小説『IS〜インフィニットストラトス―ディケイドの力を宿す者 ―』
作者:黒猫(にじファン)

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こんばんは、神谷 士です



今は、食堂を使って皆でパーティ



あのISは本当に未知な存在でそのコアやパーツは全てIS学園が預かることになった



俺が倒した後、全員が委員会から事情聴取を受け今に至る



メンバーは箒、セシリア、鈴、シャル、ラウラ、簪、楯無さん、本音ちゃん、虚さん、ダリルさん、フォルテさんと勢ぞろい



先生達は全員で今後の方針を決めているらしい



お疲れ様



俺も、ファイズのアクセルと始めてのコンプリートでかなり疲れた



まあ、言いだしっぺが俺だけに欠席できない



どうにも、体調が乗らないので今は少し外れたベランダで休憩



皆の騒ぎ声が夜のIS学園によく通る



少しして二つの影が俺の目にとまる



その影は俺に気づいていない様子



楯無さんと簪だった



耳を傾けると



「お姉ちゃん……」



「うん、簪ちゃん」



涙を零しそうになる妹を見て、姉は優しい笑みを浮かべて、その頭を撫でた



「わた、し……お姉ちゃんが、大嫌いで……でも、大好きで……強くて、かっこよくて……。だから……恥ずかしくて……」



支離滅裂な言葉の羅列

しかし姉妹の間では十分な会話で、姉はその大きな器で妹を包み込む



「私……お姉ちゃんみたいに、強くもないから……かっこわるくて……。お姉ちゃんの妹が……イヤ、だった……」



「そんなことないわ、簪ちゃん。あなたは私の立派な妹。優しくて、気配りが出来て、とーっても、自慢な妹だから」



その言葉に簪は嗚咽を漏らしながら、姉の胸に顔を埋める

それは傍にいる人物に気付いていた、姉からの妹への配慮だ

好きな異性に泣き顔なんて見せたくない。嗚咽なんて聞かせたくない。女子として当然の真理である



まぁ……ばれてるなら出ますか……



……ばれてるってなんだよ



「良かったな、簪……一歩、踏み出せて」



簪は頷くだけだった



「あら?私を差し抜いて、そんな話してたの?」



楯無さんが可愛らしく頬を膨らませながら言う



「さあ?どうなんでしょうねー」



とぼけて見せた



それは、肯定を意味したのか否なのかを知るものは俺と簪だけかもしれない



「お、おねぇ……ちゃん……」



簪が姉から離れながらその真っ赤な目で……しかし、どこか決意を秘めた目で



「わ、私……負けないから!」



そう言って駆け出した



ん?なんだ?



「なーんだ、簪ちゃんは気づいてたか……」



「なんの話っすか?」



イマイチよく分からんぞ?



「なんでもないわよ……あ、それとね。私、部屋から出ていく事にしたから」



ぷいっと目線を逸らされて、告げられた



「なんでそんな急に、また」



「約束したの、簪ちゃんと。対等に勝負しようって……したのは今だけどね」



「勝負って……はい?なんのことですか?なにかやるんですか?」



勝負と俺の部屋から出ていく事がいまいち繋がらないんだが。

それになんで簪と勝負するのかがわからん。そもそもなんの勝負だ?



「女の勝負よ♪」



「……はあ」



聞いても教えてくれないだろうし、俺は諦めて溜め息を吐く



「うーん、ここまで言ってもわからないとはかなり重症ね。これは骨が折れそうだわ」



「なにが……ですか?骨が折れるって、そんな危ないことするなら俺は止めますよ?」



「ダメだこりゃ……まあいいわ!士君はもう少し、女心を勉強なさい」



そう言って簪、同様駆けて行った



女心?はて?



何故に?



考えていると今度は簪が戻ってきた



「おっ、簪か……さっき楯無さんがお前と勝負する約束したって言ってたけど何の事だ?」



「えっと……内緒、かな……」



「内緒なら仕方ないなぁ」



そう言うと簪は少しきつい目で睨んでくる



え?内緒なら追及するのはダメだろ?なんで睨まれるんだ?

これも複雑な女心というヤツなのか。理不尽だ。女心は男に易しくないな



「ああ、あと楯無さんがやっと部屋から出て行ってくれるんだってさ。助かるわぁ」



「……さっきから、お姉ちゃんの話……ばっかり……」



「えっと……なんて?」



「なんでも、ないっ!」



そんなに怒るなよ……



「まあ、なんにしても良かったな……楯無先輩と仲直り出来て」



「士の、おかげ……」



「俺は何もしてねェよ。お前が一歩を踏み出したから、こうなったんだ」



「でも、士が引っ張ってくれなかったら、背中を押してくれなかったら……無理、だった。ありがと……」



笑い掛けてくる士を直視できず、視線を逸らして感謝を述べる簪



それを聞いて俺も一瞬、鳩が豆鉄砲を喰った様な顔をするが、またすぐに笑顔になる



「約束したからな。お前を助けてやるって。だから当り前のことをしただけだよ、俺は」



「それでも、ありがと……」



何度もお礼を言われ、気恥ずかしくなった俺は頭をポリポリと掻いて言う



「お前が諦めそうになってもさ……前には引っ張ってくれる人が、横には応援してくれる人が、後ろには背中を押してくれる人がいるからさ……気にせず進めよ」



「うん!」



はは……そんな満面の笑みを向けられたら眩しすぎて直視できないぜ……



こうして過ぎた夜の月はとても綺麗だった

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