小説『IS〜インフィニットストラトス―ディケイドの力を宿す者 ―』
作者:黒猫(にじファン)

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あの無人機IS事件の数週間後



生徒達には詳しいことを知らせず、事故の形で



俺達、専用機持ちには国からの説明を受けたがどうやらその詳細全てが分からないらしい



全員、生死に関わる怪我も無く、ダメージレベルもBで済んだ



俺もコンプリートフォームの報告書を書かされ、決して楽ではなかったが本当に何なのだろうか?



生徒達も詳しいことを説明されないのが不満ではないのか大したこともなく生活している



他人事だと思いやがって



専用機持ちはもちろん一週間の自宅、自室謹慎処分が下った



そして今日は



「神谷君!ボーっとしてないで手伝って!」



「そうだよそうだよ!もうお店開いちゃうからね!」



なんと、学園祭



何故かは分からんが中止になることなく決行された



なんでやねん



一般開放はしていないので開始の花火などは上がらないが、生徒たちの弾けっぷりはそれに匹敵するくらいにテンションが高かった



「うそ!?一組であの神谷くんの接客が受けられるの!?」



「しかも執事の燕尾服!」



「それだけじゃなくてゲームもあるらしいわよ?」



「しかも勝ったら写真を撮ってくれるんだって!ツーショットよ、ツーショット!これは行かない手はないわね!」



とりわけ一年一組の『ご奉仕喫茶』は盛況で、朝から大忙しだ



というか、具体的には俺が引っ張りだこな状態で、他のメンツはわりと楽しそうにしている



「いらっしゃいませ♪ こちらへどうぞ、お嬢様」



とりわけ楽しそうなのがメイド服のシャルで、朝からずっとにこにこしている



(それにしてもシャルは上機嫌だな〜そんなに楽しいのかな)



ちなみに接客班(コスプレ担当)は俺にシャルにセシリア。そして意外にも箒とラウラだ



(ラウラはこういうのに興味があったとして、よく箒が折れたなぁ)



などと疑問もあるが今は置いとおき残りのクラスメイトはというと、大きく分けて二つ。片方が調理班でもう片方が雑務全般



雑務は特に切れた食材の補充やテーブル整理など忙しそうにしている。そして、その中でも一番大変なのが、廊下の長蛇の列を整理をしているスタッフだった



本音を言えば俺もそっちがよかったがもちろん皆揃って反対していたよ



「はーい、こちらは二時間待ちでーす」



「ええ、大丈夫です。学園祭が終わるまでは開店していますから」



各種クレームにも対応していて、かなり忙しそうにしている



廊下の様子をちらっと見ると



「あ、最後尾の看板持ちますよ」



「ねぇ、ゲームって何あるの?」



「ジャンケンと神経衰弱とダーツだって。それぞれ苦手な人のために選べるようにしてくれたみたい」



「えー、まだ入れないの?」



(あっちもあっちで大変なのは変わらないか……少し手伝うかな)



一年生教室の前はほぼ埋め尽くす、人、人、人の山となっており、その大人数に対応しているクラスメイトにはとてもありがたく感じたので少し手伝いに向かう



「お疲れちゃん、ちょいとばかし手伝いに来たよ、ってか鷹月じゃん」



この人厨房も担当してたよな



どんだけ頑張り屋なんだ



「か、神谷くん!?ま、まずいって余計に混乱しちゃうから教室に戻ったほうがいいよ!」



「まぁ、そう言うなって」



すると俺に気づいたようで辺りの客が一気にキャーキャーと騒ぎ出す



うるせぇよ



「お静かに」



人差し指を立て、それを口の前にやる



なんともまぁ、気持ち悪い



自分でやってて思うから余計タチが悪い



でもクラスの女子に絶対効果があると言われたのでやってみた



効果は抜群でさきほどまで騒ぎが嘘のように今は静かなものとなっている



「まだまだ学園祭は始まったばかり……わたくし達執事共もお嬢様方に満足していただくために懸命を尽くしております。なのでもうしばらくのご辛抱を」



「「「「「「は、はい//////」」」」」」



声を揃えて返事をした後、クレームを言う客は一切いなくなり、だいぶスタッフの仕事も楽なものとなった



「んじゃ、戻るわ。引き続きよろしく〜」



すれ違う際に鷹月の頭にぽんっと『頑張って』という意を込めて軽く手をおき、教室に戻っていった



「か、神谷くん////」



クラスのしっかり者が顔を赤くしていたことを士はもちろん知らない





 



