小説『IS〜インフィニットストラトス―ディケイドの力を宿す者 ―』
作者:黒猫(にじファン)

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「じゃあ……そろそろ行くよ……箒ちゃんまたね、つっくん……箒ちゃんをよろしくね」



返事はせず、ただ頭を少し下げる



「姉さん……」



「泣きそうな顔しないのっ!」



「……な、泣いてなど……」



「じゃ、またね」



「……はい、また」



「あ、言い忘れてた……箒ちゃん」



「はい……?」



束さんが箒に手招きし駆け寄った箒になにやら耳元で話している



「なっ……!?」



少し赤くなった箒だが負けませんよと言って束さんから離れる



「今日からは姉妹でありライバルですね」



「そうだね……負けないよ?」



「私もです」



「ふふっ……じゃあね〜」



風が吹き荒れる……目を開けたときには束さんはいなかった



「箒………よかったな、仲直りできて」



「ああ……その、ありがとう///」



顔を赤らめながら言う箒



「何がだ?」



「な、仲直りできたのはお前のお陰だし……」



「さぁてな……俺は何にもしてないよ……帰ろうぜ」



「あ、ああ!」



なんて、可愛い笑顔してるんだ





箒side-



士には、感謝の気持ちでいっぱいだった



私に本当の強さを教えてくれ、姉妹仲まで改善してくれた……



本当に、どこまでお人好しなんだ……



それに……あの姉さんまで、士の事を……あんなに昔から……



少し前を歩く、昔から変わらない幼馴染の背中は……どこまでも大きく見えた







士side-



旅館に戻ったはいいものの、やはり暇になった俺は旅館の屋上のフェンスでボーっとしていた



夜風が気持ちいい……



「つっくん」



ふと、声をかけられる



「まだいたんですか?束さん」



振り返ると頬を膨らませた束さんが……



「もうっ!つっくんは私に帰って欲しいの?束さんショックだよ〜」



「そうは言ってないですよ……で?何か御用ですか?」



この人のペースには乗っちゃいけないよね



「うん……そ、その……ありがとね、箒ちゃんの事」



ん?そんな事か?



「当たり前ですよ……アイツは守らなきゃならない、大切な仲間の一人ですから」



「なら、束さんのことも守ってくれるのかな?」



「はい?守るに決まってるじゃないっすか……束さんも俺の大切な仲間ですよ……ってコレ前にも言ったことある気が……」



「うぇ!?あ、う……」



なぜか顔を赤くして言葉に詰まったあと、うつむいた。顔が真っ赤だ。



「どうしました?束さん?……大丈夫ですか?」



「ちょっと……急にそれはダメでしょ?」



声が小さい……



「すいません……もう一回」



「な、なんでもないよ!もう!……そうやって女の子を落としてるんだね?」



「いや、落としたことはないですけど……」



失礼な!







束side-



「いや、落としたことはないですけど……」



驚愕だ……落とすの意味を完全に落下させるの方と勘違いしてる



そんな訳ないのに……



「……いきなり卑怯なんだよ、つっくんはぁ……」



頬に手を当てると……熱い、顔が赤い証拠だ……掌に頬の熱さを感じながら先程の言葉を思い出す



「大切な人かぁ……えへへ///」



「何か言いました?」



目の前の士が不審そうな顔で見てくる



そんな顔さえ格好よく見えるからどうしようもない



箒ちゃんには悪いけど……譲れないものが……人がいるんだよね〜



「な、何でもないよ!用件はそれだけだから!とにかく、ありがとね!」



別れたくないけど……別れなくちゃいけない



それはとても寂しいことで……悲しいことだ……



別れ際にこんなことを言われなければの話だが……



「束さん!……また、いつでも顔見せてください、箒も喜ぶと思うんで……それに」



「それに?」



「俺もまた束さんの顔……いや、笑顔が見たいんで……約束ですよ?」



ニッコリ……後ろで輝く月に負けないくらい……いや、太陽すらも凌駕するような笑顔で

甘く、優しく、何か、惹きつけられるような声でそう、言われれば……



「うん!や〜く〜そ〜くっ!ね?」



こう言うしかないじゃん!



それから、私は士の前から消える



最後に見た彼の表情は………とても、とても眩しく、とても癒され、とても優しい笑顔だった……













私、篠ノ之束が神谷 士という男性に惚れたのはいつだったろうか?



