小説『IS〜インフィニットストラトス―ディケイドの力を宿す者 ―』
作者:黒猫(にじファン)

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箒Side-

「織斑先生。さっきの試合の途中で士のISの装備だけではなく、姿が変わったように見えたんですが……」

姿だけではなくその色、武器まで変わる

普通ISがあんなに変わるようにはなってない

しかし士のISは飛行能力はなく、カードをあのベルトに入れるだけで姿も装備さえも変えることができる

「あれがあいつのISの特徴らしい。何種類あるかまだわからんがあのカードを使い、姿や装備を変えあらゆる敵に対応する……本当に束が作ったのか?まったくいつもいつも馬鹿げたモノを作ってくれる」

千冬の言葉に同意する

まったくあの姉さんは、ほんっとうに厄介なことをしてくれる



士side−

とりあえず変身を解除し、俯いて相当ショックを受けているだろうオルコットの元へ歩み寄る

「わ、わたくしが男なんかに…」

男の俺に一方的に負けたのがそうとう堪えた感じかな?

しかもこいつはイギリスの代表候補生

母国の誇りみたいなのも背負ってる感じだろうし……

何か言ってやらないと自殺するんじゃね?

見てて気分も悪いし……

しゃあないな〜

「なぁ、オルコット」

「な、なんですの?ど、どうせ馬鹿にするおつもりなんでしょ」

うわ〜お……よっぽど辛かったんだろうな……

泣きそうじゃねえか

え?俺が悪いの?

なんか言う事は……

「いや、別に馬鹿にするつもりはないよ」

「同情なら結構ですわ」

オルコットの目の前まで行きしゃがみこみ目線を合わせる

「別に同情とかじゃないけどまあ聞きなしゃーい」

「ふざけてますの?」

そんなに睨むなや

ちょっとは和むかと思ったのによ……

「ごほん……とりあえず男だからってそんなに見下す事はないだろ?お前が男を嫌ってる理由があるのかも知れんけどさ……ちょっとさ、ちょっとでいいから考えを改めてくれよ―――」

そこで一旦言葉を切り、オルコットの頭に手を載せゆっくり撫でてやる

「―――最悪、俺は見下されないような男になるからさ

お前の理想まではいけなくてもいい感じの男にはなってやるよ……

だから……な?」

「……っ!///」

オルコットを見ると顔が赤い……あれ?また怒らせた?  

とりあえず撫でるのをやめて

「いや……ごめんな?こういうときはやっぱり頭撫でるのが鉄則かな〜とかなんとか思ってしまって……」

「だ、大丈夫ですわ」

怒ってないかな?

なら、いいか





控え室に戻ると箒、千冬姉(織斑先生)、山田先生がいた。

「やったな」

箒からはお褒めのお言葉

「まあ、勝つって言ったしな」

「……そ、その……かっ……格好よか……かっこよかったぞ……」

ん?なになに?声小さすぎて聞こえないぞ?

顔、真っ赤だし……どしたの?

「まったく、時間をかけすぎだ馬鹿者が」

織斑先生からは辛口なコメントなことで

「でも本当にお疲れ様です。私でも勝てないかもですねー」

山田先生 貴方はなんていい人なんだ

さすがおっとり?系だぜ

「「むっ!」」

ははは……痛いよ……箒さん、千冬さん

足踏みつけながらぐりぐりするのは本当に痛いよ

「神谷君!だ、大丈夫ですか!?」

少し動くだけで大きく揺れる二つの山

ちょっとちょっと!!

「「ふん!」」

お二人からは止めのボディスロー

……死ぬっちゅうねん



セシリアSide-

 シャワーを浴びながら、セシリアは物思いに耽っていた。

「神谷 士……」

あの男子のことを思い出す。

今まで出会ったどの男性とも違う、誰かに媚びることも無く、何かの強い意志が篭っていると言えるあの強い眼差し。そしてなにより士に頭を撫でられた時のあの温かく、優しい気分

それは、不意にセシリアの父親を逆連想させた。

「父とは違う、強い男性……」

自分の父親のことを思い出す。彼女の父親は名家に婿入りした父。

母には多くの引け目や柵があったのだろう、いつも他者の顔色を伺っていた人で、そんな父を母も鬱陶しく感じていたらしい。

ISが発表されて女尊男卑の今の社会になってから、父の態度は今まで以上にひどくなった。

情けなく、威厳というものもプライドさえもなくなる父の姿を見て、自分は絶対にこんな男とは結婚しない、と幼いながらも誓ったのも懐かしく感じるほどの昔だ。

そう昔。両親はもういない、3年前の鉄道事故で二人揃って他界したからだ。

どうしてその日に限って一緒にいたのか今はもう分からないしかし、莫大な両親の遺産を狙ってやってくる金の亡者から、遺産を守る為に必死で勉強をしながらその一環で受けたIS適正試験、そこで出た判定はA+という高い適正で、国から提示された条件も遺産を守ることにも好条件だったので即断し努力した。

