は何を知ることができた?」


「性別」


にやりと口角を上げる楯無さん


涼しいのに扇子を構える


「最後の質問です……真犯人の特定に至った最大の特徴は?」


「……男、よね?」


可愛らしく首をかしげる楯無さん


「正解です!」


俺は手を叩いた


「まぁ、当然よね」


広げられた扇子には「解明」の二文字が


要は、弁護士と会計士は女だった……ジョンというのは男の名前。その部屋に男は集配係しかいなかったってわけ


「おおぉ……これは面白いな」


ラウラが珍しく無邪気に笑う


「お姉ちゃん、凄い」


簪は尊敬の眼差しを向けていた


「さぁ、第二問だ」


俺は、近くで買ってきた缶コーヒーを開ける


「ある男が酒を飲んで帰宅中、人里はなれた田舎道を歩いていた


その道に街灯はなく、月明かりもなかった。そこに車が走ってくるのが見えたので、男はあわてた


道は狭く、両側が崖で逃げ場もない。男が思わず目をつぶっていると車はそのまま通り過ぎ、男に怪我もなかった。なぜだろう?」


これは、質問が大事になってくるな


「うむ……質問だ」


ラウラが手を挙げた


「男は、どれくらい酔っていた?」


「関係ないな……まぁ、車が来たってことが分かる程度には、な」


「では、田舎道になにか、あったか?」


「それも関係ないな……田舎道は逃げ場がないくらいに狭いんだ」


「じゃあ、私もいいかしら」


夏海が手を組んでその大きな胸を乗せる


「男が車が来たと分かったのは、ライトが見えたかしら?」


「はい、だ」


「男が見た車のライトは本当に一台?」


「さすが、慣れてるだけあるな……いい質問だ。答えは……いいえだ」


「……そういうこと」


夏海はふっと笑い、さらに俺の目を見つめる


「ライトの質問よ。ライトは二つ、点灯していたのよね?」


「ああ。そうだ」


「分かったわ。質問を」


夏海、さすがだな


「田舎道はどのような状況にあった?」


「これは、問題の通り、暗かったわ」


「男が無傷だったのは、車が何をしたから?」


「横を通ったからね」


「田舎道を走ってきた車は何だった?」


夏海は鼻で息を吐き、余裕の表情でこう答えた


「オートバイ」


「……最後だ。男に向かってきた車は何台だった?」


「二台よ」


「正解!」


手を叩く


「まって!どういうこと?」


シャルが慌てた様子で俺の服を掴む


「二つのライト……正体は並んで走るオートバイだったんだ。だから、男は、自動車だと勘違いした……一歩も動かなかったのが男が助かった要因だよ」



「なるほど……酔っていたのは、これの為……」


簪がふむふむと頷く


「そろそろ、最終問題だな……難しいぞ〜。しっかり質問してくれな」


俺は皆を見渡す


「ある日、男は妻にこう伝えた。「庭に銃を埋めてある」


その情報はまったくの嘘である。男はなぜそんな嘘をついたのだろう?」


これは、難問だぞ〜


「質問、いい?」


鈴がはいはいと手を挙げる


元気だな〜


「男は、どこにいるの?家?」


「いいえ」


「会社?」


「違うな」


「う〜ん。ヒント!」


はえぇよ


まぁ、鈴らしいか


「男の過去に、なにかあるのかな〜」


俺が呟くと同時に簪が手を挙げた


「ん。簪」


「男は、昔……奥さんと、何か……あった?」


「ううん。ないよ」


「じゃあ、男は昔……」


そうして、簪は告げる






―――なにか、犯した……罪は?


「ある。答えははいだ」


俺は笑顔で答えた


そこからは、ラッシュのようだ


シャル


「男はそのことを、携帯電話で奥さんに告げたの?」


「いいや」


「じゃあ、手紙?」


「はい」


ん〜


ちょっと、ややこしくするか


「ちなみに、この手紙は―――





二通目の手紙だぜ?」


え?


皆がそんな顔で俺を見つめる


俺は笑って、返した


「…………」


皆が手を組んで考える


そして……


「二通目……ってことは、一通目は誰が出した?」


箒が黒髪を揺らした


何かに気づいたように……


「一通目の手紙を出したのは男か?」


「いいえ」


声が弾む


いいね〜箒


「じゃあ、妻か?」


「はい」


俺は、優しく微笑む


しかし……


「ん?だが、ではなぜ……うううう」


ああ、行き詰っちゃった


それから、10分後……


「ヒント……妻は、男に聞きたかったのは……庭のことだぜ?」


「あっ!」


気づいたのは、楯無さん


「妻は、何かを作ろうとしていた?たとえば……野菜とか?」


「はい」


俺は、笑顔で


そうして、皆が気づいたのが、目に見えた


皆、何かを悟っている


「皆、わかった感じだから皆に聞いていこうかな?


男は、どこにいる?」


「刑務所だ」

「刑務所ですわ」


箒とセシリアが声を重ねる


「じゃあ、男が嘘で騙したかったのは……誰?」


「警官よね」

「警察だよ」


鈴が、シャルが笑顔で答える


「妻は男に何を聞きたかった?」


「野菜の育て方……だな」

「お野菜の、作り方」


ラウラと簪が頷く


「男は妻との連絡を何で行っていた?」


「手紙、でしょ?」


楯無さんが扇子を叩く


「男は何のために嘘をついた?」


「耕すため……ね」


夏海もどこか優しい目だ


「最後……男は誰の為に嘘をついた?」


皆が声をそろえる


いきを吸い……




「「「「「「「「妻!!」」」」」」」」


そう、答えた



「正解」


静かに笑う俺


「男は、受刑者で刑務所暮らしだった。一通目の手紙は妻が庭で野菜を育てたいとの連絡


しかし、妻は力が強くないと男は知っている。野菜を育てるには庭を耕さないとダメだ


そこで、男は嘘の手紙を書いた『庭に銃を埋めてある』。こうすれば、手紙をチェックした警察官は銃を探そうと、庭を掘る


そしたら、庭は耕さずとも土がほぐれる……ってこったな」


缶コーヒーを投げ捨てた


音を立てて、ゴミ箱に入った缶


「士らしい、問題ね」


夏海が微笑んだ


「そうか?奥さん思いのいい旦那ってとこだな」


皆が、笑って俺を見つめる


「さ、行こうか……腹減ったわ」


皆がうなずく


眩しいくらいの表情で





















「では、承認してくださいますな。ブリュンヒルデ」


ここはIS学園の最高議会室


その大きなテーブルの中央に腰掛けているのは髭を蓄えた体格のいい男だ


「その、呼び名はやめていただきたい」


千冬は辛そうに顔を引きつかせる


「それは、すまない……では、頼んだぞ。神谷 士を……」











―――退学処分にする














『次回予告!!』


「神谷 士君……君にはIS学園を退学してもらう」


告げられる退学処分


「ごめん、俺……学校辞めるかもだわ」


突然の告白


「士、やめないわよね……やめないで!」


訪れる別れ


「じゃあな皆…………………今まで、ありがとう」


次回、最終話!?

-104-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




IS <インフィニット・ストラトス> 第1巻 [Blu-ray]
新品 \4780
中古 \800
(参考価格:\7665)