小説『IS〜インフィニットストラトス―ディケイドの力を宿す者 ―』
作者:黒猫(にじファン)

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「はぁ……」


ため息を一つ


どうも、お久しぶり。神谷 士です


スコールとの決死の決戦の末、彼女を改心させた俺


今、彼女は審問会にて国際裁判を受けている


俺はと言えばあのあと疲労でぶっ倒れ、一週間の休養を


そのままクリスマスを越し、復活と同時に年を千冬姉と二人で明かした


暦は、1月を二週間を過ぎた今日


特別な事情がない限りは、生徒は寮の生活に戻る


授業が始まるまであと、一週間といったそんなある日……


俺が、抱える問題は……


「……寒い」


暖房が故障し、凍るようなこの部屋で過ごしているということ


今日のIS学園の気温は1度


1度だよ?1度


寒すぎる


空は、曇っており気分も萎えてきそうな模様


風も強く、アリーナが使えないためISによる訓練もできない


ガチガチと歯を打ち鳴らす俺の唯一の救いは……


「私だって、寒いわよ」


同居人で、同じタイプのISを使う相棒で、恋人の夏海の存在だった


「でも、それで落ち込んでても仕方ないでしょ」


普段は見せないようなにっこり笑顔で、彼女は両手に持った2つの湯気が立っているカップの1つを手渡してくれる


「おお……ありがと」


両手で受け取った俺は、ふーふーと息を吹きかけた


「ふふっ」


その様子を微笑ましそうに笑う夏海


彼女は、そのまま俺の隣に腰掛ける


機嫌はいいらしい


「でも……」


「ん?」


小さく声を洩らした彼女はその頭を俺の方へ預ける


「やっぱり、少し寒いわね」


甘えた声ですりすりと頭を揺らす


髪からの甘い香りが俺の鼻腔をくすぐった


「な、夏海!?」


最近、多いな……


裏返った声を出すと同時に、心の中で彼女の最近の行動が思い出される


皆の前ではいつもと変わらないツンとした言動


『うるさいわね』

『分かってるわよ』

『早く、しなさい。置いていくわよ』


なんて、冷たい言葉なんだが……


今みたいに、二人きりになると……


「士♪」


と、こんな感じに……


ツンデレの亜種?


まぁ、いいや


可愛いし


彼女の肩に手を回した俺は、そのまま頭を撫でた


「っ……」


それに、応じて夏海もさらに体を密着させてくる


そんな幸せな時間


……は、長くも続かない


『〜♪〜♪〜♪』


携帯がなる


相手は、千冬姉


我、愛しの姉であり恋人でもある


「もしもし」


体を離した俺は手を伸ばして携帯を掴み、画面をスライド


耳に当てて対応した


『ああ、士か』


「おう、どうした?」


電話越しに聞こえる姉の声はどこか疲れているようだった


『実は、面倒なことになってな』


「どしたの?」


『今度、カナダから代表候補生がウチに転校してくる』


ほう


『かなり、腕も立らしく国からも期待されている人材らしくてな……多少手荒でもいいから血の気の多い歓迎がして欲しいのだと……』


「随分と、荒っぽいのが好きなご様子で……」


ため息がこぼれる


また、面倒な……


『そこで、他の代表候補を当てたかったのだ。いい経験にもなるしな……だが、先鋒はどうにも派手な花火が好きみたいでな……』


「俺に花火を上げろと……」


『そういうことだ……頼めるか?』


カップに入ってたミルクティを飲み干し、立ち上がった


「いいぜ、カナダなんかじゃ見られないような特大の花火をあげてやる!」


『すまないな。明日にでも資料を渡す……よろしく頼んだ』


「了解!日本の火力、見せてやる」


そのまま電話を切り、ベッドへと放った


「また、パーティ?」


呆れたように、尋ねる夏海に俺は笑いかけた


「まぁね。カナダの代表候補がちょっと早い花火大会を上げてほしいんだと」


「あなたも、大変ね」


他人事みたいに、つぶやいた彼女は……


「無茶、しちゃだめよ」


それでもやっぱりデレてくれた


「はいよ……体動かしてくるわ」


トレーニングルームへと足を向けた












「98……99……100」


黒のTシャツ(背中には、神速の文字が)にジャージのズボン姿の俺は、ダンベルの上下運動を……


利用しているのは俺だけだったので、ひどく広く見える


「ふぅ……」


ランニングマシンで10kmのあとに休憩なしってのはきつかった


汗だくだ


買っておいた、スポーツドリンクを手に取り、口に含む


よく冷えたそれは、俺の体に潤いをもたらした


そのとき、扉が開き小さな影が一つ


「ん、嫁ではないか」


綺麗な銀髪を珍しく……というより、初めてポニーテールにしているラウラだった


「よっす。ラウラもトレーニングか?」


「この時間には、私しかいないからな……」


なるほど


それにしても……


「どうしたんだ?髪結んでるけど……」


ポニーテールを指差した


「い、いや……運動するには、邪魔だから……だな。その……そういうことだ!」


「お、おう……」


そんな怒らなくても


「ううぅ……ど、どうせ心の中では笑っているんだろう」


拗ねた口調でラウラは俺を睨む


「なんで?」


「に、似合ってないだろう」


頬を赤く染めた彼女はボソッとつぶやく


ああ、もう!


「可愛いな〜!ラウラは!」


小さな彼女の体を思いっきり抱きしめた


「わゃ!?」


変な声出してるけど、そんなん関係ない!


「や、やめ……やめろぉ///」


また赤くなって!可愛いな〜!


「似合ってるよ、ラウラ」


力を緩めた俺はラウラと向き合う


「なっ!?///」


「可愛いって、それ……またやってくれよな」


頭を撫でた


「っ〜〜〜///た、たまにだぞ!たまにだけだからな!」


「はいはい。それでいいよ〜」


「むぅ……」


小さく唸ってるラウラ、マジ天使


やべぇ


「ほら、一緒にトレーニングしようぜ。最初はなにからする?」


ラウラの手を引っ張る


「お、おい!」


「ほれ、早く早く!」


「……まったく」


いつもは、子供っぽいラウラだが


今の、士を見つめる彼女の目はどこまでも優しく、穏やかだった

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IS <インフィニット・ストラトス> 第1巻 [Blu-ray]
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