「ちょっとそこの執事、テーブルに案内しなさいよ」



(この声は────)



教室に戻ると同時に聞きなれた声がしたので、振り返り見たらチャイナドレスの鈴がいた



「お、どうした?その格好」



一枚布のスカートタイプで、かなり大胆にスリットが入っている。真っ赤な生地に龍のあしらい。金色のラインと、かなり凝っている



「う、う、うるさい!うちは中華喫茶やってんのよ!」



「あー、飲茶(やむちゃ)ってやつ?」



「あたしがウェイトレスやってるっていうのに、隣のあんたのクラスのせいで、全然客来ないじゃない!」



「俺のせいかよ…………。ん?鈴その髪型いつもと違うな。なんて言うんだ?」



「シニョンよ」



「へぇ〜、初めて知ったな。そういうのも似合ってるな」



「う…………。そ、それはまあ、中国人としてのたしなみっていうか、なんていうか………」



「?」



「と、とにかく案内しなさいよ!後が詰まってるじゃない!」



「わかったよ。はぁ〜、では────それではお嬢様、こちらへどうぞ」



「お、おじょ‥‥‥‥!?」



「仕方ないだろ。そういうルールになってんだから」



「ふ、ふん!まあ、ルールなら仕方ないわね……………うん、仕方ないわね」



(なぜに二回言った?)



そんな疑問を抱きながらも、鈴を空いているテーブルへと案内する



ちなみに内装は学園祭とは思えないレベルの調度品があちこちに置いてあり、それらはセシリアが手配したもの。特にテーブルとイスのこだわりがすごく、ワンセットでいくらするんだよと言いたくなる高級感が漂っている



もちろんティーセットもこだわりの品々で、調理担当のクラスメイトたちは手が震えないようにするのに必死らしい



「ご注文は何になさいますか?お嬢様」



「そ、そうね…………」



ちなみにメニューを客に持たせてはいけないため、こうして執事やメイド班が手に持って見せなければならない



「この、『執事にご褒美セット』って何よ?」



「……………当店おすすめのケーキセットはいかがでしょうか?」



「おいこら、誤魔化そうとしたでしょ」



「とんでもございません」



「じゃあ、『執事にご褒美セット』ひとつ」



「……………当店おすすめのケーキセットはいかがでしょうか?」



「無限ループって言葉知ってる?いいから、『執事にご褒美セット』ひとつ!」



「…………『執事にご褒美セット』がひとつですね。それでは、少々お待ち下さい」



涙を拭いながら、腰を丁寧に折ったお辞儀をしてから、鈴の前から立ち去る



ちなみにオーダーをキッチンに通す必要はない。復唱のさいに、ブローチ形マイクから音声を通じているので



「はい、よろしく」



キッチンテーブルに戻った俺に、すぐさま『執事にご褒美セット』が渡された。それはアイスティーと冷やしたポッキーのセットで、値段も三〇〇円と格安



俺はものすごく気が進まないのをどうにか我慢しながら、チャイナドレス・ガールの待つテーブルへと向かう



「お待たせしました、お嬢様」



「う、うむ。くるしゅうないわよ?」



いろいろと間違っているのだがそれは言わないでおこう



「では、失礼します」



俺は鈴の正面に座り、ふたりがけのテーブルに指し向かう



「お、おー。よきにはからえばいいわよ?」



………………………。



「ああああああ!面倒くせー!もういつも通り普通に話してもいいか?」



「ぷっ、あははっ。……まあ、士の口調、変だもんね。許してあげるわよ」



「サンキュ〜」



「じゃ、じゃあ。ご、ご褒美にあげようかしらねっ///」



それから鈴は一本のポッキーを手にとって、俺の方に先端を向けてくる



「は、はい、ご褒美……。あーんしなさいよ……///」



「そんなに恥ずかしいならしなくても────」



「す、する!するってば!お金分サービスしなさいよ、まったく!」



「わかったから。怒んなって」



「じゃ、じゃあ、その……あーん……」



「あーん」



ぱきっと弾ける音が口の中に響く



(まぁ、普通に美味いな)