そして日本に自分の専用機である【ブルー・ティアーズ】の稼動データを得る為に来日した日本で出会えた……出会ってしまった

「わたくしの理想の男性……神谷 士……」












こんにちは神谷士です

今は、セシリアとの対決から数日たった授業中

え?オルコットからセシリアになってるって?

それがこんなことがありまして

対決の翌日

「はあ〜……音楽聴きたい」

「また、それか。そんなに音楽はいいものなのか?」

授業と授業の間の休み時間

箒とそんな話をしていると

「つ、士さん!」

「うわ!びっくりした……って、オルコットじゃん……ってか士さん?」

「………」

ははは……箒さんそんなに睨まれると士君泣いちゃうよ?

「そ、その先日は言い過ぎたと言いますか……言い過ぎたので謝罪しに参りました」

なんか、いまいち日本語おかしいけど要するに謝りにきたのね

ご苦労ご苦労……でも

「本当に、もうs―――」


「―――はいはい、おしまいおしまい

気にしてないからこの話は終わり!」


「で、ですが!」

「俺がいいからいいの〜

それに正面きって謝られるのとかあんまり好きじゃないんだ」

そこで俺は言葉を切り

できるだけ優しい口調を意識して

「だから、謝らなくてもいいから……俺と仲良くしてくれ……な?」

「は、はい!もちろんですわ!」

「で?士さんとはどう言う事だ?オルコット」

おいおい、怖いからそんな低い声で話さないで箒さん

「あら?篠ノ之さん?いらっしゃったのですか?」

で?あなたは何でそんなに余裕の表情なのオルコットさん?

「わ、私が最初に士と話していたろうが!」

「それと、士さん。これからは私のことセシリアと呼んでいただけませんか?」

ちょ、おま!さすがに無視はダメだろ!

怖い怖い怖い!

箒さんが燃えとるよ〜〜

めっちゃ燃えとるよ〜〜

後ろに立ってるのは金剛力士像ですか?

あ、幻覚?

とりあえず怖い……

「えっと……分かったよ、これからはそう呼ぶからよろしくなセシリア

で、そんなに怒らないで箒さん」

「私は怒ってなどいない!」

めっさ怒ってますやん……

そのあとチャイムが鳴っても席に着かず口論していた箒とセシリアが織斑先生に出席簿アタックをもらったのはまた別の話







てな事がありましてね〜〜

ちなみに今はセシリアが飛んでますね〜

いやー綺麗に飛んでますわ

ちなみに俺も飛ぼうと思えば飛べるのだけど

やっぱり授業でやるのは……さすがにね

おっ!急下降と完全停止をやってる。目標は地表から十センチだっけ?

すげーな

すると、セシリアがISを待機状態にしてチョコチョコっとかわいらしく歩いてきた

「つ、士さん!見ていてくださいましたか?」

なんだそんなことか?

「おう!見てたよ。やっぱすげーな」

「ふふ……そうですか……見ていてくださいましたか」

うんうん、俺もあんな感じに楽に飛べたらな

それにしてもさっきからセシリアがずっとモジモジしてるぞ?

どした?

あ、セシリアが織斑先生に殴られた

あ、箒に殴られた

……俺が











時は変わって夜

「という訳でっ!神谷くんクラス代表決定おめでとう!」

『おめでとう〜!』

クラッカーが一斉に鳴らされる

夕食後の自由時間に寮の食堂を貸切、一組のメンバーが集まっていた

「忘れていた……そういやクラス代表になっちまうんだった……」

なんで勝っちまったんだ俺

まあ負けても格好悪かったんだけどさ……

クウガは使いやいライダーだったなー

全然、他のライダーを試していない分

実戦でその力を試さなければならない

なんて考えていると

「つっち〜!」

「どした?本音ちゃん」

俺の腕に嬉しそうに抱きついているのは布仏(のほとけ) 本音(ほんね)

皆は「のほほんさん」ってあだ名で呼んでるらしいけど

それはなんかねーって事で本音ちゃんで呼んでいる

そしてなぜかやたら俺に懐いてしまっている始末

挙句、俺が本音ちゃんって呼ぶと……

「も、もう〜……本音ちゃんはやめてよ〜///」

とか、かわいらしく頬を膨らませながら言ってくる

なんでやねん

本人いわくずっとあだ名で呼ばれていたため普通に名前で呼ばれるのは恥ずかしいらしい

その割には本気で嫌がらないからついつい呼んでしまう

……おいおい

そんなに抱きつかれたら血止まるんだけど!?