それは、たしか彼がまだ中学生だった記憶がある





「はあ〜、ただいま……って束さん!?」



「やっほ〜、つっくん!……ちーちゃんならまだ帰ってないよ〜」



「いや、それは知ってますけど……どうしたんですか?」



「いや〜久しぶりにつっくんとちーちゃんに会いたくなってね〜」



嘘だ……本当は千冬に見せに来たのだ……ISのコアを……当時、開発段階だったソレを



「さいですか……なら、千冬姉が帰ってくるまで……ゆっくりしてってください」



「うん、ありがとう」



制服を脱いでくるといってリビングを出た士を見送り、考える



つっくんって何か、年下な感じがしないよね〜



同い年というか……お兄ちゃんというか……



「束さん、お茶でも飲みますか?」



「ひゃん!?」



「どうしたんですか?急に可愛い声出して」



「か、かわいい?」



「はい……あれ?言われたことありません?俺は束さん、十分可愛いと思いますけどね〜」



「(か、可愛いなんて、初めて言われたよ〜///)」



「まあ、とりあえず……お茶いれますね」



そういって、キッチンの方へと歩く



お茶と適当なお菓子を出した士は自分の部屋で寝るから何かあったら起こしてくれと言って、部屋へと帰っていった



話によると最近寝ていないらしい……



ならばと、今自分が士に感じているこの気持ちが何なのかを確かめるべく、士の部屋へと向かった





士(中学期)side-



(これは、転生時に神様が付け加えた設定での話と考えてもらっていいです)



最近、寝ていない理由は簡単なもので夜中まで体を鍛え、早朝からも体を鍛える日々を始めたから……



実はつい一週間ほど前こんなことがあって









「千冬姉、おはよう……ってどうしたんだ!?顔真っ赤じゃねぇか!」



「おはよう、士……大丈夫だ、薬でも飲んで寝れば治る」



起きてきた千冬姉は明らかに風邪をひいているみたいだった



「すぐにおかゆ作るから着替えて部屋で寝ててくれ、そんなに汗をかいた服じゃもっと悪くなるから」



「あ、ああ……そうする」



「おう、お大事にな」



千冬姉はなるべく俺に心配かけないように、無理してるんだろうな……なるべく早く作るか



おかゆを作り俺は千冬姉の部屋に向かった。





コンコン





「俺だけど千冬姉、起きてるか?」



「あ、ああ……」



声だけを聞くと、さっきよりは少し楽にはなったようだ



「一応、おかゆと薬を持ってきたけど?食えるか?」



おかゆをベッドの脇に置き、俺は千冬姉のパジャマを畳みながら訊く



「だ、大丈夫だ……」



だが、そういった千冬姉がベッドから落ちそうになる……って



「危ね!」



俺はなんとか千冬姉を抱きとめる事が出来た



「何処が大丈夫だよ……全然大丈夫じゃないでしょーに」



千冬姉を何とか壁にもたれさせるようにベッドに座らせ、薬と一緒に持ってきた体温計を取り出して熱を計ることにする



「ごめん、千冬姉……ちょっとボタン、外すぞ」



暫くたち、体温計が鳴ったので確認すると



「39度6分か……こりゃ、今日1日寝てないとな……」



「わ、私は大丈夫だ……」



「ダメだ、今日は寝てろ……ほれ、おかゆ食べさせてやるから……あ〜ん」



「じ、自分で食べられる///」



千冬姉はさらに顔を紅くして拒む……そんなに俺に食べさせられるのが嫌か?



でもな……



「顔を真っ赤にしてるくせにそんな事言ってねぇで……ほら、口開けろ」



「こ、これはそう意味じゃなくてだな……」



「病人が顔を真っ赤にさせてるのに他の意味はないだろ……ほれ、いいから!」



「う……わ、分かった……あ、あ〜ん///」



千冬姉になんとかおかゆを食べさせ、薬を飲ませる……千冬姉が寝たのを確認して、俺は千冬姉のパジャマを持って部屋をでた









暫くたって、お昼の時間になりもう一度おかゆを作って千冬姉の部屋に向かった



「千冬姉、昼飯作ったけど食えるか?」



「ああ、朝より楽にはなったからな……」



「そりゃ、よかった……それじゃあここにおかゆ置いておくから無理せずに食えよ……あと薬もここに置いとくから」



「ああ、すまないな」



それから、俺はリビングに戻り少しテレビを見てから、再び千冬姉の部屋に鍋を取りにいった



コンコン



「千冬姉、入るぞ」



返事がなかったが状況が状況なので、俺は部屋に入った



「やっぱり、寝てたか」



俺は千冬姉の頭を撫でながらベッドの横に座った



「千冬姉、悪いな……いつも無理させちまって……俺を拾ってくれてから迷惑しかかけてないもんな……もし千冬姉に何かあったら俺が守ってやる……っつても中学生に出来ることっつったら少ないけどな……まぁ、ゆっくり休んでくれ」