「食べさせてあげたんだから、あたしも──────」



「お嬢様、当店ではそういうサービスは行なっておりません」



言いよどむ鈴に割って入ってきたのは、メイド姿のシャルだった。その表情は、顔は笑っているはずなのになぜか怖さを感じてしまうものだった



「そ、そうなんだ。わかったわ」



「ではごゆっくりと (ニコッ)」



そう言い、違うテーブルで注文があったのでそちらに行ってしまった



鈴を見てみると、なぜか赤い顔でポッキーをこりこりと食べている



うつむき加減のその様子は、小動物それもリスみたいでものすごく可愛い



「鈴」



「ん?」



「なんか可愛いな、お前」



そう言い、無意識に頭を撫でてしまった



「ぶ────────────っ!!」



飲んでいたアイスティーを盛大に吹きだした鈴。続いて、ごほごほとむせ返っている



「だ、大丈夫かよ!?」



「な、な、な………何よ、いきなり///」



「いやさ、ポッキー食べている鈴の姿が何かリスみたいで可愛いな〜っと」



「………リスみたいで──────って、このバカ!」



鈴の渾身のチョップが脳天に刺さった



「痛い!?なんか、頭が頭痛だぞ!?」



「そんな日本語ないわよ!」



「こらこら、あまり騒ぎ立てないの。他のお客様がびっくりするでしょう?」



「……楯無さん、アンタはなんて格好をしてるんですか」



溜息を吐きながらそう言う。なぜなら会長さんの格好はメイド服、しかもうちのクラスのものと同じであった



「そ、そんなの……士君に喜んでもらえるようにに決まってるじゃない」



声が小さい



ただでさえ、騒がしいんだ



もう少し大きな声で



「えーと、もう一回―――」



「さて、私もお茶にしようかしら」



「聞けや」



ぼそっとそう呟いた



「うん?何か言ったのかな?」



「何でもありませんよ」



そこへさらに騒がしい人がやってきた



「どうもー、新聞部でーす。話題の神谷執事の取材に来ましたー」



新聞部のエースこと黛 薫子さんだった。ことあるごとに俺の写真を撮りに来るので、そこそこな顔なじみである



「あ、薫子ちゃんだ。やっほー」



「わお!たっちゃんじゃん!メイド服も似合うわねー。あ、どうせなら神谷くんとのツーショットちょうだい」



黛先輩が勝手にシャッターを切り始める



楯無さんに至っては「いえい♪」とピースまでしている



「……帰る」



そんなやりとりをしていると鈴がそう言ってきた



「もう行くのか?」



「自分のクラスのお店もあるしね」



「なら後でそっちに行くよ」



「ふーん。まあ、客ならもてなすわよ」



そう言い鈴は自分のクラスへと戻っていった



「やっぱり女の子も映らないとダメねー」



「私写っているわよ?」



「たっちゃんはオーラがありすぎてダメだよー。あ、どうせなら他の子たちにも来てもらおうかな」



「えー、本当はやだなー……でもまぁ、皆ー!写真撮るからメイドさん来て!」



最初の方なんて言ったんだ?



こうして写真撮影会は始まった



一人目、セシリア



「士さん、スマイルを」



「はぁ〜、もう分かったよ!やりゃいいんだろ!やってやろおうじゃねえか!」



ってことで変なスイッチが入った俺はそのままピースする




「こうでいい?……って、おいおい。腕を絡ませんなって」



「いいではありませんか。このくらい」



(周囲の女子が突き刺すような視線で見られている気がするんだが………)



二人目、ラウラ



「しかし、なんだな。私とお前ではそれなりに身長差があるな」



「そういえばそうだな」



「………てもいいぞ………」



「ん?」



「だ、だっこをしても、いいぞ………」



「じゃあ、やろうか?おらよっと」



ひょいとラウラを抱き上げる



「う、うぅ〜〜〜〜////」



(やっべ、さっきより視線が鋭利になってる……刺さる刺さる)



三人目、シャル



「ね、ねえ、士。この服、どうかな?変じゃないかな?」



「似合ってる似合ってる!大丈夫だよ」



「ほ、本当!?燕尾服より似合ってるかなっ?」



「メイド服のほうが全然可愛いと思うけどな」



「か、かわいっ…………」



「おう」



「そ、そっかぁ。可愛いかぁ。えへへっ♪」



(どんだけ笑顔なんだよ) 



四人目、箒



「…………」



「どうした?箒?写真、撮らないのか?」



「こ、このような格好の写真が残るのは避けたいのだが……」



「大丈夫だよ。ちゃんと似合ってるし、可愛いと思うし」



「か、かわ、いい!?」



「うん……だからさくっと撮っちまうぞ」



「………///」



この後も皆と撮り、一通り女子と写真撮影をし終えた

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