それに



「な、何やってるんだ////!?」

「な、何やってますの////!?」



箒とセシリアにバレてしまうわけ

「ん〜? つっち〜に抱き着いてた〜」

満面な笑みでこの子はなんてこと言ってんだよ

「は、破廉恥だぞっ!////」

「は、破廉恥ですわ!////」



「いいから離れるんだ!」

「いいから離れなさい!」


「え〜」

え〜じゃないよ本音ちゃん

普通にダメだぞ

で?お二人さんはいつの間にそんなに仲良くなったの?

息ぴったりですやん

「うーん。だったら、のっちーとせっしーも抱きつけば良いんだよ〜」

「「そ、それならば……////」」

おいこら、お二人さん。まず否定しようか

「はいは〜い、新聞部でーす。話題の新入生、神谷士君に特別インタビューをしに来ました〜!」

めんどくさそーな人が来た

「あ、私は二年の黛(まゆずみ)薫子(かおるこ)よろしくね。新聞部副部長やってまーす。はいこれ名刺……おっ!君が神谷士君だね」

「違いますね」

「それじゃあ、何でクラス代表になったのか教えて」

聞けや

「まあ……流れに任せたところ多いんですけど

そこは適当に捏造しといてください」

「わーお。まさかの発言だよ!」

だって面倒だもーん

「良い記事期待してますよ」

不敵に笑う俺

「や、やるわね」

苦虫を噛んだみたいな顔をする黛先輩

「まあいいや。それじゃあ最後に写真撮るから、とりあえず二人並んでね。」

二人?ああ、セシリアか

「あ!握手とかしてると良いかもね」

「そ、そうですか‥‥‥そう、ですわね////」

何故かモジモジし始めたセシリア。まあ、握手とか恥ずかしいしな

俺も恥ずかしいんだけど……

「あの撮った写真は当然いただけますわよね?」

「そりゃもちろん」

「でしたら今すぐ着替えて―――」

「時間かかるからダーメ。ほれ!さっさと並ぶ」

黛先輩が俺とセシリアの手を引いてそのまま握手まで持って行く

「‥‥‥‥‥////」

頬を赤くして黙り込むセシリア。俺も女子と手を繋ぐなんてそうそう無いからな……平常心平常心

「それじゃあ撮るねー、『な・ぬ・ね・の』足りない一文字はー?」

「……に?」

わっかりずらいわ!

そして、デジカメのシャッターが切られたのだが‥‥

「なんで全員入ってるの……」

一組の全メンバーが撮影の瞬間に俺とセシリアの周りに集結。その行動力にすさまじいものを感じたよ

「あ、あなた達ねえっ!」

「まーまーまー」

「セシリアだけ抜け駆けはないでしょー」

「クラスの思い出になっていいじゃん」

「ねー」

「う、ぐ……」

苦虫を噛み潰したような顔をしているセシリア

逆にクラスのみんなはにやにやとした顔で眺めている

……まぁいいが

この後も『神谷士クラス代表就任パーティー』は続いた






さて、そろそろお開きかという時間

明日も授業があるしと全員が片付けをし始めた時だった

「キャッ!」

「あぶねっ!」

小さい悲鳴とともに揺らぐ体

その体をしっかりとしかし優しく受け止めてやる

あれ……?この人は……

「鷹月?」

クラスのしっかり者「鷹月静音」さん

じゃあ、ありませんか

「大丈夫?」

「う、うん///ちょっとはしゃぎすぎたみたいで」

「ははは……片付けくらいは俺らでもできるから休んでてもいいよ」

「え?でも……」

さすがしっかり者……やっぱり簡単には譲らないか

……でも

「ふふん、俺は知っとるぞー

いつもクラスのこと気にかけてるのも今日のパーティーの間もずっと何かと皆の事を気にしてたのもな」

もう癖だな……思いつつも鷹月の頭を撫でながら

「だから……休んでろ」

「う、うん///あ、ありがとね///」

「はは……気にすんな」

言いながら片付けに戻る俺

その背中をうっとり眺めるしっかり者がいたのは士の知る由もないこと……

-4-
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