そう言って、鍋を持ち、千冬姉の部屋を出た。



千冬Side-



私は士が作ってくれたお粥を食べながら自分の気持ちについて考えていた。



「(私は士にどんな感情を持っているんだ?最初は私と同じ様な境遇に同情を覚えたのは間違えない……だが今日まで一緒に過ごしてきて、いつも私の事を考えてくれている……私が束と開発しているアレのせいで帰るのが遅くなっても、ちゃんと起きて夕食を作ってくれている……本当に私は士に対してどんな感情を持っているのだ?弟?それとも1人の異性としてか?)」



そんな事を考えていたが自嘲的な笑みを浮かべた。



「(何を言っているんだ私は……士は仮にも弟だぞ?なんでそんなことを考えている?だが士が他の女子と話しているとイライラするし……今朝もあのあと寝たフリをしていたがなかなか寝付けなかった。なんで弟のあ〜んでドキドキしなければならないんだ!確かに士は同年代の子ども達と比べると大人びている……はぁ、私はホントに士にどんな感情を向けているんだ}



 コンコン





「千冬姉、入るぞ」



士について考えていると当の本人が入ってきた。



「やっぱり寝てたか」

 

(何故私は寝たフリをしているんだ? 普通に返事をすれば良いだけだろう!)



すると士は私の頭を撫でながら横に座った。



{い、いったい何を?それでも……なんでだろう?凄く落ち着く)



私がそんな事を考えていると士はいつもとは全く違う雰囲気でつぶやいた



「千冬姉、悪いな……いつも無理させちまって……俺を拾ってくれてから迷惑しかかけてないもんな……もし千冬姉に何かあったら俺が守ってやる……っつても中学生に出来ることっつったら少ないけどな……まぁ、ゆっくり休んでくれ」



このつぶやきを聞いて、私は自分の気持ちがハッキリと分かった



(そうか、私は士が好きなのか……弟だなんて関係ない……私は士が大好きなんだ。それだけは変わらない)



私は自分の気持ちがハッキリした途端に、眠ってしまった



士side-



なんて、事があってからは千冬姉を守るためにも体を鍛え始めた



……そろそろ起きるか



目を開けると



束さんに膝枕されていた……



はい?なんで束さんが俺を膝枕してる?



「あ、つっくん起きたんだ」



束さんは俺に声をかけてくれたが、束さんの女性特有の2つの山しか見えない



「つっくんはいったい何処を見てるのかな?」



「中学生なんで……俺も」



「でもつっくん、中学生には思えないもん」



俺はなんとか体を起こす



「そ、それでさ……さっき言ってた事って本音かな?」



「さっき言ってた事って?」



「そ、その……か、可愛いだって」



ああ、言ってたね



「はい、本音ですよ……俺、お世辞とかってあんまり言わないほうだと思ってるんで……」



俺がそう言うと束さんは顔を真っ赤にして俯いてしまった……怒らせた?



「そ、そうなんだ///それじゃあもし、私に何かあったら守ってくれちゃったりしてくれるのかな?」



「ん?急になんか、凄い話になりましたね……でもまぁ守りますよ……束さんも大事な人ですから……って、そろそろ夕飯の準備してきます……今日は3人前いりますからね」



そういい、部屋を出る



束side-



つっくんが部屋を出て行って1人になると同時に心臓の鼓動が早くなった……多分、今の私の顔は真っ赤だろう……



(最初はあのちーちゃんが私以外で素で話しているのを見て、興味を持っただけなのに)



私はつっくんのベッドに倒れこむようにして横になる



{でも1人でいるときにつっくんに話しかけられると、凄く落ち着くんだよね……ちーちゃんも多分つっくんに惚れてるんだろうな……私はどうなんだろう?)



私は目を瞑りさっき、つっくんが私に言ってくれた言葉を思い出す



(でもまぁ守りますよ……束さんも大事な人ですから……)



(あの時のつっくんは、すごく大人びていて、そして……かっこよかった)

 

その考えが出てきた時、私は自分の気持ちを理解できた



{私はつっくんが好きなんだ……恋敵はちーちゃんか……でも、負けないよ……それにしても中学生のつっくんに惚れちゃうなんてね……天才の私にも予想できなかったよ)



コレが、士の過去である

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